五十嵐ハル×岡本信彦|2人の能力は“毒系”と“幻影系”?アニメ「デッドアカウント」で生まれた新たな出会い

五十嵐ハルがテレビ朝日系で放送中のテレビアニメ「デッドアカウント」のオープニングテーマとして「デッドエンド」を書き下ろした。

「デッドアカウント」は渡辺静による同名の少年マンガを原作としたアニメ。デジタル化して“化け垢”になってしまった幽霊を祓う、新時代の霊媒師たちを描くバトルアクションだ。妹の治療費を稼ぐために“炎上系ミューチューバー”として配信活動していた主人公・縁城蒼吏は、妹が化け垢になったことをきっかけに電能に開眼し、霊媒師の養成学校である弥電学園へ入学する。

音楽ナタリーでは主題歌を歌う五十嵐と、主人公・縁城を演じる岡本信彦にインタビュー。お互いの経歴や創作のモチベーションなどについても語り合ってもらった。

取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 梁瀬玉実

自分のやりたいことを選んだ2人

──五十嵐さんは過去のインタビューでやってみたいことの1つとして「アニメのタイアップ」を挙げていましたが、実際にご自身の楽曲がオープニングで流れているのを観て、どのような気持ちになりましたか?

五十嵐ハル 最初は実感がなくて「これが本当に自分の曲なのか?」と思いながら観ていたんですけど、ちょっとずつ、ふつふつと実感が湧いてきて。「夢が1つ叶ったんだな」としんみりうれしくなりました。自分を見守る保護者のような目線で(笑)、「よくやったな」と心の中で自分を褒めたりもしました。

──本日は、「デッドアカウント」で主人公の縁城蒼吏を演じる岡本信彦さんにもお越しいただいています。

岡本信彦 はじめまして。よろしくお願いします!

五十嵐 こちらこそよろしくお願いします。

──五十嵐さん、緊張していますか?

五十嵐 緊張してます……。

岡本 本当ですか? 取材とかはほかにも?

五十嵐 そうですね。ちょっとずつ受けさせてもらっているんですけど……。

岡本 取材って難しいですよね。僕も新人の頃にいろいろ言われましたよ。「変な発言はしないように」と言われても、「変ってなんだ?」と思ったり(笑)。

五十嵐 ふふふ。

左から五十嵐ハル、岡本信彦。

左から五十嵐ハル、岡本信彦。

──今日は「デッドアカウント」や五十嵐さんの手がけた主題歌、岡本さんが演じられているキャラクターの話を伺えればと思います。お二人には共通点があって。まず、五十嵐さんは元警察官という異色の経歴をお持ちですよね?

五十嵐 そうなんですよ。

岡本 警察官の方って事件が起きたら現場に行かなきゃいけないじゃないですか。そういうときって、「行くぞ」という身構えみたいなものがあったりするんですか?

五十嵐 もちろんあります。110番が入ったら、まず内容を共有されるんです。例えば「部屋で刃物を振り回している人がいます」とか。自分は若手だったので、最初に行かされるんですよ。「最初に死ぬのは自分だな」と思いながら向かっていました。

岡本 すごいですね。

──だけど五十嵐さんは、警察を辞めて音楽の道を選んだんですね。

五十嵐 はい。音楽は高校の頃からずっとやっていて、警察官になったあとも曲は作っていたんですけど、時間を作るのがなかなか難しくて。「こんなに音楽ができないならもう仕事を辞めちゃおう」と音楽に専念する道を選びました。

──そして岡本さんも、かつてお母様から「公務員になってほしい」と言われたと。

岡本 はい、言われました。母親の世代からしたら、公務員は安心安泰というイメージがあるらしくて。だから「役者になりたい」と言ったときはちょっと反対されました。「20歳までにデビューできなかったらあきらめなさい」と条件を付けられまして。

五十嵐 そうだったんですね。

岡本 16歳のころに単発のお仕事があったんですけど、レギュラーじゃなきゃダメだと言われまして。19歳でギリギリレギュラーをつかみ取ることができて、ようやく認めてもらえました。

──安定した道ではなく、自分のやりたいことを選んだのがお二人の共通点ですね。それは主題歌「デッドエンド」で歌われる「何者にもなれないから」というフレーズとも重なる気がします。

岡本 確かに。何者かになりたいという気持ちは、普遍的なものですから。

五十嵐 「デッドアカウント」の中では「こういうふうになりたかったけど叶わなかった」というキャラクターの思いが描かれていますし、自分自身ずっと「何者かになりたいけどなれないな」と思いながら生きてきました。だから歌詞を書くうえで絶対外したくないワードの1つでしたね。

左から五十嵐ハル、岡本信彦。

左から五十嵐ハル、岡本信彦。

もしも“電能”の能力を持つとしたら?

──楽曲についてはのちほど改めて伺いますが、まずは「デッドアカウント」という作品について聞かせてください。お二人はこの作品にどのような印象を持ちましたか?

