女王蜂のニューシングル「PERSONAL」が2月11日にリリースされた。
結成15周年を迎えた2024年6月、女王蜂は全国ツアー「FINAL ANGEL」を開催するはずだった。しかし初日のステージでアヴちゃん(Vo)は体調不良に陥り、その場でツアーの中断と活動休止を宣言。翌2025年1月から始まったツアー「狂詩曲~ギャル爆誕~」でアヴちゃんは活動を再開し、3月には2年ぶりのアルバム「悪」を、4月にはシングル「強火」をリリース。国内外のフェスやイベントにも出演するなど、再びその勢いを加速させている。
ニューシングルの表題曲「PERSONAL」はテレビアニメ「地獄楽」第二期エンディングテーマとして書き下ろされた楽曲。カップリングにはこちらも新曲の「HELTZ」が収められている。このシングルのリリースにあたり、音楽ナタリーではアヴちゃんへの単独インタビューを実施。復帰後初めてメディアの取材に応えたアヴちゃんは活動休止前後の赤裸々な心境、「PERSONAL」「HELTZ」に込めた思い、自らの変化についてたっぷりと語ってくれた。
取材・文 / 天野史彬撮影 / 森好弘
2025年はさなぎの状態
──ひさしぶりのインタビューということで、まずは昨年の活動を振り返らせてください。2025年は復帰から明けて、アルバム「悪」やシングル「強火」のリリースがあり、たくさんのライブも行われました。振り返ると、どんな1年でしたか?
大変で、大切な1年でした。自分とすごく向き合ったし、周りとも“目が合った”。そんな1年でしたね。これまでは毎年、個人的な目標を決めていたんです。その目標に向かって女王蜂と一緒にがんばっていく、という感じだったけど、去年はそこに「まずはライブができるようになる」みたいな、周りのみんながいないとできないことが増えていって。
──それはやはり、2024年6月からの休養があったからですよね。
そうですね。休養する前の最後のほうは、ごはんも食べることができない、眠ることもできない……「どうしたらいいんだろう?」というところまでいってしまって。その状態でステージに立ってしまったんです。あのときのことが忘れられなくて。どこにも力が入らないし、声も張れない、ライブをやれない。そんな状態なのに、お客さんが「がんばれー!」と言ってくれる。「がんばれー!」なんて言ってもらうの、15年間やってきて初めてだった。あのとき、その場で「休もうと思います」と宣言したんです。今はあの状態からはだいぶ戻ってきていて、日常生活も送ることができているし、ステージに立つこともできる体調ではあって。去年は、なんて言ったらいいのかな……さなぎの状態というか。外から見たら甲殻類みたいにしっかりしているけど、中はずっとドロドロ。「どう形成していけばいいんだろう?」って、自分でも考えていた1年でした。
──ライブに対しての向き合い方は、去年1年で変化もありましたか?
ありました。ライブって、神社のようなことを人力でやるものだと思っていたんです。その日に向かって溜めてきた日々の鬱憤や楽しみな気持ちを私たちが受け止めて、空(くう)にぶち上げる。女王蜂のライブはずっとそういうものだった。毎回“人ならざるもの”になるというか。それを、今のこの状態でもやらないといけないんだなと思いました、どんな手を使ってでも。それが発見でした。女王蜂のライブの、終わったあとの清々しい気持ち。あの清らかな心にたどり着くまでぶち上げなきゃいけない。それが私たちの使命なんですよね。日々生きていくこと、考えること、そのすべてがそこに向かっていくためのものでした。でも去年は全然追いつかなくて。迷いながら、でも一歩一歩は確かに進んでいる、そんな感覚でした。今までは何歩かもわからないくらい「あ、行っちゃった!」って(笑)、タタタタタッと進んでいく感じで。それは、いろんなお仕事を一斉に引き受けていたからでもあるし。少し無理をしていたんだなあと思います。
──そのうえで、今も「神社のようなものを人力で生み出すのが女王蜂のライブ」という使命は変わらないということですね。
そうですね。「女王蜂のライブを観てよかった」と思われていたいから。でも、それを天然で、何も考えずにやれていた頃の恐ろしさ(笑)。15年間、何も考えずに「これが使命だから。私たちセーラームーンだから」ってやれていた頃の恐ろしさに気付きました。
最近はみんなでアヴちゃんを形作っている
──昨年リリースされたアルバム「悪」は、振り返ると、アヴちゃんにとってどんなアルバムですか?
叫んでいるアルバムだなと思います。「もう疲れた!」って叫んでるアルバム。海外公演の合間に制作していたのもあって、1フライトの間に4曲書いちゃう、みたいな感じだったんです。追い込まれると曲が書けることがわかって、反射的にずっとずっと書いていた曲たちが、あのアルバムには連なっていて。孤独を、しっかりと叫んでいるアルバムだと思います。
──タイトルの「悪」という言葉に、アヴちゃんはどんなものを込めたんですか?
まず「亜細亜(アジア)の心」で「悪」と書く、と気付いて、それがいいなと思ったんです。悪がないと成り立たないものもいっぱいあるし。あと「悪ってどういうものなんだろう?」と考えてみたときに“引き受ける力”も、悪の中にはあるんじゃないかと思いました。悪い人にはなりたくないけれど、ときとしてそこに手を染めてしまう人もいる。法に触れていない悪もいっぱいあるじゃないですか。アルバムを作っていたのは、そういうものに対してのアンテナが立っていた時期だったんだと思います。
──あのジャケットにはどのようなイメージがあったんですか?
「悪」と言いながら、風を受けてさわやかに立っていたら面白いなと思って(笑)。
──(笑)。
……白いワンピースで、無垢な状態。そこに向かって突き刺さるように、レーザーポインターが当たっているんです。あれを見た瞬間に、見ている側が「悪」になるんじゃないかと思いました。周りも巻き込んだジャケットですね。
──去年1年は「周りと目が合った1年だった」とおっしゃいましたけど、そのことでどんなことを感じましたか?
みんな、女王蜂とともに「やってこなかったこと」や「見たことのないもの」を作りたいんだなと、スタッフ全員を見て思いました。だから私たちと一緒にやってくれているんだな、と。最近の撮影もそうだったんですけど、ほぼ丸1日フル稼働で、メイクひとつとっても、場所のコーディネートひとつとっても、みんな妥協がゼロ。それを感じた瞬間に、言い方は悪いかもしれないけど、エゴが見えて。それがすごく素敵だなと思いました。ゾクゾクしちゃった。「あともうひと息だからね」とか言いながら、全然撮影が終わらない(笑)。でも、それが女王蜂の現場なんです。その中心人物が自分だったということ。それを自覚したし、自覚できたことでやっと周りと目が合ってきた。前まではみんながアヴちゃんを仰ぎ見ている感じだったけど、最近は、みんなでアヴちゃんを形作っている感じがして。
──一緒にやっている感覚があるんですね。
うん、「1人じゃないんだなあ」と思います。当たり前のことなんだけど、今はそんな時期です。きっとまた1人になると思うし、そこからものを作っていく時期は来ると思うんです。でも今は何を作るにしても、チームで作っているという感覚が強いです。
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やしちゃん、ひばりくんに“おんぶに抱っこ”でいいんだ






