luv「Ohaguro」インタビュー|1年間の武者修行を経て、2026年初シングルで表現する剥き出しの個性

luvが2026年初のシングル「Ohaguro」を2月4日に配信リリースした。

昨年は初のミニアルバム「Already」と4曲入りのEP「The Seeds」をリリースし、ツアーの開催や大型フェスへの出演など、驚異的なスピードで音楽シーンを駆け抜けたluv。新曲「Ohaguro」は、日本古来の化粧文化・お歯黒をテーマにHiyn(Vo, G)が書き下ろした独自のセンスが光る歌詞と、和のテイストを感じさせるソウルフルなサウンドが印象的な1曲となっている。

音楽ナタリーでは「Ohaguro」のリリースを記念してメンバー5人にインタビュー。彼らが“武者修行”期間だったと語る怒涛の2025年を経て得たもの、「Ohaguro」に込めたメッセージ、今年のバンドのモードについて語ってもらった。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 垂水佳菜

2025年は武者修行期間だった

──2025年は年末年始もお忙しかったのでは? 大晦日までライブしていましたよね。

Hiyn(Vo, G) そうなんですよ。「Ohaguro」を録ったのも年末だったからバタバタで、年末年始の記憶はあまりないですね。

Zum(B) 年が明けて東京から大阪に車で帰ってきたときに、パーキングエリアに寄ったら正月の香りがした(笑)。

Sho(Dr) 俺ら以外の人たちの時間の流れがすごくゆっくりで、自分たちだけがセカセカしてるみたいな感覚はありました。

luv。左からHiyn(Vo, G)、Ofeen(DJ)、Zum(B)、Rosa(Key)、Sho(Dr)。

luv。左からHiyn(Vo, G)、Ofeen(DJ)、Zum(B)、Rosa(Key)、Sho(Dr)。

──まず、2025年がluvにとってどんな年だったのか聞かせてください。昨年2月リリースのミニアルバム「Already」のインタビューでは、luvの音楽を多くの人に届けるための試行錯誤があったとおっしゃってましたが、その甲斐もあり、収録曲「Send To You」がアジアを中心にバイラルヒットしました。その後配信シングルやEP「The Seeds」のリリースもあって、1年を通して“多幸感ソウル”路線を貫いていましたよね。

Hiyn 「2025年は“多幸感ソウル”でいこう」と最初に決めた通り、一貫性のある活動ができたと思います。そのスタンスで1年やりきったことで、聴いてくれる人の数が明らかに増えたし、少しずつですけど結果も出始めていて。僕らとしてはけっこう思いきった決断だったんですよ。去年出した曲はインディーズの頃とは違った雰囲気だったから、リスナーの中には「けっこう変わったな」と感じた人も多かったはずで。だけど、そう思われることも加味したうえで我々は“多幸感ソウル”でいく判断をした。去年は本当に、いい武者修行期間になりました。

──それはなぜ?

Hiyn 今年で僕たちは学生ではなくなるんです。「人生を懸けて音楽をやっていくには今何をするべきか?」「luvは音楽業界でどう生き残っていこうか?」と全員で考えた結果、いろんな人に聴いてもらえるバンドになる必要があるなと。メンバー内ではそういう意識のすり合わせがありつつ、メディアに出るときはわかりやすいように“多幸感ソウル”とか“あったかソウル”と表現するようにしていて。

Ofeen(DJ) バンドを始めた頃は「自分たちがカッコいいと思える音楽をやれたらなんでもいいや」と思っていたので、当時と比べると、より自分のプレイやアレンジについて考えるようになりました。みんなで楽曲を詰めていく過程でも、「こうしたほうがいい」「ああしたほうがいい」といったやりとりが増えました。

Rosa(Key) 2025年は、より丁寧に音楽活動に取り組めた1年だったと思います。好きな音楽や嫌いな音楽は人それぞれ違うけど、“いい音楽”の水準はどこかにあるんじゃないかと模索して。その水準に到達できるよう、楽器の練習をがんばったり、市場で売れている曲がどんなものなのか分析したり、それを楽曲制作面に生かしたり。メンバー間でコミュニケーションを積極的に取るようにもなりましたね。それぞれの得意不得意を自分だけの中で分析せずに共有するようになったし、クオリティを高めることに照準を定めて、着々と努力を積んでいけた1年だったのかなと思います。

luv

──例えばどんな試行錯誤がありましたか?

