「ラ・バヤデールー幻の国」は、古典バレエの「ラ・バヤデール」をもとにした平田オリザの脚本と金森穣の演出により、Noism1&2のダンサーと俳優3名が立ち上げる、Noismの“劇的舞踊”シリーズの第3弾。今回、脚本を平田オリザに依頼した経緯について、金森は「2年前に富山・利賀村で平田さんとご一緒する機会があり、そのとき直感的に、台本をお願いしたいとひらめいたんです。それでダメもとでお願いしたところ、快く『いいですよ』とおっしゃっていただいて。ただ平田さんが、オリジナル作品よりも既存のバレエを翻案したいとおっしゃったので、僕からいろいろ提案させていただいて、『ラ・バヤデール』に決まりました」と語る。できあがった脚本については「本当に頼んで良かったなと。素晴らしいです! バレエの『ラ・バヤデール』をご存知の方は完全に別物として観ていただいたほうがいいと思いますけれど、何が何に置き換えられているかを読み解いていただければ本作に迫れると思います」と力強く語った。
一方、平田は「書き下ろしのご依頼はお受けしたんですけど、バレエの台本を書くということがよくわからなくて」と苦笑する。「ただ海外から作品を依頼される場合は、時事問題を捉えた作品を求められますし、そういった作品を上演することが公共性だと考えられています。残念ながら日本ではそうではありませんが、今回、金森さんとは、現代の私たちが抱えている問題の根源がどこにあるかを考えられるような作品にしようと話をしました。『ラ・バヤデール』はご存知の通り、インドのカースト制を背景にした恋愛物語です。本作ではそれを、民族対立の問題に置き換えて描こうと考えました。とはいえバレエの台本なので、全部をセリフでしゃべるわけではないし、基本的には金森さんにお任せしながら、創作段階でもいろいろ相談しながらつくっていけたらと思っています」と作品の構想を語った。
物語のメインキャラクターである踊り子ミランを演じる井関は、「ミラン役について、実は穣さんからひとつヒントをいただいていて。それはマレビトってことなんですけど……。近年、強い女性の弱さを演じることが続いていましたが、今回はある意味弱い女性がもつ強さみたいな、これまでと正反対の表現を新しくお見せできたら」と意気込みを見せる。
ミランを愛する戦士バートル役は中川賢。「前回の『劇的舞踊 カルメン』で、言葉を喋るような踊りを実感した瞬間があって。今回は役者さんも数名出演されるので、そのイメージをより深めていけたらなと思います」とコメントした。
また原作には登場しない謎の女ポーヤンとヤンパオ人看護師を演じる石原悠子は、「2つの役について自分の中で差をつけたい」と意気込みつつ、「ただまだちょっと掴めない部分がたくさんあるので、これからたくさん失敗して、穣さんにたくさんダメだダメだと言われながら、作っていきたいと思っています」とコメントした。
金森は平田作品について「すごくシンプルなんですよね。すっと入ってくるんだけれど、でもその表現の向こう側にあることや、そこへつながる回路をシンプルに提示してくださる。すごく難しいことを簡単に言える人だなと思います」と評する。平田も金森の作品はいくつも観ていると言い、「いろいろなことに挑戦されていて、でも決して奇をてらうのではなく、真正面からぶつかっていく姿勢がすごい勇気だなといつも思っています」と印象を語った。
また「ラ・バヤデール」と言えば、ミンクスの音楽と、ラストの宮殿が崩壊するシーンが印象的だが、金森は「今回、ミンクスの音楽を使うのは7割程度」と言い、「ミンクスの音楽と音楽を繋ぐ部分を、アジアの楽器を用いて笠松(泰洋)さんに作曲していただきます。サブタイトルにもある“幻の国”が今回非常に重要なキーワードで、建物の崩壊より、精神的な崩壊を描きたいと思っています」と見どころを語った。なお会見では、9月に鳥取でも本作が上演されることが発表された。
Noism 劇的舞踊 vol.3「ラ・バヤデールー幻の国」
2016年6月17日(金)~19日(日)
新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
2016年7月1日(金)~3日(日)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 ホール
2016年7月8日(金)・9日(土)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
2016年7月16日(土)
愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
2016年7月23日(土)・24日(日)
静岡県 静岡芸術劇場
2016年9月24日(土)
鳥取県 米子市文化ホール
脚本:
演出:
振付:Noism1
音楽:L.ミンクス、
空間:田根剛
衣裳:宮前義之
木工美術:近藤正樹
出演:Noism1&Noism2 / 奥野晃士、貴島豪、たきいみき
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