左から高橋眞智子(共同テレビ)、佐井大紀(TBSテレビ)、南野彩子(NHK)、加瀬未奈(テレビ東京)

ナタリードラマ倶楽部 Vol. 20 [バックナンバー]

「企画書はどう通す?」「攻めた作品とは?」若手ドラマプロデューサーが“ドラマの今”を語り尽くす座談会

ドラマの企画はセルフブランディングが鍵

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地上波と配信の違い…“攻めた企画”ってなんだろう?

──配信プラットフォームがどんどん増える中、地上波と配信の違いについてもお聞きできればと思います。できることの具体的な境目や、よく使われる“攻めた企画”という言葉について、皆さんはどう考えていますか?

高橋 根本的なことで言うと、掛けられる予算は確実に違う気がしています。映画「キングダム」級の海外ロケも行う規模のものや、CGがどうしても必要な世界観などを地上波の連ドラでやるのは、なかなか難しいことが多いです。

佐井 一番重要なのは、テレビは報道機関であって国から電波を預かっている公共のものであるということだと思います。日本は戦後、電波事業をやり続けてきて、その“相対的なもの”としてNetflixなどの配信プラットフォームが出てきたので。どっちが上とかではなくベースの違い。車を走らせるシーンであれば、報道機関の人間がリスクを犯してまで撮影するほどなのか、超大手のプラットフォームが莫大な金額と時間を掛けて安全を担保して撮るか、という違いも発生しますし、多くの人が偶然見てしまうものとお金を払って観たい人だけが観るものでは、倫理感や物事の取捨選択も変わってくる。

南野 その通りだと思います。子供がリモコンをピッと押してテレビがついたときに、センシティブな表現によってその子が傷付けられないか、ということを考えるのは大事。配信だと、自分の欲求のもと選んで観ているから“同意”があると思うんですけど、地上波の番組は同意がない状態で目に入る可能性もある。「差別はダメだよ」ということを伝えるために差別的な表現を入れるという場合もありますが、“差別的に描いたから攻めている”っていうことにはならないですよね。世代によっては今の時代、「コンプラが厳しい」「やりにくくなった」という方もいると思いますが、全部みんなの心を守るためにあるものだから。(テレビの前に)相手がいる、その相手がすごく広い、と考えていますね。

左から高橋眞智子(共同テレビ)、佐井大紀(TBSテレビ)、南野彩子(NHK)、加瀬未奈(テレビ東京)

左から高橋眞智子(共同テレビ)、佐井大紀(TBSテレビ)、南野彩子(NHK)、加瀬未奈(テレビ東京) [高画質で見る]

佐井 そのうえで“攻めた企画”をどう定義するかですが、今泉(力哉)さんが監督・脚本を担当している放送中のドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」とかは攻めていると思うんです。配信プラットフォームという相対的な関係性のものがあるから、日テレさんは「今泉力哉という作家に一枠預けてみよう」という札の切り方をしてきたと思うんですけど、地上波テレビドラマしか存在しない状況であの攻め方は成立しない気がするんですよね。これもまた配信プラットフォームができたことによる放送局の新しい立ち回り方なのかなと思います。

加瀬 私が放送と配信で明確に違うと思ったのは、「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」で胸糞の悪い悪役を作ろうとしたとき。そのキャラクターの描き方として「鳥を殺すシーンを入れていいか?」という話が出たんですが、地上波で動物を殺すシーンを流すのは(予告なく)不快な思いを与えてしまうこともあるので、やめておきたいっていう話になって。「じゃあ人間ならいいですか?」「いいですよ」と(笑)。ここの境界線だと思うんですよね。ただそうなると、悪役のキャラクター像が微妙にボタン1個掛け違うじゃないですか。こういうところで地上波と配信で描かれる物語の幅みたいなものは多少生まれているかもしれない。でも、攻めた・攻めてないには関わらないんじゃないかなと思います。

放送中・準備中の担当作品

──最後にそれぞれ、今担当されている作品について教えてください。

加瀬 「俺たちバッドバーバーズ」は、裏の顔を持つ理容師2人を描いた、バディアクションドラマです。全12話なのですが、3月上旬から「違うドラマが始まった」くらいテンションが変わっています(笑)。こんなドラマだっけ!?という展開を迎え、それによって前半のふざけていた時間がすごく尊くなるんです。そこも含めてぜひ観ていただきたいです!

