左から于深氏、有本恭史氏、澤村直道氏、武川基氏、田中聡氏、金光国

ナタリードラマ倶楽部 Vol. 19 [バックナンバー]

縦型ショートドラマの初心者講座、GOKKO・BUMP・DramaBoxなどプロダクション代表者によるトークもお届け

業界一丸となり“月間課金ユーザー1000万人”を目指す

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イベント後半は、ショートドラマを制作するプロダクションの代表者5名によるパネルディスカッションを実施。ヒット作を生み出すための工夫や、制作現場の裏側について約1時間半にわたってトークした。今回はその一部をお届けする。

パネルディスカッション 参加者プロフィール

縦型ショートドラマ制作者によるパネルディスカッションの様子。前列左から有本恭史氏、澤村直道氏、田中聡氏、金光国氏。後列左から于深氏、武川基氏

縦型ショートドラマ制作者によるパネルディスカッションの様子。前列左から有本恭史氏、澤村直道氏、田中聡氏、金光国氏。後列左から于深氏、武川基氏

澤村直道

emole代表取締役。運営するショートドラマアプリ・BUMPは230万ダウンロードを突破し、SNS公式アカウントの動画再生数は30億回を超える。ドラマシリーズ「プロ彼女の条件」がBUMPで大ヒットし話題を呼んだほか、MBSとタッグを組んだ春の甲子園のスピンオフドラマ「春になれ!」などがある。

于深

2013年以降、中国と日本を行き来しながら起業家としてさまざまな事業に携わり、圧倒的な作品数を誇る中国系のショートドラマプラットフォーム・DramaBoxの日本事業を立ち上げる。現在は日本事業統括として事業拡大を進めている。

田中聡

GOKKO代表取締役。クリエイター集団・ごっこ倶楽部としてこれまでに約2000本の動画を制作・投稿してきた。縦型ショートドラマに特化した自社スタジオを持ち、企画・脚本・制作・撮影・統合分析までインハウスで行う。創業から約3年で累計再生数は94億回を記録している。

武川基

COL JAPANの代表取締役兼プロデューサー。コンサルタント経験を活かし、UniReelの立ち上げにも貢献した。「最期の授業-生き残った者だけが卒業-」で主演を務めた八木勇征FANTASTICS)は、第1回アジアショートドラマアワードにて最優秀俳優賞を獲得。現在は芸能事務所・A-Plusとタッグを組み、高橋文哉が企画・プロデュースを担う縦型ドラマ企画「FANFARE」を進行中。

金光国

2023年に中国ショートドラマのローカライズを開始し、2024年から日本・韓国でショートドラマを制作している和雅の代表取締役社長。ShortMax、Dramabox、ReelShortと提携し、日本制作のショートドラマを世界同時配信している。ヒット作に「大富豪のバツイチ孫娘」「リベンジ清掃員CEO咲」など。

ショートドラマってファストフードに似ている

──“月間課金ユーザー1000万人”がどうすれば実現できるか、グローバルから観た日本という視点と、日本のフロントランナーの皆さんとともに熱いディスカッションをしていきたいと思います。制作、マネタイズ、マーケティングの3つに分解してお話ししたいのですが、まずは制作について、ヒット作品の傾向や制作する際に意識していることから教えてください。

澤村直道 日本の特徴的なところで言うと、不倫ものや復讐系、BUMPでヒットした作品なら「プロ彼女の条件」といった“身近に存在するが自分が触れたことのない世界”など、普段見られない人の姿をのぞき見しているような感覚になるコンテンツが人気だなと思います。世界共通で当たっていると感じるフォーマットは、“ビリオネアの正体隠し(※)”。うちも一度、タワマンを題材にした正体隠しドラマを作ったのですが、普段は20~30代のユーザーが多い中、40~50代が増えたり課金率が上がったりする傾向がありました。

※編集部注:正体を隠して一般社会に溶け込んだ御曹司や社長が登場する物語。ジャンルはオフィスものやラブストーリーなど多岐にわたる

于深 僕としては、日本国内で正体隠しをやって、中華作品に雰囲気を寄せようとするのはけっこう違和感があります。中国で流行っている成り上がり系の作品が本当に日本でヒットするか、僕はまだ疑問を持っていますね。

金光国 我々から見れば、ショートドラマってファストフードに似ているんですよね。なぜかというと、これらは人間の最小限の要求を満たすものだから。展開やセリフのテンポを速めて、気持ちを盛り上げることで人間の最小限の欲求を満たすことさえできれば、どこの国でも同じようにヒットするんじゃないかと思っています。

──制作体制についてもお聞きしたいです。海外でも制作を経験されている武川さんはいかがですか?