Sho ドラムで言うと、去年の上半期は歌を立たせるために、シンプルなアプローチを意識していたんですよ。そこには「ドラムの音をちゃんと聴いてる人なんてそんな多くないだろう」という若干卑屈な思いもあったけど、だんだん「いや、違うんじゃないか?」「曲に対して直接アプローチできる、かなり大事な楽器だよな」と気付き始めて。だったらもっとチャレンジするべきだということで、耳触りのいいフィルインやパターンをかなり模索しました。その結果「The Seeds」にはシンプルなフレーズだけではなく、曲の雰囲気を引き立てるようなフィルインをいろいろと詰め込むことができました。今は「フレーズ自体は派手ではないけど、ドラムの存在によって曲がちょっとゴージャスになれば」という意識で叩いてますね。

今後何があっても大丈夫

──そういった個人単位での試行錯誤もありつつ、バンド単位でも考えることややるべきことがたくさんあったと。皆さんにとって非常に濃い1年だったんでしょうね。

Hiyn プラスなこともマイナスなこともシリアスなこともあって、楽しかったし、しんどかったです。エグいケンカをしていても、おかしくなかったと思う。そんな中でも5人でときどきチョケ合いながらがんばれたのがよかった。

luv

──どういった面にしんどさを感じました?

Hiyn 時間的にも、精神的にも。僕らは東京に出てくるときはAirbnbで宿を取って、5人で一緒に生活をしているんですよ。仕事も一緒で、帰る場所も一緒。メンバーとはほぼ家族のような感じなんですけど、泊まるところは毎回違うから、慣れない場所で寝起きすることになる。そういう小さなストレスって、どうしても積み重なっていってしまうものじゃないですか。

──そうですね。ストレスが溜まると、近くの人に当たりたくなってしまいそうです。

Hiyn だけどケンカせず、お互いにある程度の節度を持って接することができた。それはやっぱり5人全員が2025年に懸けてたからだと思うんですよ。僕が最近個人での活動をあまりやらなくなったのは、そういうところが一番デカくて。何かしんどいことがあったときに1人で抱えるのと、5分割できるのでは全然違うじゃないですか。そんなときはバンドをやっていてよかったなと思いますし、去年を乗り切れたから、今後何があってもマジで大丈夫。

Zum 「Already」で始まった2025年は傍から見れば飛躍の1年だったかもしれないけど、僕らからすると現状を整理して、2026年に向けて土壌を整えていくような1年でした。リリースした作品に対していいリアクションをもらうことができたし、僕らはほかのバンドと比べて何を持っているのか、何が足りていないのかを、しっかり見つめ直すことができた。だからこそ、「Ohaguro」でもチャレンジングなことができたんです。

luv

脳汁が出る瞬間を

──その武者修行の期間を経て、2026年1発目の楽曲を制作するうえで意識したことは?

Hiyn 自分らの脳汁が出る瞬間を増やしていくべきというか、そういう曲を作りたくなったんです。デビューして間もない新人に武者修行の期間は必要だし、ほかのバンドだったらもっと売れまくってからエゴの割合を増やしていくと思うんですよ。でも、luvはいろんな曲を作れるのが強みだから、年ごとにオモロいことをやっていくのもいいんじゃないかと。去年の武者修行期間があったからこそそう思えるようになったし、「いろいろな人に届く曲を」という部分が自然と鍛えられたので、2026年はカマしの1年にしたいんです。

──「Ohaguro」の制作はどのようにスタートしたんですか?

Hiyn まずは僕とOfeenの2人で原型を固めていきました。

──HiynさんとOfeenさんはGeloomyとしても一緒に活動してますが、これまでお二人でluvの楽曲を作ることはなかったですよね?

Hiyn そうなんですよ。去年の10月頃にOfeenから「16小節のトラックができた」と連絡がきて、うちで詰めることになったんですけど、結果的にそれが「Ohaguro」のAメロ~Bメロになりました。

luv

Ofeen 最初はロバート・グラスパーっぽいことをしたくて、練習がてら個人的にトラックを作っていたんですよ。もともとはluvに持っていく予定はなかったんですけど、「なんかヒップホップっぽいドラムループあるな」って適当に貼り付けたらAメロができて。Bメロはブルーノ・マーズとアンダーソン・パークのSilk Sonicのアルバムの雰囲気を出したくて、「チャララ~チャラララ~♪」みたいなフレーズができました。

Hiyn Bメロの特徴的なピアノフレーズのことです(笑)。

Ofeen あのピアノフレーズができたことで、「和風だし、luvに持っていくのもアリかも」と思ったんです。Hiynの家でサビを作って、メロディを乗っけて……と進めていくうちに、もう一気に方向性が決まって。その日のうちにフルコーラスが完成しました。

Hiyn 2人で作ってるとき脳汁エグかったな。

Ofeen 溺れてましたね、脳汁で。