岩橋玄樹「Dangerous Key」特集|歌で伝える自分の“リアル”──ありのままの自分で新たな未来へ

2021年にソロアーティスト活動を始め、今年で5年目を迎えた岩橋玄樹。このたびメジャー1stシングル「Dangerous Key」をテイチクエンタテインメントよりリリースした。

これまで王道アイドルソングからヒップホップチューンまで多彩な表現を見せてきた岩橋が、メジャー1stシングルで届けるのはスケール感あふれるロックナンバー。新たな一歩を踏み出そうとしている人たちに向けたパワーソングとして制作された楽曲だ。

音楽ナタリーでは岩橋にインタビューし、音楽的なルーツやアーティスト活動において大切にしていること、そしてメジャー1stシングルの制作について話を聞いた。

取材・文 / 中川麻梨花撮影 / 梁瀬玉実

「応援してきてよかった」と言ってもらえるときが一番うれしい

──岩橋さんは2021年12月にソロアーティストとしての活動をスタートさせて、今年で5年目を迎えました。今は作詞作曲に加えて、ご自身でライブの演出や映像も手がけていますよね。

僕は2010年から芸能活動をしてきたんですが、2021年にソロアーティスト活動を始めるまでは、ゼロから自分で何かを作るという経験がほとんどありませんでした。でも、1人で歩み始めてからは、周りのスタッフさんに相談しながら、自発的に物作りをするようになりましたね。「こういうことがやりたい」とスタッフさんに伝えて、それを実現するにはどういう方法がベストなのかを一緒に考えています。曲を聴いてくれた人やライブを観てくれた人に「応援してきてよかった」とか「玄樹くんを誇りに思う」と言ってもらえたときが一番うれしいです。

──ファンの方々のその言葉が岩橋さんのモチベーションになってるんですね。

はい。その言葉に恥じないような生き方をしていきたいなと思っています。

岩橋玄樹

──昨年4月には、自ら全4曲の作詞作曲とアートワークを手がけたEP「THE GÉNKI I」がリリースされました。岩橋さんの人生を詰め込んだような剥き出しのヒップホップ作品で、ものすごくシビれましたし、血の通った作品だなと感じました。

ありがとうございます。2024年に「花、暖かく」という曲の作詞をしたんですけど、あの曲の歌詞もいろんな意味を込めて書いていて。前向きにがんばっていく気持ちを歌った曲になっていますが、実は自分のつらかった思い出やトラウマをちょっとずつ曲の中にちりばめたんです。「花、暖かく」を作ってから、自分のリアルな感情を曲に込めていきたいなと思うようになって。僕が好きなヒップホップというジャンルで、ありのままに曲を作ってみたいという気持ちが芽生えました。でも、「THE GÉNKI I」は初めからEPをリリースしようと思って曲を作ったわけではなかったんです。僕は東京とLAの2拠点で生活してるんですけど、ある日LAの家のリビングでボーッとしてるときにメロディが浮かんで、その日に一気に曲ができて。アートワークも日本に帰ってくる飛行機の中でバーッと描きました。あの時期は、何かに取り憑かれたように、ものすごいスピードで筆を進めていましたね。

「THE GÉNKI I」ジャケット

「THE GÉNKI I」ジャケット

──LAでの生活で感じたことが、ご自身の作品に影響していますか?

そうですね……LAってたぶん日本の皆さんが思ってる以上にサバイバルな世界で。人々の貧富の差などが、天と地のように目に見えてわかる。「生きていかないといけない」という人間の本能を感じる街なんです。僕は比較的平和な日本という場所でアーティスト活動をさせてもらってきたけど、LAに住むことで、世界にはもっともっとつらい人や大変な状況の人がたくさんいるということがわかった。だからこそ、自分の歌を通して落ち込んでる人を少しでも元気付けたいと思うようになりました。

音楽は何歳になってもずっと続けたい

──岩橋さんにとって、アーティスト活動を始めてからの4年間で特に大きかった出来事は?

去年、ロサンゼルスのイベントに2回出させてもらって。日本語がわからない方々の前に立って1人で英語のMCをしたことで、すごく心が鍛えられました。去年はめちゃくちゃいろんなことをやりましたね。世界遺産の春日大社でライブをさせてもらったり、音楽だけではなくお芝居もさせてもらったり。そういった経験を通して、ソロアーティスト活動を始めた頃に比べて、自分がやりたいことがだんだん明確に見えてきた気がします。アーティストとしてはまだまだですけど、ファンの皆さんに少しは恩返しできた1年だったのかなと思いますね。

岩橋玄樹

──俳優やブランドプロデューサーなど多方面で活躍していますが、その中で音楽活動は岩橋さんにとってどういう位置付けのものですか?

あくまでも音楽活動が僕の原点だと思っています。音楽は何歳になってもずっと続けたいですね。僕は自分の世界から音楽がなくなったら生きられない人間なので。

──音楽がなかったら生きていけないというのは、いつ頃から感じていることなんでしょうか?

