ナタリードラマ倶楽部 Vol. 20 [バックナンバー]
「企画書はどう通す?」「攻めた作品とは?」若手ドラマプロデューサーが“ドラマの今”を語り尽くす座談会
ドラマの企画はセルフブランディングが鍵
2026年3月13日 13:30 12
企画を通すためには“セルフブランディング”が鍵
──プロデューサーとしてドラマの企画を考えるとき、どんなことを一番大切にしていますか? ご自身のやりたいことを“どう通すか”についても伺いたいです。
高橋 自分が作っているときにワクワクしなきゃ、観ている人も楽しめないだろうなっていうのは根底にあります。私は職業ドラマを観て憧れることが多かったので、まだ実現できてはいませんが、いずれ女性主人公の職業もののドラマを作って、同じような気持ちを持ってくれる人がいたらいいなと。もう1つは、なるべく自分が作った作品を観て傷付く人がいてほしくない。もちろん観る人や観る角度によっては嫌な思いをする人が出てくるかもしれないのですが、その絶対数をなるべく増やさない作品にしたいという思いはあります。
佐井 僕は、自己満足の企画にならないよういかに客観的に見るか、ということを心がけています。放っておいたら、誰をどんな気持ちにさせるか考えずにとにかく自分のやりたい企画を出しちゃうので(笑)。最初の3年間くらいはそういう企画を出し続けていたのですが、「いい加減にしなさい」となって……。
──ちなみに、どういった企画を?
佐井 例えば学園ものなのですが、大量殺戮の教育をしているエリート学校の話。どういう風にしたら世の中を転覆させられるか考えている生徒会長がいて、心理学や犯罪学などを学んでいる。戦時中に存在した陸軍中野学校(通称:“スパイ養成学校”)のような学園ものがあったらどうだろうって考えたんですが、ドン引きされました。あと「ウルトラマン」が好きなんですけど、“もしウルトラマンがいない世界で同じ宇宙人が攻めてきたらどう対処するか”という設定のドラマ企画書を書いたときも呆れられました(笑)。今はTBSの火曜ドラマだったら、女性が主人公で愛の要素があって前向きになるようなもの、自分は若手だから原作ものがいいかな、などと考えながら、企画書を書いています。数年前は、星飛雄馬の大リーグボール養成ギプスみたいな感覚のときもありましたが、今は何百何千とある原作の中から自分が何を選ぶかで、自分のやりたいことやどんなことに面白さを感じるかなど個性が出ると思っています。
高橋 私は制作会社の立場なので、いつだって局の方に企画を通す作業が大変で、逆に局員の方だとこんな苦労されていないのかなと勝手に思っていたのですが、局員だろうがなんだろうがこの大変さは変わらないんだなと思いました(笑)。
佐井 一度ドラマの企画が通っても、次も何か約束されているわけじゃないですしね。
南野 私はここ最近、自分が抱える悩みや、苦しいなという気持ちから企画を考えるようにしています。それが自分だからこそ書けるものになるんじゃないかと思って、身を削って、恥ずかしいけど書いちゃう!ということを大切にしています。私自身、ドラマに助けてもらった経験がすごくあって。例えば、しばらく彼氏がいないことに悩んでいたときに、登場人物が「恋人がいなくてもいいじゃん」という生き方をしているドラマを観たらちょっと心が軽くなる。自分が抱えている悩みってしょうもないのかな? 自分だけなのかな?と思っていたことで、同じようにドラマの主人公が悩んでいると友達になれた気がするというか。1人じゃないと思えた。私は「しんどいな」と思ったときに観る“お守りドラマ”のストックがあって、「けもなれ」もそうなんですが、自分のドラマも誰かのお守りになったらいいな、という気持ちで作っています。だからまずは自分の悩みをさらけ出す!
加瀬 私は佐井さんタイプ(笑)。自分には悩みや怒りがあまりなくて、でも「とにかくおもろいことしたい!」という気持ちが最初にある。企画を考えるときはまず「この組み合わせ・この設定面白そう」というものを書き出して、ログラインを作ってから、次にメッセージを考えるんですよ。もちろん物語の核になるのですごく大事ではあるんですけど、メッセージはいつも後付けです。
──では観る人を意識するのはどの段階なんですか?
加瀬 わりと研究型タイプなので、ひたすらそのジャンルを観て「今何が求められているのか」「この市場ではこういうのが一番観たいと思われてるんだ」というのを研究してからメッセージを後付けすることが多いです。似たターゲットになりそうな人たちが観ているドラマなどを観て、この作品が面白いと言われているのはこれが理由なんだ!という要素を抽出しています。最近はなかなか企画が通らなくて不調だったんですが、企画書の詰めが甘かったという自覚もあって。「これ絶対に通るわ」って思った企画って通るんですよ。
佐井 わかります。通るときって球筋が見えますよね。ドキュメンタリーの企画は通るときがわかってきましたが、それは何本かやっているからだと思います。ドラマはこれからわかってくるのかもしれないけれど、そのためには打席に立たないといけない。どういうときにこれはいける!と思いますか?
