ツアーは今年2月にリリースされた最新アルバム「新世界」を携えて、韓国および台湾での海外公演を含め約2カ月にわたって展開。最終公演となった武道館公演では、各地でのライブを経て磨き上げられた新曲が、さまざまな映像とともに再現された。
オープニングは、アルバムの1曲目を飾るインストゥルメンタルナンバー「gen to(intro)」のセッション。演奏にあわせてステージを覆っていた白い紗幕がカーテンのように開き、メンバーが姿を見せると厳かな拍手が場内に響いた。そして一瞬の静寂ののち、「SUSY」からライブが本格的にスタート。ステージのうしろに設置された巨大なスクリーンには、宇宙空間を高速移動するような映像が映り、楽曲の持つ疾走感を引き立てる。
大木伸夫(Vo, G)の「2013年7月26日、『新世界』ツアーファイナル、日本武道館にようこそ! この瞬間は、今日という日は二度と来ないので、最高の時間を作って最高の1日にしましょう」という挨拶から、バンドは「君の正体」「ラストコード」など「新世界」の収録曲を立て続けにパフォーマンス。さらにジャジーな雰囲気の「Further~夜になる前に~」、ダンサブルなアレンジを施した「Can't Help Falling In Love」のカバーも届けられ、メンバー個々の卓越したプレイが観客を惹き付けた。
ライブ中盤に差し掛かると、深い世界に誘うナンバーが映像を交えながら演奏されていく。浦山一悟(Dr)がマレットを使い深遠なグルーヴを作る中、佐藤雅俊(B)がグロッケンを叩きドリーミーな雰囲気を醸し出した「ALMA」、PVとともに演奏された「風追い人(前編)」と「風追い人(後編)」、「この武道館にサハラ砂漠の風が吹くように……」という大木の言葉から始まった「アルケミスト」などが会場を彩った。大木はときに優しく穏やかに、ときに感情を爆発させるように熱唱し、佐藤は体を揺らしながら力強くベースを繰る。そして浦山は和やかなMCを挟みつつ、バンドの屋台骨として頼もしいプレイで魅せた。
事務所の名前にも冠された「FREE STAR」を披露する前に大木は、「6月に独立しました。ACIDMANのための、ACIDMANによる事務所で、3人そろって息をそろえて音楽を作っていきますので、至らない点もあるかもしれませんが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」と深々と観客に挨拶。続けて3人はミラーボールの下、力強いアンサンブルで「FREE STAR」を奏でた。
ライブの後半は「to live」「カタストロフ」「新世界」といったアルバムからの楽曲が続き、ラストを飾ったのは「最後のその日まで、最後に吸う酸素、呼吸に希望を持って死ねたらと思います。人間のあたたかさを信じて死ねるように。祈りを込めて」という大木の言葉から「白光」。佐藤と浦山が奏でる轟音と、大木の魂を振り絞るような歌声が場内を満たし、壮絶な余韻を残して本編は終了した。
アンコールではライブの定番曲「ある証明」と「Your Song」の2曲が披露され、ライブハウスのような熱狂が生み出される。メンバーが去ると場内は明るくなるが、何かを期待する観客はダブルアンコールを求め続けた。その声に応え再び現れた大木は、「ずっと来てくれた人はわかると思いますが……」と述べ、「本来、アンコールは準備しちゃいけないんだけど、万全の準備をしてきましたよ」と笑う。「すごく重い歌ですが、特別な日にしか歌わないので」「感謝を込めて、祈りを込めて……」と10分を超える一大叙事詩「廻る、巡る、その核へ」を壮大なビデオクリップにあわせて熱演した。普段は壮絶な残響で締めくくられる同曲だが、3人はこの日はインストゥルメンタルナンバーをセッションし始めた。「廻る、巡る、その核へ」から一転して明るいフレーズを散りばめたナンバーは、紙吹雪が高く舞う中でオーディエンスの耳に優しく響く。そしてどこか希望をにおわせる形で、約2カ月にわたった「新世界」のツアーは終了した。
ACIDMAN「ACIDMAN LIVE TOUR “新世界”」
2013年7月26日 東京都 日本武道館 セットリスト
OPENING:gen to(intro)
01. SUSY
02. NO.6
03. swayed
04. 君の正体
05. ラストコード
06. Further ~夜になる前に~
07. スロウレイン
08. Can't Help Falling In Love
09. ALMA
10. 風追い人(前編)
11. 風追い人(後編)
12. アルケミスト
13. FREE STAR
14. to live
15. カタストロフ
16. 新世界
17. 白光
<アンコール>
18. ある証明
19. Your Song
<ダブルアンコール>
20. 廻る、巡る、その核へ
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