岡本 僕はもともと、能力バトルモノがすごく好きで。というか、男の子はみんな好きですよね。自分の能力や必殺技を考えて、「デュクシ」って言いながら友達の脇腹を刺したり(笑)。

五十嵐 (笑)。僕も小中学生の頃、自由帳にバトルマンガを描いていました。「デッドアカウント」はその数十万倍もクオリティの高い作品ですけど、あの頃と変わらない気持ちで「こういうマンガってやっぱりカッコいいよね」と思いながら見ています。

岡本 しかも能力の切り口がすごいですよね。SNS上での性格がそのまま、“電能”という能力になる。「この切り口をよく見つけたな」と思っちゃいました。

五十嵐 本当に。今の時代じゃなければ生まれなかった作品ですよね。

岡本 誰しもが持っている闇のようなものが能力になってカッコよく見えるのもいいし、風刺というか、原作の渡辺静先生のポイズンが効いてるのもいい。縁城蒼吏は炎上系の配信者だから、炎の能力を持っている……これは考えれば考えるほど面白いですよね。「SNSアカウントを複数持っている人は分身できたりするのかな?」とか、「じゃあ自分ならどんな能力だろう?」と妄想したくなります。

──お二人がもしも電能を持つとしたら、どんな能力になると思いますか?

岡本 いやー、めっちゃムズいですけど……幻影とか残像系の能力ですかね。僕がSNSを使っているのは仕事の一環というか、「ファンの方々にポジティブなものをお届けしたい」という気持ちからなんです。アカウントも1つしか持っていないし。「見ている人たちが気持ちよくなればいい」と思いながらポストしているから、きれいな部分しか見せていない。それを「デッドアカウント」風にポイズンを入れて表現すると、「自分を取り繕っている」みたいな感じになるのかなと。相手に幻影を見せるというか。

五十嵐 僕はたぶん、毒系の能力でしょうね。岡本さんと違って、僕はSNSにネガティブな部分も出しているので。

岡本 自分の思いをちゃんとつぶやくタイプなんですね。

五十嵐 そうなんですよ。歌詞もけっこう暗いものが多いし……そうですね、やっぱり毒系だと思います。敵に回したら厄介な能力というか(笑)。

岡本 でも、幻影よりも毒系のほうが今の子たちには刺さりそう。

左から五十嵐ハル、岡本信彦。

左から五十嵐ハル、岡本信彦。

──「デッドアカウント」に登場するキャラクターはとても個性豊かですよね。

五十嵐 そうですね。1人ひとりの個性がめちゃめちゃ強くて。

岡本 公式SNSやホームページでいろいろなキャラクターが紹介されていますけど、現時点ではまだ全貌が明らかになっていなくて。視聴者の皆さんは「どういうキャラクターたちなんだ?」と思っているかもしれませんが、ここからさらに個性豊かな面々が登場します。

五十嵐 僕はやっぱり、先生(痣木宵丸)がカッコいいなと思いました。

岡本 カッコいいですよね。電能は使えないけど強い、っていうのがまたいい。

──岡本さんはご自身の演じる縁城蒼吏というキャラクターを、どのような人物として捉えていますか?

岡本 1話の段階で「ピュアにしてください」というディレクションが入ったんですけど、確かに彼はピュアですよね。妹のために泣き叫ぶシーンも印象的ですし、2話以降、友達や仲間が現れてからもずっとピュア。もともとピュアだけど、妹の治療費を稼ぐために仕方なく炎上系の配信者として活動していたという背景があります。ただ気になるのが、寂しがり屋のK(最強最悪と謳われている化け垢。縁城と同じく蒼い炎を操る)と電能が同じだということ。

五十嵐 そう。「蒼い炎の正体ってなんだろう?」と自分も思いました。

岡本 蒼い炎を持つということは、2人には共通点があるのかなと思っています。

自分のネガティブな部分を素直に出した

──ここからは、主題歌「デッドエンド」について聞かせてください。五十嵐さんはどんなことを考えながら楽曲を制作しましたか?

五十嵐 僕にとって曲を書くことは、SNSに悪口を書くことと似ていて。自分の膿や溜まった鬱憤を吐き出すための場所として音楽がある。「デッドアカウント」は人の持つ負の感情や「そんな中でも、どうにかやってやるぞ」ともがく人の気持ちが表現されている作品なので、「自分とどこか似ているな」「ネガティブな部分がリンクするんじゃないか」と思いながら作っていきました。この曲では「人生なかなかうまくいかないし、大切なものばっかり消えちゃうよ」みたいな感情も歌っているんですけど、それは自分が常日頃考えていることで。縁城は妹さんのためにがんばっているけど、結局妹さんが亡くなっちゃうから「やっぱり報われないじゃんか」と思うし……それを1話で出してくるってかなり攻めてますよね。ネガティブな側面もある作品なんだろうなとマンガを読んだ時点で感じたので、「自分のネガティブな部分を素直に出していく方向で大丈夫だろう」と早い段階で思えました。

岡本 まずイントロがキャッチーで、エレキギターの旋律がめちゃめちゃいいですよね。サビ始まりやイントロが短めの曲が流行っている中で、しっかり聴かせるイントロなのがとても素敵だなと思いました。

五十嵐 ありがとうございます。頭から耳に残るような曲にしたいなと思っていたので、そう言っていただけてうれしいです。

岡本 サビが「散々」というネガティブな単語から始まるのも面白いですよね。だけどサウンドには疾走感があって。ネガティブな感情を抱えながらも駆け抜けていくような、“最終的には前向き”という印象を受けました。

五十嵐 ありがとうございます。キャラクターたちからしたら、この世界は「散々」なんだろうなと思って。だけど、バトルマンガだから重いバラードは違うなと。「ダークさをまとったカッコいい曲にしたいな」というイメージがありました。YouTubeで原作マンガをもとに制作されたPVが公開されていたので、それをループ再生しながら「どんな曲だったらこのカッコよさに合うのかな」と考えて。実際に何個か作って、その映像と合わせて流したときに一番合う曲が、今回「デッドエンド」として形になったんです。