武川基 北米や中国では、ショートドラマを作れる場所、人、資金面などがかなり先に進んでいます。北米でショートドラマがヒットしたタイミングは、シナリオユニオンのストライキやコロナ禍があった頃。映像スタッフの方たちのスケジュールが空いたタイミングで参入したので、けっこうショートドラマの制作に対する理解度が高いんです。それに比べて、日本はまだちょっと肩身が狭いかなと思います。海外のショートドラマと比べるとクイックには動けない。撮影の1カ月半ぐらい前からは動き始めないと、道路の申請、撮影許可など間に合わないのが大変です。

武川基氏

武川基氏

田中聡 僕たちは社内にスタッフが半分、外部の方が半分ぐらいで制作することが多いです。今世界における制作体制のトップはハリウッドで、次に韓国。韓国もインハウスでショートドラマの制作体制を持っていたり、役者を抱えていたりするのが一般的なんです。(同じくインハウスで制作体制を持つ)ごっこ倶楽部は今国内だとすごく珍しく扱われるんですが、韓国に行くと当たり前の環境になっています。

 ショートドラマはショート動画の延長線にあるもので、密度の高い情報をユーザーに与えないといけないものだと思っています。今の日本の作品は、すごくセリフの密度が低かったりテンポや物語の展開が遅かったりと、まだまだ課金とつながっていない。量産の仕組みを作るためにもしっかりマニュアル化して、それが実現できるよう制作パートナーさんともコミュニケーションを取りながら進めていくことが必要だなと思います。

──スタッフやキャストの働く環境についてはいかがでしょうか。

田中 地上波ドラマぐらいのラインの金額をキャストだけでなくエキストラにも必ずお支払いするのと、ネームバリューによって金額を変えないということはすごく意識しながらやっています。「無名だから無料でもいいです」という方もいるんですが、やりがい搾取をしてしまうとカルチャーになっていかないですよね。ただ人員に関しては、地上波やNetflixなどと比較すると3分の1から4分の1ぐらいでやっているので、キャストの待機場所の確保や送迎など、手配が不十分なのが現状ではあります。「もう縦型は作りたくない」という現場の悲鳴をあらゆるところから聞いているのも事実で、これは本当に由々しき問題だと思っているので、業界で一致団結しながら変えていきたいと思っています。

500円で「感動できる」に持っていけたら1つのフェーズを超えられる

──続いて、マネタイズに関して澤村さんと于さんにお伺いしたいのですが、日本において収益構造を構築するうえで何が必要だと思われますか?

澤村 一番重要視しているのは、“今この瞬間の課金額の最大化”というよりは、どうすれば継続的に観てもらえるか、という観点。課金しないと観られないのではなく、ユーザーによって課金できるタイミングを調整できるようにしているのがうちの特徴かなと思っています。人によっては「課金はしたくないけど、明日まで1日待てばいいなら観たい」という方もいますし、「今CMを30秒観るのは我慢できる」という方もいますから。

 うちの現状は、都度課金が中心で、そこにサブスク会員がプラスされるビジネスモデルです。もちろん広告を観て本編に飛んでもらうのがわかりやすい経路なのですが、痛いなと感じるところは解約率ですね。1週間会員になって観たいドラマを2~3作品観て、解約するというパターンが多いんです。プラットフォーマーとして、本来は安定する収益を作りたいので、サブスク会員を増やさないといけないのですが、解約率がわりと高いのは、面白いコンテンツの量がまだ十分に足りていないからだと仮説を立てています。

于深氏(奥)

于深氏(奥)

武川 于さんの言う通り、我々もSVOD(定額制動画配信サービス)は大きな課題かなと思っています。越境型アプリでは、まだ運用型広告でのTVOD(都度課金型の動画配信サービス)がベースになっているんですよね。一方で、日本にはマネタイズの独自の方向性が絶対にあると考えています。例えば有料のオフラインイベントを実施したり、日本のIPとのコラボ作品を作ってグッズ化したり、マンガを原作にしたショートアニメなどは可能性があるんじゃないかなと思っているところです。

──マネタイズに関しては検証フェーズではあるかなと思いますが、LTV(顧客生涯価値)を最大化するためにどのような取り組みをされていますか? GOKKOさんに関しては自社でもタレントさんを抱えていますよね。

