昨年ABEMAの恋愛リアリティショー「今日、好きになりました。ハロン編」に出演して話題を集めたMON7Aが、ユニバーサルミュージック / EMI Recordsよりメジャーデビューシングル「TOGE TOGE」を配信リリースした。トレードマークのトゲトゲした髪型を彷彿とさせるタイトルが冠された楽曲には、「常にトガっていたい」という彼の思いが込められている。
音楽ナタリーではMON7Aの音楽ルーツやパーソナリティに迫るべく本人にインタビュー。昨年Z世代の話題の中心であり続けたMON7Aが、今年は音楽シーンに旋風を巻き起こす。
取材・文 / 西廣智一撮影 / YOSHIHITO KOBA
歌うことがとにかく好きだった
──最初に音楽に興味を持ったきっかけは覚えていますか?
ちっちゃい頃、3歳くらいのときに好奇心からピアノを習い始めて。それが10年くらい続いたので、たぶんピアノが原点なのかなと思っています。あと、家の中でずっと音楽が流れている家庭で育ったことも大きいかもしれません。朝起きたときから寝る前までずっといろんな音楽が流れていて、当時は誰のどんな曲かまったく知らなかったんですけど、あとになってひさしぶりに聴いたら「あ、これ知ってる。いい曲だな」と思うことも増えています。
──ご家庭ではどんなジャンルの音楽が流れていたんですか?
日本の曲はあんまり流れていなくて、ジャズやブラックミュージックが中心でした。両親がそういう音楽が好きだったので、そこからの刺激や影響はかなり大きいです。
──そういった音楽がMON7Aさんにとって心地よかった?
日本語じゃないから何を歌っているのかはまったくわからなかったんですけど、メロディやリズムが心地よくて。気付いたら体に染み込んでいましたね。特定のジャンルやアーティストというより、曲単位で好きになることが多くて。今はJ-POPもK-POPも洋楽も聴くし、ダンスミュージック、バンドものとかジャンル関係なく楽しんでいます。
──ピアノを通して、自分で音楽を奏でることにも興味を持ち始めた?
そうですね。だんだん技術が付いて、いろいろ弾けるようになるのが楽しくて。ピアノ教室ではただ弾くだけというよりは、実は当時から弾き語りみたいなことをやっていたんです。今振り返るとよく許可してくれたなと思うんですけど、ピアノの発表会でも弾き語りで出させてもらって。歌うことがとにかく好きだったので、ピアノはあくまで伴奏という解釈だったのかもしれません。
音楽を続けるのなら、“1人”じゃないと無理だろうな
──歌うことが好きなのは、物心ついたときから?
はい。歌うと周りの人たちからすごく褒められたので、それが自信につながったのかな。
──弾き語りは既存の楽曲のカバーだったかと思いますが、そこからオリジナル曲を作ったり、自己表現により力を入れるようになったのはいつ頃でしたか?
中学生のときですかね。うちは俺以外家族全員ギターが弾けて。ちょうど中学生の頃がコロナ禍で、そのタイミングでギターを教えてもらって弾けるようになり、ギターを使ってオリジナル曲をぼちぼち書き始めました。そこから高校生になって、軽音部に入ったときに1曲フルコーラスを作る合宿があったんですよ。2つバンドを掛け持ちしていて、そこで作った2曲が初めての本格的なオリジナル曲ですね。ただ、そのときに「音楽を続けるのなら、1人じゃないと無理だろうな」と思ってしまったんです。
──バンドではなく、個人で曲作りを進めたかった?
そのときは自分がやりたいことに対して周りを巻き込んでいる感覚が強くて。曲を作れる人が俺しかいなかったですし、人一倍こだわりが強かった。そこに対する罪悪感みたいなものもあったし、音楽をやるなら自分1人でやるほうがいいなとずっと思っていました。
──バンドは複数の人間が関わるので、その中でバランスを取らなきゃいけないですし、だったら自分1人で徹底的にこだわったものを作ろうということですね。将来を考えたとき、音楽の道に進むという選択肢はMON7Aさんの中にあったんですか?
「プロになる」とか「この世界で食べていく」とか、現実的に考えたことは一度もなかったです。高校生になってから「卒業したあとも音楽を続けていけるのか? 俺はこれからどうやって生きていくんだろう?」とずっと思っていたんですけど、そう考え始めたタイミングからTikTokに弾き語り動画やオリジナル曲を投稿し始めて、気付いたら今につながっていました。
自分に足りないものを埋めるためにがんばり続けた
──TikTokをはじめとするSNSでの展開を含め、MON7Aさんは自己プロデュース力に長けているなという印象があります。
ありがとうございます。俺は自分の音楽にもちろん自信はあるけど、それ以外も強みがあるほうだと思っていて。そういう意味では、自分で発信することが求められる今のSNS時代とすごく合っていたんでしょうね。ただ、実際には勢いでやっているところも多くて。最初の頃は「まず海外の人に注目してもらえれば、そこから日本の人たちにも届いていくんじゃないか」という程度にしか思ってなかったんですよ。でも、やっていくうちに「弾き語りだけしていても観てくれる人は増えないから、それ以外のことにもチャレンジしてみよう」と思って別のアカウントを作ったり、次第にいろいろ考えられるようになったことで、物事が好転していったのかなと思います。
──気付けば、机に足を上げて撮影するといった独特な動画スタイルとして「もんた界隈」なんて言葉が世界中に広まっていった。そこもご自身の中では計算通りでしたか?
