大杉漣お別れ会に北野武ら約1700人、草なぎ剛やバイプレイヤーズ一同が弔辞捧ぐ
2018年4月14日 21:46
43 映画ナタリー編集部
2月21日に66歳で永眠した大杉漣を偲ぶ「大杉漣 お別れの会『さらば!ゴンタクレ』」が、本日4月14日に東京・青山葬儀所にて行われた。
1951年に徳島県で生まれた大杉は、太田省吾率いる劇団・転形劇場のメンバーとして活動し、1980年にピンク映画「緊縛いけにえ」で映画俳優デビュー。その後は北野武の監督作「ソナチネ」をはじめ数々の映画やドラマ、舞台で活躍した。“ゴンタクレ”とは「悪者」「ごろつき」などを指す徳島地方の阿波弁で、大杉は2003年に「ゴンタクレが行く」と題した自伝的エッセイを刊行している。
遺影は大杉の息子であり写真家の大杉隼平が2016年に撮影したもの。祭壇の前には大杉が生前愛用していた眼鏡や帽子、サッカーボールなどが置かれていた。自身がキャプテンを務めていたサッカーチーム“鰯クラブ”のユニフォームや愛用の自転車、音楽活動も行っていた大杉のギターも。芳名板には本日参列した北野をはじめ、600人以上の映画監督や俳優、著名人の名前が記されていた。
「さらば!ゴンタクレ」は大杉のメモリアル映像からスタート。散歩をする大杉が「お仕事のセリフを覚えております」と語りながら自撮りをする映像から始まり、続いて田口トモロヲのナレーションによる大杉の経歴紹介が。そして大杉が出演した「変態家族 兄貴の嫁さん」をきっかけに、出演作のマッシュアップが始まった。その後も大杉率いる“大杉漣BAND”のライブ映像や、思い出の写真などがスクリーンに。締めくくりは、大杉隼平が父・大杉漣を写した最後の写真。1月21日に故郷・徳島で行われた大杉漣BANDのライブ中に、父の背中を写したものだった。
続いて、ゆかりの深い人物たちが弔辞を読んでいく。大杉が出演した「緊縛いけにえ」「TATTOO(刺青)あり」「光の雨」などの監督であり、“お兄ちゃん”と慕われていた高橋伴明は、「面白い役者がいる」と噂を聞き、転形劇場の演劇を観てすぐさま映画への出演交渉をしたと回想する。「いつも何かを考え、いつも何かを見せてくれた。演出もアドリブなら演じる君もアドリブだった。楽しかったよな。陰と陽、静と動、善と悪、バカとインテリ。大杉はどちらに振り切っても納得のできる芝居を見せてくれたけど、その中間をぬるっとすり抜けるような部分が役者・大杉漣の味じゃないかと思っている」と語り、「大杉がもういないという事実を受け止めなければいけないという気持ちと、それを信じない気持ちがまだ俺の中で喧嘩してる。君はもう踏ん切りは付いたのか。もしそうなら俺も踏ん切りを付けるよ。君は一生分の仕事をした。いやそれ以上のことをやり切った。俺は大杉漣のキャスティングをあきらめる。最後に楽しい思い出を、そして青春をありがとう」と続けた。
またドラマ「僕」シリーズ3部作など多くの作品で共演してきた草なぎ剛は「そっちの生活はどうですか。漣さんのことだからもう元気にやってるでしょうね」と弔辞を述べ始める。やるせなさを感じさせる声色で「本当に多くの顔を持つ漣さんだから、どれが本当の顔なのか聞こうと思ってました」と打ち明け、「何度も何度も心の中で問いかけるけど、あの低い声で漣さんが笑って、笑顔が残るだけなんです。本当にずるいよ。人の命は儚いですよね」と語りかける。そして「僕はまだやっぱり漣さんと芝居がしたいです。また漣さんが連れて行ってくれた海で好きな歌を歌いましょうよ。それまでしばらく待っていてください」と締めくくった。
太田の妻であり大杉とは40年以上の付き合いがあった太田美津子さんは、転形劇場時代の思い出話に花を咲かせた。「船を降りたら彼女の島」やドラマ「ニコニコ日記」などで共演経験のある木村佳乃、ドラマ「バイプレイヤーズ~もしも名脇役がテレ東朝ドラで無人島生活したら~」のキャスト・田口も哀悼の辞を述べる。田口は「覚めない夢を見ているようです。みんな漣さんが恋しい、そして寂しいです。あなたがいなくなった喪失感は大きくて。あまりにも急に大切な指針をなくしぼうぜんとしています」と大杉のいない現実を噛み締める。そして大杉が好きだったというフォークシンガー加川良の「伝道」の歌詞を引用し「『悲しいときには悲しみなさい。