小学校低学年くらいのときからかな。芸能活動を始める前から、音楽はずっと聴いていました。常に音楽と一緒に生活していましたね。

──その中でもヒップホップは、岩橋さんの人生を語るうえで欠かせないものだと思います。

そうですね。中学1年生になって携帯電話を持ち始めた頃、学校の帰り道にT.I.の曲を初めて聴いて、「こんな音楽があるのか……!」ってすごく衝撃を受けました。そこからアメリカのヒップホップカルチャーにもどっぷりハマって。もともと小学校のときからディズニーチャンネルで海外ドラマを観る機会は多かったんですけど、アメリカのエンタテインメントにより興味を持つようになりました。

岩橋玄樹

──憧れのアーティストとしてリル・ウェインを挙げていますが、彼の音楽との出会いは?

昔、グループのメンバーに「玄樹とリル・ウェインってなんか似てるよね」って言われたことがあったんです。身長が同じ160cm台で、小さかったからなのかな。あと、僕もリル・ウェインみたいな服を着てたんですよ。特に周りでヒップホップが流行ってたわけじゃないんですけど、僕はアイドルなのにめっちゃ腰パンして、NEW ERAの帽子を被っていました(笑)。「似てる」と言われたのがきっかけで、リル・ウェインとクリス・ブラウンのコラボ曲「Loyal」を聴いたら、本当にカッコよくて。それでリル・ウェインの昔の作品を追っていって、ドキュメンタリーも観て、「身長が小さくて、フィジカルがそんなに強いわけでもないのに、こんなにもメンタルが強い人がいるんだ」と思って憧れるようになりました。

──人間的なところも含めて憧れているんですね。

はい。堂々として、怖いことがないような感じで生きてるのがすごくカッコいい。歌やファッションはもちろん、人として憧れています。

“アイドル”に恩返ししたい

──2月4日には、岩橋さんが数多くのアイドルソングをカバーしてきたライブシリーズ「愛♡魂-icon-」の音源および映像作品がリリースされました。音楽ナタリーで本作発売のニュースを掲載させてもらったところ、すごく大きな反響がありまして。

ああ! Xで見ました!

──ティザー映像が公開されて、「アイドルが天職」という声もたくさんありましたが、この反響はどのように受け取っていますか?

すごくうれしいです。でも、「当たり前だな!」という気持ちもありますよ。やっぱりそういう気持ちでいないと。恥ずかしがっていたら、アイドルはできないから。

──「愛♡魂-icon-」はそもそもどういう思いでスタートさせたライブなんですか?

日本のアイドルの素晴らしさをたくさんの方々に伝えたい、という思いで始めました。自分がアイドルとして育ってきたからこそ、アイドルに恩返しがしたい。そして、これからアイドルを目指す子たちがいっぱい出てきてほしいなと思っています。今は僕1人でやってるシリーズですけど、「愛♡魂-icon-」がいつかもっと大きなフェスになって、それを観て「アイドルになりたい」と思う子たちが増えたらうれしいです。それが僕の目標ですね。あと、僕はヒップホップが好きだけど、カッコいい感じの曲ばかりやっていてもファンの皆さんが飽きちゃうから、「愛♡魂-icon-」を通してアイドル全開の自分も見せたい。「愛♡魂-icon-」を開催するたびに、お客さんの目が輝いてるなって思います(笑)。

──岩橋さんの楽曲といえば、「PAJAMA PARTY」(2022年5月発表のシングル曲)や「あたしだけのスーパーマン feat. コレサワ」(2024年10月発表のシングル曲)といった王道アイドルソングから「Bless me」(2025年9月発表のシングル曲)のようなハードなロックナンバー、EP「THE GÉNKI I」収録の4曲のようなヒップホップチューンまで、振れ幅がかなり大きい印象です。アーティストとしてここまでいろんな表現ができると、シングルを作るときに毎回どのジャンルにするか迷うのでは?

うーん……例えば、1stシングルでしっとりとしたクリスマスソング「My Lonely X'mas」を出したときに、もうその時点で僕の頭の中では2ndシングルはアイドルソング的な「PAJAMA PARTY」にしようと決めていて。そんなふうにいろんなジャンルの曲をリリースして、コンサートでやりながら、実は何年もかけてファンのみんなの反応を見ていました。皆さんのリアクションを確かめたうえで、「この前はこういう曲を出したから、次はこのジャンルの曲がいいんじゃないか」と流れを考えていますね。

岩橋玄樹

──ファンの視点を大切にされてるんですね。

自分を客観視できなくなったらいけないと思っていますし、皆さんが当然のようにコンサートに来てくれるとはまったく思っていないんです。だからこそ、応援してくださってるファンの方1人ひとりの思いを大切にしながら活動していきたいなと思っています。