いやいや、そこは本当に想定外でした。動画にものすごく反響があったのは素直にうれしかったけど、それが日本だけでなく海外にも広がるとは全然思ってなくて。でも、そのおかげで「俺はもっといけるはず」と手応えを感じられたので、それはすごく大きかったですね。
──ここまでお話を聞いて、MON7Aさんはご自身や自分の音楽に対して、絶大なる自信を持っていることが伝わりました。これって元来持ち合わせていた性格なんですか?
いや、俺は自分に対する自信が全然なくて。ないからこそ自分を客観的に見ちゃう癖がありますし、自分の足りないところも自然と見えてくる。それによって「こうしたほうが、いろんな人に好きになってもらえるかな」とかいろいろ考えちゃう性格なので、自分に足りないものを埋めるためにがんばり続けた結果、そう見えているかもしれないです。
──そうした活動の一環で、昨年の6、7月にはABEMAの恋愛リアリティショー「今日、好きになりました。ハロン編」に出演されました。僕も拝見しておりましたが、ギターケースを背負って登場したところからしっかり爪痕を残していましたよね。
ありがとうございます。自分のことを知ってもらいたくて、「そこに自分が行けば、いい意味でも悪い意味でも目立てるだろうな」と思ったので参加しました。恋愛をしてみたかったというのも理由の1つです(笑)。
──なるほど(笑)。あそこでまた1つ、流れが変わった印象があります。周りからの反響もかなり大きかったんじゃないでしょうか。
フォロワー数や動画の再生回数といった数字はどんどん増えていくものの、SNSだと観てくれている人の顔がまったくわからないじゃないですか。もちろんいろんな反響をいただけたことへの喜びはありましたが、日常生活においては普通の高校生と一緒で、生活が激変したということは特になかったです。しかも、数字がどんどん桁違いなものになっていくから、現実味もどんどん薄れていって。当時は自分がどんな状況に置かれているのか、実はよくわかっていませんでした。
現状維持は退化
──「今日好き」出演直後の昨年8月には、オリジナル楽曲「おやすみTaxi」を配信リリースしました。
この曲はDTMを始めたての頃に完成した曲の中の1つで。バズねらいというわけではなかったんですけど、この曲のどこを切り取ってもキャッチーで耳に残るメロディがTikTokとの相性がいいんじゃないかと考えて、最初に配信しようと。まずは1番のAメロ、Bメロを作って、ちょっと時間が経ってからサビと2番を作りました。時間が空いた分、1曲としてつながりを持たせることができるか不安だったんですけど、アレンジャーの釣俊輔さんと一緒に作業することでしっかりまとめることができたので、それも自信につながったかと思います。
──アレンジャーの手が入ることで、今まで以上に作品としてしっかりまとまりを持たせることができたと。
そうです。もともとは俺がiPadで作った音源がベースになっているんですけど、釣さんに「原曲からあまり離れることなく、背伸びしていない等身大のMON7Aを表現してほしい」とお願いして。なので、音数を多くしたりすることなく、俺の声にフォーカスした形で、何回でも聴きたくなるように仕上げてもらいました。
──サウンド的な気持ちよさはもちろんあるんですが、最終的に耳に残るのはメロディと歌なんですよね。
ありがとうございます。そこがしっかり伝わっていて、うれしいです。
──歌で表現したいこと、伝えたいことについては、どんなことを考えていましたか?
今まで「現状維持は退化」というテーマを自分の中で大切にしながら、「やらないよりはやったほうがいい」と思って余計なことを考えずに行動してきたんですよ。それで失敗することも後悔することもありましたけど、1回も「やらなかった後悔」がないことは自分にとってはすごくよかったなと考えていて。そういった自分の経験を踏まえて、聴いてくれる人の一歩踏み出す勇気につながってほしいなと思って、この曲を書いたんです。ただ、俺自身マイペースだしけっこうルーズなところもあるので、「無理やりにでも前に進め」と応援するわけでもなく、「無理せず自分のペースでかまわないんだよ。休みたいときは休めばいいし」というスタンスが近いのかな。
──そういう意味では、MON7Aさんにとっての所信表明みたいな1曲でもあると。
そうですね。俺自身、今聴いても勇気が出ますし、行動を起こす前に「俺って本当はこうだよな」と再確認もできる、そういう1曲だと思います。
──作詞をすることで、改めて発見できたことはありましたか?
歌詞だから、別に文章でなくてもいいというか……「MON7Aの歌詞はよくわからない」と言われることがけっこうあるんですけど、俺はなかなか表現しにくい思いを、いろんな言葉を組み合わせることによって形にしているところがあって。そりゃあパッと読んだときに普通の文章とは全然違うものだと思うんですよ。そういう意味では、自分が言いたいことに一番近い言葉を探していく作業が作詞なのかな。俺は詞先で曲を作っていて、先にテーマを決めてパーッと思いついたことを書き殴っていくんですけど、その時点で自分でも「これはどういう意味?」となるくらい、何を言ってるのかわからない文章だったりするんですよ(笑)。なので、今後はうまくバランスを取りながら、より伝わりやすい歌詞を書けるようになることも必要かもしれないです。
──MON7Aさんの歌詞ってすごくリズミカルに響くので、メロディに合わせて言葉を選んでいるんだと思っていたんですが、詞先だと聞いてびっくりしました。
メロディと同時に歌詞が浮かぶこともあるので、そういう曲はよりリズミカルに聞こえると思います。何か言いたいことがないとメロディも思いつかないので、「言いたいこと」に合うメロディが結果的にリズミカルなのかもしれないですね。
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トガることで自分を守っていきたい




