これは、右近にとって9回目の自主公演。上演作品には山本有三が作劇、川崎哲男が演出を手がける「盲目の弟」、戸崎四郎が補綴を担う「弥生の花浅草祭」が並んだ。「盲目の弟」には角蔵役の右近、準吉役の中村種之助、お琴役の春本由香、インバネスを着た客役の中村亀鶴が出演。また「弥生の花浅草祭」では、武内宿禰、悪玉、国侍、獅子の精を右近、神功皇后、善玉、通人、獅子の精を種之助が勤める。
取材会の日、早朝から東京・浅草の三社祭にて、みこしを神社から担ぎ出す宮出しに参加してきたという右近は、名前入りの半纏で記者の前に登場。「お祭り男、尾上右近! やらせていただきます!」とガッツポーズしてみせた。
「盲目の弟」は、1930年に右近の曾祖父・六代目尾上菊五郎によって初演された作品。作中では、ふとした弾みで弟の目にけがをさせたことに罪悪感を抱える兄・角蔵と、けがで視力を失った弟・準吉の姿が描かれる。本作を上演することを約10年前に種之助と約束していたという右近は「去年2人で飲んだときに、彼は『踊りをひたすら踊りたい。主役をやりたい』と言いました。同期だからこそ見栄を張ることもある中、彼は僕にそれを言ってくれた。『僕の土俵(研の會)で相撲とる?』 と聞いたら、真っすぐに目を見て『とる』と言ってくれました。その約束を果たす公演です」と語り、「心を許し、歌舞伎を抜きにしてもお互いに肚をわって付き合える。歌舞伎界いち、心が幸せな男」と種之助に厚い信頼を寄せた。
「弥生の花浅草祭」は、山車人形が動き出す様子を表現する舞踊作品。「四段返し」の通称で知られる同作で、右近と種之助は1人4役、2人で計8役を演じること。本作について右近は「種之助さんの踊りを僕は信じています。自分をぶつけつつ、彼の踊りを受け止めて、僕ら2人にしかできない舞台を作りたい」と話した。
また「研の會」は第10回で終わりを迎えるという。その意図を尋ねられた右近は「第1回のときから決めていました」と答え、「毎回開催できることが奇跡。自分だけでなく周りへの負担も大きいことですから、10回続けられれば一区切りと言えます。『研の會』としては10回目で終わりでも、僕には自分の思いをかなえてくれるチームができました。今後、何かをやりたいと思った時には、公演を打てる仲間がいる。これは確実に大きな財産です」と晴れやかな表情を浮かべた。
公演は7月11・12日に大阪・国立文楽劇場、15・16日に東京・浅草公会堂で行われる。チケットの一般販売は5月25日10:00にスタート。
尾上右近 自主公演 第9回「研の會」
2025年7月11日(金)・12日(土)
大阪府 国立文楽劇場
2025年7月15日(火)・16日(水)
東京都 浅草公会堂
スタッフ
一、「盲目の弟」
作:山本有三
演出:川崎哲男
二、「弥生の花浅草祭」
補綴:戸崎四郎
出演
一、「盲目の弟」
角蔵:
準吉:中村種之助
お琴:春本由香
インバネスを着た客:中村亀鶴
二、「弥生の花浅草祭」
武内宿禰 / 悪玉 / 国侍 / 獅子の精:尾上右近
神功皇后 / 善玉 / 通人 / 獅子の精:中村種之助
ステージナタリー @stage_natalie
【会見レポート】尾上右近が中村種之助との“約束”実現に気合い十分、「研の會」は第10回で終了へ
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