田中 プラットフォームをやることを決めた段階から、マネタイズしていくための順序に関してはずっと話をしてきました。うちではTVODの次にSVOD、そのあとAVOD(広告掲載型の動画配信サービス)でLTVが高まっていく、という順序を大事にしています。TVODやAVODではSNSのオーガニックでバズっているものを観に来てもらうということを中心にしているのですが、SVODの場合はやはり観たい作品が多くないとダメ。あとは、全話観ると4000~5000円してしまうのはどうしても高いと感じてしまうと思うので、今僕たちは500円で全話見られる“ワンコイン課金”を用意しています。実はマネタイズにはあまりつながらないんですが、ワンコインだとコミック1冊とほぼ一緒ですし、映画を観に行くよりは安いと考えていただけるかなと。500円で「泣ける」「笑える」「感動できる」というところまで持って行けると、1つフェーズを超えられるのではないかと考えている段階です。

──実際に一度課金した方は、リピートしていくものなのか。その手応えに関してはいかがですか?

澤村 マンガアプリでもそうだと思うのですが、やはり課金したことのあるユーザーとしたことのないユーザーの継続率を比較すると、課金したことのあるユーザーの継続率のほうが圧倒的に高いです。ただ、マンガアプリのユーザーよりは継続率がまだまだ低い状態ですね。それは僕も、観たいと思えるレベルの作品数がまだまだ足りないからだと考えています。

田中 「1回課金してしまったから最後まで観ないと」みたいな感覚で観る方も多いと思うんですけど、その人たちってなかなか次につながらないんですよね。どちらかというと「損したなー」という感覚になってしまいがち。だから、オーガニックで見せるもの、広告で見せるもの、(課金してアプリの)中に入ってきてから見せるものを、作品を明確に分けてうまく展開していきたいと思っています。

グローバルに展開していくためには脚本がすごく大事

──“月間課金ユーザー1000万人”を視野に入れていくためには、グローバルの市場にも展開していかないといけないかなと思うのですが、実際にビジネスをするうえで北米やアジアの海外市場にどう踏み込んでいくか、お聞かせいただきたいと思います。

 DramaBoxは世界の200の地域でサービスを提供していて、海外のユーザーもたくさんいらっしゃいます。現時点では、海外でヒットした日本作品の事例があまりないので、まずは日本らしいものを作らないとダメじゃないかなと思います。南米や欧米のユーザーからすると、日本・中国・韓国の違いがわからないっていう方が多いんですね。現在作られているショートドラマは会話主体が多いのですが、普通の服を着て会話するだけだと、海外のユーザー的にはどこが日本的なのかわからない部分が大きいと思うんです。

武川 私は、海外でよく行われているサイマル配信(1つのコンテンツを複数のメディアで同時に配信する形式)を考えています。非独占のほうがヒットするケースもあれば、独占のほうがヒットするケースもあると思いますが、我々はアプリのプラットフォームを運営する側でありながら、同時に作品をヒットさせることにもかなり重きを置いていますので、作品によっては検討していきたいなと思っています。

金光国氏

金光国氏

 私はグローバルに展開していくためには脚本がすごく大事だと思っています。今までにない表現をして、モバイルに合う作品を作らなきゃならない。モバイル時代に入ってから、人々は気が短くなったし、隙間時間を使うことも増えました。そこに合う作品をいかに作るかだと思います。中国は小説IPをうまく使ってるんですけど、マンガ大国の日本はマンガIPをいかに活用し、爽快感やテンポを意識したショートドラマに合う作品を作っていくことが大事だと思います。

「切り抜けるかどうか」は「課金されるかどうか」以上に重要

──マーケティングについて気を付けている要素や重要な点などはありますか?

澤村 切り抜き動画を作ってSNSで配信しているんですが、重要なのが「脚本の時点でどれだけ切り抜ける要素を作れるか」ということです。脚本の執筆段階で「ここは切り抜ける」「切り抜ける数が少ないよね」といった評価をかなり細かくしていますし、現場でも「こういうふうにしないと切り抜けない」という話をしています。「切り抜けるかどうか」は「課金されるかどうか」ということと同じぐらいか、それ以上に重要な要素としてすべての制作工程で考えています。

澤村直道氏

澤村直道氏

──ごっこ倶楽部に所属するタレントさんに関しては、ファンも徐々に付いてきたと思うのですが、キャストによるユーザー獲得や育成に関してはどのように考えていますか?

