Pick Up!
シベリアンハスキー コンソメスープ
大人になる過程の願いや葛藤── 抑えきれなかった衝動が音になる
文 / 蜂須賀ちなみ
2023年に活動を始めた女性ロックバンド、シベリアンハスキー。2ndミニアルバム「アイラブユー!」を聴いて、彼女たちにとって歌とは、ままならない心をどうにかするための試みであり、それでも抑えきれなかった衝動が、剥き出しのロックサウンドとして表出しているのだろうと思った。走り始めたばかりの彼女たちが歌う恋や夢、別れの曲は、思春期の少年少女の願いや葛藤と重なる。
特に印象的だったのが、アルバムのラストナンバー「コンソメスープ」だ。「たまにはわかりやすく大声で泣きたい日だってあるよ だからって慰めてほしいわけじゃないんだけど」と歌っているように、この曲の主人公も願いと葛藤の間にいるようだ。8分の6拍子のゆったりとしたリズムの中で、ボーカルやギターがノスタルジックな旋律を紡ぐ一方、ハイハットは細かく時を刻む。歌詞では記憶の中の風景も今の自分を取り巻く日常も描かれており、主人公は目の前のものを見つめたり、どこか遠くへ心を飛ばしたりしている。複数の時間や場所の間で引き裂かれる感覚、ひいては大人になる過程での複雑な感情がさまざまな形で表現されている。
人は覚えておきたかったことを忘れてしまったり、早く忘れたいことをいつまでも覚えていたりする。成長と喪失はともにあるから、大人になるってほろ苦い。そんな中、この曲では「お守りならさ私の手を握っていればいいよ」と歌われる。私も君も変わり続けるが、つないだ手の温もりは変わらない──いや、私たちの関係は意思を持って変化させない。なんて素敵な友情だろう。
終盤では、美月(Vo, G)の歌声に、かめ(G)、結楓(Dr)のコーラスも重なる。「私は強いよ」と2度繰り返すのは自分に言い聞かせているからで、強がりもあるだろうが、友の存在によって私は私でいられるという確信もある。卒業シーズンが迫る中、令和の青春・友情ソングがまた1つ生まれた。バンドという青春を謳歌しながらこの曲を鳴らす3人の姿を目の前にしたら、きっと拳を上げてしまうだろう。2月25日、下北沢DaisyBarでの自主企画ライブでも、シベリアンハスキーの青春ロックが鳴り響く。
シベリアンハスキー「コンソメスープ」Music Video
シベリアンハスキー
2023年5月に活動を開始した、美月(Vo, G)、かめ(G)、結楓(Dr)からなる女性ロックバンド。2023年10月に配信した自主制作による初シングル「愛する君となら」が注目され、2024年に「JAPAN JAM」「SUMMER SONIC」初出演を果たす。2025年1月に1stミニアルバム「生活にたゆたう」をリリース。同年11月より初の東名阪ツアーを行い、12月に2ndミニアルバム「アイラブユー!」を発表した。2026年2月25日に東京・下北沢Daisy BarでJunkie Machineとのツーマンライブを開催する。
シベリアンハスキー (@siberianhusky_b) | X
シベリアンハスキー (@sibehusky_b) | Instagram