気にすることじゃありません。あなたの大事な命に関わることじゃあるまいし』。だからしばらくは漣さんのことを思って素直に悲しみます」と続け、大杉との思い出を胸に歩むことを誓った。最後に「俳優、そして人間の先輩として漣さんと同じ時代を生きることができて幸せでした。僕たちは大杉漣の後輩であり続けたことを誇りに思います。本当にありがとうございました。バイプレイヤーズ同士一同」と遠藤憲一、光石研、松重豊との連名で語った。そしてお別れの会は大杉漣BANDのメンバーによる「出航」「金色のウイスキー」の献奏で幕を閉じた。
囲み取材には椎名桔平、生田斗真、北村一輝、笹野高史、泉ピン子、加藤茶、村上信五(関ジャニ∞)、高橋克典が参加。また「変態家族 兄貴の嫁さん」の監督である周防正行も参列した。大杉の訃報を受けて昔のシナリオを引っ張り出したという周防は、初めて助監督として参加した作品、初めて脚本を手がけた作品、監督デビュー作である「変態家族 兄貴の嫁さん」、一般映画デビュー作である「ファンシイダンス」のすべてに大杉が出演していることを明かす。そして「僕の監督人生は大杉さんが『変態家族』に出演してくれなかったらまったく別のものになっていたと思います」とコメントを寄せた。
このほかお別れの会には黒沢清、瀬々敬久、三池崇史、塚本晋也、SABU、滝田洋二郎といった映画監督や長谷川博己、尾野真千子、松田龍平、村上淳、でんでん、向井理、二階堂ふみ、速水もこみち、森山良子、要潤、ユースケ・サンタマリア、川島海荷、白竜、哀川翔、八嶋智人、安田顕、名取裕子、品川徹、吉田羊、渡辺真起子、相島一之、勝矢、岸部一徳、大森南朋、斎藤工、比嘉愛未、新木優子、國村隼、水谷豊、吹越満、田口浩正、柳楽優弥、りょう、堀部圭亮、中村獅童、葉山奨之、岩松了、平岡祐太、菅野美穂、小池栄子、鈴木京香、山本耕史、稲垣吾郎、ダンカン、竹原ピストル、三宅裕司、松村邦洋、安藤なつ(メイプル超合金)、木本武宏(TKO)、浜田雅功(ダウンタウン)といった著名人らが参列。また大杉と同じ事務所ZACCOに所属する古舘寛治はお別れの会の受付に立っていた。
また斎場にはファン用のブースも設置された。ファンは大杉が出演した舞台「象」の公演時に楽屋にかけられていたという暖簾をくぐり献花台へ。そこには大杉が出演した新藤兼人監督作「石内尋常高等小学校 花は散れども」の制作時に作られたというフェイスマスク、「仮面ライダー」シリーズで演じた地獄大使のパネル、レギュラー出演していた「ぐるぐるナインティナイン」の「グルメチキンレース・ゴチになります!」の衣装、大杉の故郷である徳島のサッカーチーム・徳島ヴォルティスのユニフォームなどゆかりの品々が置かれていた。お別れの会には約700人の参列者、そして1000人のファンが。最後に、大杉隼平が会場の外からお別れの会を見守っていたファンのもとに駆け付け「ありがとうございます」と静かに頭を下げる場面も。
大杉の戒名は「優月院漣奏球孝信士(ゆうげついんれんそうきゅうこうしんじ)」。「“月”を見て偲びたい」「“漣”は親しんだ芸名」「“球”は愛したサッカー」「“孝”は生まれたときからの名」という思いから、夫人の弘美さんが月、漣、球、孝を希望したという。これに「優しい人柄であり、俳優の“優”を」「表現する・演奏するの“奏”」も加えられた。月の光のように穏やかに輝いていたという意味も込められている。
なお大杉にとって最後の主演映画であり、初めてのプロデュース作品となった「教誨師(きょうかいし)」は、10月6日より東京・有楽町スバル座ほか全国で順次公開。また本日4月14日から20日にかけて東京・目黒シネマにて「大杉漣追悼上映:北野武監督作品2本立て」が開催中だ。
※草なぎ剛のなぎは弓へんに前の旧字体、その下に刀
※古舘寛治の舘は舎に官が正式表記
てれびのスキマ/戸部田 誠 @u5u
田口「俳優、そして人間の先輩として漣さんと同じ時代を生きることができて幸せでした。僕たちは大杉漣の後輩であり続けたことを誇りに思います。本当にありがとうございました。バイプレイヤーズ同士一同」/大杉漣お別れ会に北野武ら約1700人 https://t.co/v4uqF1aaDl