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Daizy Untangle
内面の変化と地続きの名義変更──空白を受け入れたからこそたどり着いた歌詞世界
文 / 黒田降憲
アーティスト名義をAnonymouzからDaizyに変更して以降、初のEPとして1月14日にリリースされた「HOLLOWNESS」。そのリード曲「Untangle」は、この名義変更が単なるリブランディングではなく、彼女自身の内面の変化と地続きのものであることを強く印象付けている。
イントロから不穏なシンセのレイヤーが、聴き手をダークでアブストラクトな音響空間へと導いていく。Kay Clackerによるアレンジは、余白と緊張感を巧みに保ちながらも楽曲全体をひとつの「舞台」のように形作る。その中でDaizyは、地声とファルセットをセクションごとに使い分け、感情の層を丁寧に描き分けた。
とりわけ印象的なのは、サビで訪れるカタルシスだ。「Untangling a curse」というフレーズが繰り返され、まるで長く絡みついていた呪縛から解き放たれるかのようにサウンドスケープが広がっていく。ソウルフルなメロディと、艶やかでありながら透明感を失わない歌声、そして陰影のある打ち込みトラックの組み合わせは、FKAツイッグスやMINAKEKKEの作品にも通じるような緊張感を孕んでいる。
これまでDaizyはシティポップやR&Bなど、さまざまなスタイルに果敢に挑戦してきた。その歩みは一見すると順調なキャリアの積み重ねにも見えるが、名義変更を挟んだこのタイミングで彼女自身は「一度、自分が空っぽになってしまったように感じる時期があった」と語る。「Untangle」は、そうした感覚を象徴する曲であり、“何かを失うことで、同時に何かを得ることもある”というEP全体のテーマを最も純度の高い形で結晶化している。
愛することそのものが「痛み」と結び付いてしまった過去。その意味が、他者との触れ合いによって少しずつ書き換えられていく。「呪いが解ける」とは、過去が消えることではなく、その解釈が更新されることなのだ。名義を変え、一旦空白を受け入れたからこそたどり着いたであろう、その歌詞世界。自分自身をほどき直すようにして生まれた「Untangle」は、Daizyの新章の幕開けを告げるにふさわしい強度と繊細さを併せ持つ楽曲だ。
Daizy - Untangle [Official Music Video]
Daizy(デイジー)
長野県出身、24歳のシンガーソングライター。アイルランドと日本のハーフ。2019年3月よりJ-POP楽曲の英語カバーをYouTubeに投稿し、自ら手がけた翻訳のセンスと歌唱力で注目される。2023年2月にデビューアルバム「11:11」とシングル「River」を同時発売。2024年4月にシンガー / トラックメイカーはしメロとのコラボシングル「なにする? feat. はしメロ」を配信リリースした。同年10月に発表した「ふたりじめ」が、日本テレビ系ドラマ「3年B組は不倫してます。」主題歌に使用された。2025年5月21日、自身の24歳の誕生日にアーティスト名義をAnonymouzからDaizyに変更した。
