WANIMAのデビュー10周年を記念したライブ映像作品「WANIMA 10th Anniversary Live Movies THE JUNCTION」が1月28日にリリースされた。2018年発売の「Everybody!! TOUR FINAL」以来、約7年ぶりの映像作品となる本作はBlu-ray / DVDの3枚組。DISC 1には2024年11月9日の「Catch Up TOUR FINAL 2022-2024」(東京・有明アリーナ)、DISC 2には2025年6月27日の「Sorry Not Sorry TOUR」(神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール)の模様が収録され、さらにボーナスディスクには、2024年12月15日に行われた忘年会イベント「Boil Down 2024」(東京・東京ガーデンシアター)のライブ映像が収められる。10周年イヤーに行われた3つのライブを通して、今の彼らの姿勢が鮮明に浮かび上がる、必見の作品だ。
2023年に独立し、以降新たな体制で活動を繰り広げてきたWANIMAだが、その中で生まれてきた変化も、1曲1曲、ライブの1本1本に注ぎ込んできた意思も、この3つのライブ映像に詰まっている。ここではそれぞれのライブについて振り返りながら、改めてWANIMAのライブが持つ力に迫ってみたい。なお、今回の特集展開に際してKENTA(Vo, B)から届いたコメントも併せて紹介する。
文 / 小川智宏ライブ写真撮影 / 瀧本JON...行秀
その日、その瞬間だけのライブを繰り広げた「Catch Up TOUR」
WANIMAの3人は2023年に自分たちの事務所・現Bear Bookを立ち上げ、自分たち自身でバンドをハンドリングしていくことを選んだ。そのことが現在に至るWANIMAのヒストリーにおいて大きなターニングポイントになったことは数々のインタビューなどでも語られているが、「Catch Up TOUR」はそんな重要なタイミングを挟み、2022年から2年半にわたって繰り広げられてきたツアーだ。2024年6月19日、東京・Zepp Haneda(TOKYO)で行われた追加公演までのライブ数は実に79本。そしてその集大成として東京・有明アリーナと兵庫・ワールド記念ホールで2024年11月、それぞれ2日間ずつ開催されたのが「Catch Up TOUR FINAL 2022-2024」だった。本作に収録されているのはその初日、ライブ中にKENTAも言っていた通り、「Catch Up TOUR」全体でいえば80本目の公演である。
同じタイトルで回るツアーとしてはWANIMAのキャリア史上過去最長となったこの「Catch Up TOUR」だが、特筆すべきは、ファイナルの4公演合わせて全83本、1日たりとも同じセットリストではなかったということだ。アルバム「Catch Up」の楽曲はもちろん、過去曲も新曲も含めてその日のために選ばれた楽曲を届けるという姿勢で、彼らはライブをやり続けてきた。アンコールは当日ですら何をやるか決めておらず、ステージ上でメンバー同士が会話し、PAや照明のスタッフとやりとりをしながら演奏していた。こうした試みについて、KENTAは以下のように語ってくれている。
「Catch Up TOUR Final 2022-2024」は
毎日が生きてるライブでした。
その日、その瞬間の感情でセットリストが変わって、アンコールすら決めずにステージに立つ。
怖さもあったけど、それ以上に嘘がなかったです。
まさにその「生きてる」という実感こそがこの長いツアーで彼らが伝え続けていたものだったのだと思う。それを象徴するようなシーンが本作には収められている。この日の公演で披露された楽曲の1つである「マザー」。バンドがデビューする以前から存在していた楽曲で、初期のライブでも演奏されていたバラードだが、その後長い間、彼らはこの曲を披露してこなかった。それがこの日ライブ会場限定で発売されたEP「Bear Book」に収録され、10年ぶりにステージで鳴らされたのだ。KENTAは「この歌は二度と歌わないつもりでいました。ただ、36歳になって、いろんな人と話して、いろんな人の気持ちを聞いて、自分の気持ちも変わってきて」と自身の心情を口にし、「産んでくれてありがとう」という言葉とともにこの曲を届けた。彼がどんな表情でこの曲を歌っていたのか、それはぜひ映像で確かめてほしい。
思いをきっちりと届け切った「Sorry Not Sorry TOUR」
「Catch Up TOUR」が毎回生き物のように変化するドラマティックなライブとなった一方で、DISC 2に収められた「Sorry Not Sorry TOUR」はまるで正反対の形でWANIMAの表現を打ち出すものとなった。KENTAからのコメントにはこうある。
「Sorry Not Sorry TOUR」は真逆で、
決めたものを何度もやり直して、
ツアーを通して1本の形に磨き上げていく感覚でした。
その言葉通り、2025年4月5日の、こちらも熊本城ホールからスタートしたホールツアーは、セットリストを固定し、映像や照明などの演出をいつも以上に印象的に取り入れたパッケージとしてのライブを、全18公演をかけてブラッシュアップしていくものだった。もちろんステージ上で鳴らされる音は生々しく、ライブならではのスリルもてんこ盛りだったが、それと同じくらい、バンドとして「これを見せたい」という意思が貫かれた挑戦的なものだったのだ。
実際、本作に収められたツアーファイナルの映像を観ていても、スモークや映像で演出されたオープニングから、1つひとつの要素が徹底的にこだわり抜かれていることが伝わってくる。そして、そうしたライブとしての“土台”がきっちり作り込まれているからこそ、KENTAは自身が話す言葉、歌に乗せる細かなニュアンスの1つひとつにきっちりと向き合っているように思う。このツアーでも「マザー」が演奏されたのだが、DISC 1の「Catch Up TOUR FINAL 2022-2024」のとき以上に、パシフィコ横浜でのKENTAは自分自身の過去や家族のことに踏み込んで語っていたし、歌っているときの表情も声の響きも、半年ほど前とはまったく違うことが感じられる。そして、その「マザー」に2025年3月にリリースされた「存在」を重ねていくセットリストの構成も雄弁だ。「存在」はKENTAが、母親代わりとなって自分を育ててくれた祖母に向けて書いた曲。そんなプライベートな気持ちを歌に込めながら、しかし同時に、彼の「大切な人を思い浮かべて聴いてほしいな」という言葉の通り、それをどこまでも普遍的なものに昇華して、KENTAは情感たっぷりに歌い上げている。
ライブのアンコール、KENTAは改めてバンドを支える多くの人に感謝を伝えつつ、「もやもやしてたのが、このツアーですごく晴れた気がしました。もう1回新しく、旅をしていきたいなってすごく思いました」と話し、小指を掲げて「また必ず会おう」と誓う。その言葉はまるで友達に声をかけるようで、それが、目の前のファンに向けた彼の正直な気持ちなのだと感じた。そんなツアーを通して、KENTAはこんなことを思ったという。
同じ曲でも昨日より今日、
今日より明日を信じられたツアーだったと思います。
自分たちにとって確かなもの、自分たちを形作っているものを確認し、それをより確固たるものにしていくためのツアー。それがこの「Sorry Not Sorry TOUR」だったのかもしれない。
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ファンとの大事な“儀式”となった「Boil Down」








