青春ヶ丘俊光「THE BEST5」インタビュー|欲張りだからもっと行きたい、誰かの青春のその先の先へ

大人気動画クリエイターグループ・東海オンエアのメンバーである「としみつ」こと青春ヶ丘俊光が、新作ミニアルバム「THE BEST5」をリリースした。「THE BEST5」は約1年半ぶりの新作で、俊光自らがトラックの細部やミックスにまで携わり、楽器の個性が際立つバンドサウンドを追求した全6曲が収録されている。

音楽ナタリーでは上京中の俊光にインタビュー。「THE BEST5」の制作についてはもちろん、BLUE ENCOUNTらとの競演で「今日、死ぬ可能性があるな」と震えた対バンツアーの舞台裏から、田原俊彦ら男性アイドルの所作に学ぶステージングの美学、そして自らの“青春”の定義まで、「青春ヶ丘俊光」を形作る熱い思いをじっくりと聞いた。

取材・文 / 張江浩司撮影 / YOSHIHITO KOBA

「今日、死ぬ可能性があるな」

──前作「THE BEST4」リリース後、昨年4月から5月にかけて「激烈‼︎対バンツアー2025」が開催されました。初の対バンツアーはいかがでしたか?

バンドでメシを食ってる人たちにとって対バンは日常的なことだと思うんですけど、僕の場合は対バン自体が珍しいことなんですね。だから、まず緊張感がすごかった。ただ、そこで気負いすぎてもダメなんだなと学びました。いいライブする人たちは、そんなことを考えながらやってないとわかったんで。いつも通りの自分でパフォーマンスをすればいい、と思いながらライブに臨みました。

青春ヶ丘俊光

──対バンから学ぶことも多かったんですね。

いや、もうビシビシ刺激受けましたよ! 皆さんすごかったですけど、例えばブルエン(BLUE ENCOUNT)さんなんてフェスの常連じゃないですか。リハを観ながら「今日、死ぬ可能性があるな」と思いましたもん(笑)。ブルエンさんのものすごいライブのあとにつまんないライブをやっちゃったら、終わるなと。「誰も観てくれなくなっちゃうんじゃないか」みたいな恐怖感。対バンって仲良しこよしだけじゃない、真剣勝負の場でもあるんですよね。

──その環境の中で、俊光さんは“自分ことを初めて知るお客さん”を振り向かせることができた手応えはありましたか?

正直、そこまで余裕はなかった気がするなあ……。集客含め、順風満帆ではなかったので。でも、いろいろ自信は付きました。ベガス(Fear, and Loathing in Las Vegas)のあの強烈なサウンドのあとにステージに上がるわけですから。度胸が付きましたね。

──「ヤバい、死ぬ!」と思いつつ無事生還したぞ、という。

死なずには済んだんじゃないかなあ(笑)。死んでたらもっと落ち込んでると思うんで。お客さんもあったかい方が多かったですし、「初めて観る人も、どうか今後の俺にも注目してほしい」と願いながらやってました。こういう環境の場数を踏んでいるかどうかで全然違うと思うんですよ。とにかくやるしかない。頭で考えても意味がない。実際にやってみないとわからないことが多すぎて。

青春ヶ丘俊光

「いい歌」の正解

──「THE BEST5」は前作から1年半ぶりの新作です。少し間が空きましたね。

なんでかと言うと、単純に制作する時間がなかったから(笑)。1年に1枚は作品を出したいと思ってるんですけど、気付いたら1年が過ぎちゃってて。不思議なことに、毎回時間がなくなるんですよね。

──今作を作るにあたってコンセプトは決めましたか?

「コンセプトはない」と言っちゃっていいかな。作り方はいつも一緒で、トラックメイカーから送られてきたトラックに歌詞とメロディを付けるという流れ。結果、こんな作品に仕上がりました。僕はけっこう曲が完パケしてからも不安なタイプで。実はレコーディングしたあともあんまり納得しきれていないというか、ふわっとしてるんです。聴き返しているうちにだんだん好きになっていく。

──トラックについては事前に要望を伝えたりするんですか?

今まではできあがったものをそのまま歌うことが多かったけど、今回はわりと話しましたね。「こういう展開のほうがよくないですか?」とか。ミックスについてもいろいろ伝えたら、それを汲んでくれて。今まではボーカルが前面に出てる感じだったんですが、今回はもっとバンドっぽいサウンドです。楽器が“わがまま”に聞こえてくる部分もあったり。僕がこんなにトラックに意見を出したのは初めてですね。これまでは自信がないから言えなかったのかな。

──俊光さんが自分の要望を言語化できるようになってきたということですかね。

それはあると思います。「自分の専門じゃないし」と思って躊躇していたけど、「このギターのフレーズをもっと聴かせたいです」とか、要望を具体的に言えるようになってきました。

──今作で、特に俊光さんがこだわった部分はどこですか?

歌い方ですかね。今まではきっちり歌ってきたんですけど、今回はいい意味で粗い部分があります。「みんなはこの曲をどういうときに聴くんだろう」と考えて、その気持ちをイメージしてマイクに向かうと、やっぱりただきれいに歌うだけじゃなくなるんですよね。ちょっと荒々しく投げるような口調にもなったりもするし、切なくなったりもする。「THE BEST4」まではそこまで意識してなかったです。

青春ヶ丘俊光

──譜面的な正解よりも、エモーションを重視するようになったと。

そうです。「いい歌とはなにか」を考えるようになりましたね。きれいなだけの歌はつまんねえな、もっと自然体で歌えねえかなと思ったりして。より“勝手”になりました。歌を録るときも、ちょっとしたことが気になって「もう1回いいすか?」とテイクを重ねちゃうタイプだったけど、今は、前まで気になっていたようなアラも許せるようになってきました。何回も歌い直すと何がいいのかわからなくなってくるんで、今は一発で決めるつもりで歌って、きっぱり次に行くことが多いです。

──俊光さんにとっての「いい歌」の正解は見えてきつつありますか?

いや、わかんないですね。たぶん、ずっと変わっていくものだと思っています。今年で33歳になりますけど、30代になってから表現できるようになったことも増えましたし、そのときどきで「いい歌」の正解は変わるのかなと。

──歌は自分の体の変化がダイレクトに現れるので、今後年齢を重ねていくと「やりたいこと、やれること」もどんどん変わっていくかもしれないですね。

そうっすね。10年後の俺は自分の曲を原キーで歌えんのかな? 今でも高いと思ってるんですけど(笑)。でも、キーを下げるのは美しくないと思うし。……そういったことを一瞬考えて不安になったりもするけど、そんな変化も含めてストーリーかなと思うので、気にはしてないですね。