「俺たちバッドバーバーズ」キービジュアル ©「俺たちバッドバーバーズ」製作委員会(テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送にて毎週金曜 24:42~放送中 / TVer・ネットもテレ東・Leminoにて見逃し配信あり / U-NEXTでは第1話から最新話まで独占見放題配信)

「俺たちバッドバーバーズ」キービジュアル ©「俺たちバッドバーバーズ」製作委員会(テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送にて毎週金曜 24:42~放送中 / TVer・ネットもテレ東・Leminoにて見逃し配信あり / U-NEXTでは第1話から最新話まで独占見放題配信) [高画質で見る]

佐井 「終のひと」では、(第1話の時点で)ベテラン葬儀屋の主人公が余命宣告を受けています。これまでは新人とのバディ感をコミカルに描く部分もあったんですが、最後は主人公がどういうふうに人生の幕を閉じていくかに焦点が当てられます。3月31日放送の最終回では「死とはなんなのか」「葬式をするってどういうことなのか」という話を、いわゆるテレビドラマというよりも演劇っぽいスタイルで見せるので、最終回まで楽しみにしていただけると。“攻めている”かもしれません。

ドラマストリーム「終のひと」メインビジュアル ©「終のひと」製作委員会(TBS系にて毎週火曜 24:58~放送中 ※一部地域を除く ※時間変更の可能性あり / TVer・TBS FREEでは放送終了後に見逃し配信、Leminoでは最新話を先行配信)

ドラマストリーム「終のひと」メインビジュアル ©「終のひと」製作委員会(TBS系にて毎週火曜 24:58~放送中 ※一部地域を除く ※時間変更の可能性あり / TVer・TBS FREEでは放送終了後に見逃し配信、Leminoでは最新話を先行配信) [高画質で見る]

南野 私は2027年の大河ドラマ「逆賊の幕臣」のプロデューサーチームに入っています。幕末を舞台に、グローバリズムの中でもがく人たちが描かれます。現代の我々が置かれている状況ととても似ている空気感の中で、主人公の小栗忠順たちが「それでも日本がよくなる未来があるんじゃないか」と信じて進む物語なので、希望を感じられるドラマです。主演の松坂桃李さんが記者会見で「健康的な時間に帰れる現場にしたい」とおっしゃっていて「その通り!」と。撮影はこれからですが、スケジュールの管理も担当しているのでがんばります。

大河ドラマ「逆賊の幕臣」ロゴ(2027年放送予定)

大河ドラマ「逆賊の幕臣」ロゴ(2027年放送予定) [高画質で見る]

高橋 3月19日からFODで先行配信(4月1日からフジテレビ系で放送)される「102回目のプロポーズ」を担当しています。もともとは鈴木おさむさんが企画のはじまりなのですが、自分も生まれていなかった時代の王道ドラマの続編なので、前作を観ていた世代の方も、今の若い世代にも、楽しんでもらえたらいいなと思っています。

「102回目のプロポーズ」ビジュアル ©︎フジテレビ(FODにて3月19日より先行配信 / フジテレビ系にて4月1日より毎週水曜 23:00~放送 ※一部地域を除く)

「102回目のプロポーズ」ビジュアル ©︎フジテレビ(FODにて3月19日より先行配信 / フジテレビ系にて4月1日より毎週水曜 23:00~放送 ※一部地域を除く) [高画質で見る]

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読者の反応

結騎 了 @slinky_dog_s11

「配信・ネットだと地上波より攻めた描写が許される(作り手と受け手にうっすらこの共通認識が存在する)」という肌感の見事な言語化だ。

>配信だと、自分の欲求のもと選んで観ているから“同意”があると思うんですけど、地上波の番組は同意がない状態で目に入る可能性もある。 https://t.co/MNow6Qna3A

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