加瀬 TVerや切り抜き動画が回るビジョンが見える瞬間ですね。うちの会社には通し方がいろいろあって、「これはTVerで回る企画です」「これはグッズやビデオグラムが売れるキャラクターIPです」という通し方に企画がビシッとハマっていくときは手応えを感じます。でも最近あまりにも通らないので、変なプライドを捨てて企画を選んでる人たちに1人ずつお時間をいただいて根掘り葉掘り聞いたんです。「今どういう企画を求めていますか?」「今まで出した私の企画の何がダメでしたか?」という質問をぶつけて、フィードバックをもらったら「確かに」と納得できて。通らないには通らないなりの理由があるし、これを改善すればいいんだ!と明確になり、次の企画募集が楽しみになりました。
南野 私はこの前「南野さんの企画ってここ数年同じところをぐるぐる回ってるんだよね」と言われてグサッときました(笑)。テーマも設定も全然違う企画を出しているつもりなんですけど、うまく伝えることができていない。「まずは通すための企画の書き方を勉強しなさい」とも言われて……。
佐井 難しいですよね。だからと言って“通すための企画”をマーケティングして出したら「お前のやりたいことじゃないだろ?」と言われることもある。
高橋 ジレンマですよね。
佐井 よく言われるのは「大喜利と一緒だ」と。例えば「IPPONグランプリ」で
──ただ「ヒットしそう」じゃダメなんですね。
加瀬 私も5、6年目くらいまでは企画が面白ければ通ると思っていたんですが、ここ1、2年はセルフブランディングと企画についてすごく考えています。社内で「この人にこういうジャンルを任せればいける」と思わせるものを決めようと思って、今はもう同性2人の物語の企画しか出していないんです。「ベイビーわるきゅーれ」も同性のバディものですし、「
南野 わかります。「同じところをぐるぐる回ってる」って、要は“南野が出した企画”という色が付いているということだと思うんです。それがいいほうに転がったら自分にしか書けない企画になるんですけど、自分よがりで書いてしまうと面白いとは思ってもらえない。自分のやりたいことは大事にしつつも、それが他人から見ても面白いと思ってもらえるような切り口を探さないとなあと思っています。
──あとは最近、“ただただ優しい作品”も増えている印象があるのですが、昔よりも企画として通りやすくなっているのであれば、それはなぜでしょうか?
南野 この前、夜ドラ「
加瀬 確かに。悲しい回って配信でも再生数落ちませんか? 1回で十分重たいと感じるからか、悲しい回はリピートされなくて、あからさまに再生数が落ちるのは面白いなと思っていました。
南野 人がもめるシーンも嫌われますよね。友達同士がけっこう激しめの喧嘩をするシーンを、「つらくて観れなくて飛ばしちゃった」と言われたこともありました。人が怒るとか、悲しい思いをするのは、ドラマの中でさえ受け止めることが難しい時代に来ているのかもしれません。
ドラマの原作は「血眼になって探している」
──ドラマを企画することに付随して、原作ものの実写化についてもお聞きしたいです。そもそも原作をどう探して、選んでるんでしょうか。
加瀬 私は血眼になって足で探しています(笑)。作品にもよりますが、既に売れている作品は、ゴールデン帯の枠などで取り上げられるほうがその作品のためにも選択肢が増えるからいいなと思っていて、テレ東深夜でやる意義があるものは、ちょっとニッチな作品やまだ世間に見つかっていない作品に寄ります。TSUTAYAのマンガレンタルであ行から全部借りて、読みあさって、問い合わせして、でもだいたいどこかで実写化が決まってて、みたいなことを繰り返していますね。「ひだまりが聴こえる」も原作ものなんですけど、そんな感じで見つけました。
高橋 「ひ」まで長かったですね(笑)。
加瀬 しかもどんどん更新されるんですよ(笑)。あれ? 読んだことないのが追加されてる!って。
南野 私は今、原作ものの企画は出さないと自分に課しています。NHKのディレクターは100人ちょっとかな? たくさんいて、原作ものの企画もいっぱい出るんです。努力して探されている人に勝てる気がしないので、オリジナルを書くぞ!という気持ちでいるんですけど、とはいえ何が流行っているのかは気にしておきたいので、本屋に行って売れている本は読んでみるようにしています。
──市場のチェックという感じなんですね。
高橋 本屋で平積みされているものって既に人気作品だから、原作権も取られているだろうなと思うので、その作家さんの別作品を調べたり、キャッチーなタイトルを付けている作家さんの作品を掘り下げてみたり。マンガや本好きな友達に「最近読んで面白かったものとかある?」と聞くこともあります。
佐井 僕も本屋やAmazonで作品を探すことがありますが、だいたい読んで面白い!と思った作品は、ほかの人も企画書を出していることが多いんですよね。その繰り返しです。ただそれでも一応出しておくことで、選ぶ立場の人に「自分はその審美眼がある」ということを伝えられるよ、とアドバイスしてくれた上司がいました。自分がどういうドラマを作りたいのか、ということもわかってもらえるので、かぶっていても企画書を出したこともあります。
──2023年には、改めて実写化について考える機会となった「セクシー田中さん」の放送もありました。現在放送中の「
佐井 原作者の方が何を変えたくないのか、何を大切にされているのか。やり取りを重ねて理解することから始め、我々も方針を立てます。丁寧に人間関係を築くのは、作品を預けてくださる原作者さんとだけでなく、俳優部に対しても同じです。例えば主演を演じることは人生を預けることだから、その作品がヒットすることや、クリエイティブ的な成功、世の中の市場的な成功などいろいろありますけど、キャリアの中で「やってよかった」と思える作品にしないといけないと思っています。
“攻めた企画”ってなんだろう?
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結騎 了 @slinky_dog_s11
「配信・ネットだと地上波より攻めた描写が許される(作り手と受け手にうっすらこの共通認識が存在する)」という肌感の見事な言語化だ。
>配信だと、自分の欲求のもと選んで観ているから“同意”があると思うんですけど、地上波の番組は同意がない状態で目に入る可能性もある。 https://t.co/MNow6Qna3A