田中 ごっこ倶楽部というよりはマーケット全体で縦型ショートドラマをどうやって盛り上げていくかという観点で言うと、マスで有名なキャストを連れてこられるかが相当重要だと思っています。ですが、今はまだすごくハードルが高いんです。一線級のスタープレイヤーに声を掛けても絶対に振り向いてくれないんですが、以前Netflixの方に「10年前は日本で出てくれる人が本当にいなかった」と聞いたことがあって。転換期となったのは「全裸監督」。山田孝之さんが出る前と後で、Netflix作品に出演する俳優や監督陣がガラッと変わったんですね。こういったきっかけになるようなショートドラマ作品を作ったり、そのタイミングが来るまでにプラットフォームに面白いコンテンツたくさんがある状態を作っていれば、一気に火が付いてマスの人たちも流れてくるはずだと考えています。それでも2~3年はかかってしまうと思うので、今僕たちは、縦型ショートドラマのスターを発掘してマスに出していく、ということを意識しながらやっています。「GOKKO ACTING LABO」という、俳優の無料ワークショップをやって、トライアル形式で生き残った人はごっこ倶楽部の動画出演権を与える、という仕組みを作っています。

“月間課金ユーザー1000万人”達成のためにやるべきこと

──最後に、“月間課金ユーザー1000万人”をどう目指していこうと考えているか、それぞれ教えてください。

澤村 ちょっと暇なときの最初の選択肢として「ショートドラマを観よう」と思う人はまだまだ少ないと思っています。その視聴習慣を変えてかなきゃいけないですし、ショートドラマを観ることが余暇の第一想起になるようにしていきたい。日本の市場だけだと小さいと思い、僕らも今年の3月に世界100カ国にアプリをリリースしました。世界含めて取りに行きたいなと思っています。

 マンガと比べて何が面白いのか考えたとき、ショートドラマは人の感性に訴えやすいものだと考えました。ジェットコースターのような体験性があるショートドラマを増やしていくと、より大きな産業になるんじゃないかなと思います。長期的には、広告を回さずにユーザー自らプラットフォームにある作品を観たいと思っていただく状況が一番望ましいです。

田中 (来場者に)ちなみに縦型ショートドラマで泣いたことあるよ、という方はどれくらいいらっしゃいますか? ……0!? 悲しいですがこれが現状なんですよね。ここで手を挙げてもらえるようにできるかがすべてだなと思っています。ごっこ倶楽部オリジナルの「広がる炎」という作品がありまして、これは縦型ショートドラマの価値を感じられる作品になっていると思うので、一度だまされたと思って観ていただけるとうれしいです。

田中聡氏(手前)

田中聡氏(手前)

武川 もともと「ショートドラマ=消費されて記憶に残らない作品」という認識がテンプレでした。弊社としては記憶に残る作品を作ることが一番のミッションだと思っています。日本にはいいコンテンツがあふれているので、作品を観るリテラシーが高いんです。隙間時間をショートドラマにあてたいのか、マンガにあてたいのか、テレビにあてたいのか、動画配信サービスにあてたいのか。そこで選ばれる作品を作っていくことが、この“月間課金ユーザー1000万人”という目標を達成するために必要な最初のステップなんじゃないかなと思っています。

 私は、ファストフードみたいに、システム化して大量の作品を作り、その中からいい作品を当てていければと思っています。今まで日本で30作品くらい作ってきたのですが、一番困っているのは制作に無駄なコストが多いこと。例えば撮影に使う高級車のレンタルでも、中国だったら1時間ごとに借りられるんですが、日本では少なくとも半日からのところが多い。もっとシステマティックな仕組みにしたり、AI技術を使ったりして、効率よく作れるようにしたいと思います。中国にはそういった知識もたくさんあるので、日本と中国でショートドラマの情報交換や人々の交流が進めばいいなと思っています。

出典一覧

SensorTower「2025年世界のショートドラマアプリ市場に関するインサイト」
日本能率協会総合研究所MDB推計
内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局 基礎資料
経済産業省令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書 P68
経済産業省令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書 P66
経済産業省 業界の現状及びアクションプラン(案)について 【音楽】
経済産業省 業界の現状及びアクションプラン(案)について 【音楽】(事務局資料2)
経済産業省 業界の現状及びアクションプラン (案)について【映画・映像】(事務局資料2)
中国网络视听节目服务协会「中国微短剧行业发展白皮书(2024)」発表概要(2024年11月6日杭州)P4
App Ape 推計 漫画アプリ利用、 2年で2倍超に (2021年10月: 日経MJ)
2024年 オリコン顧客満足度®調査 電子コミックサービスの課金有無
経済産業省 エンタメ・クリエイティブ産業戦略
LINE VOOM内部データ

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おおとも ひさし @tekuriha

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