ヨーク家とランカスター家が王位争奪を繰り返した薔薇戦争時代。ヨーク家の三男・リチャード(
開演するとパイプオルガンによる不穏な旋律が奏でられ、“悪魔の子”の産声が響き渡る。続くオープニングでは全キャストが集結し「愛されたいと願うことは罪になるだろうか」と歌い、リチャードやヘンリーら登場人物たちが他者に愛を求めたことで引き起こされる悲劇を予感させた。
劇中では、原作マンガの第1部をベースに、愛憎が渦巻く壮大な王家の物語が展開する。リチャードとヘンリーの道ならぬ恋をはじめ、王の座を奪うためにヨーク公リチャード(良知)を無惨に処刑するランカスター家のマーガレット(
衣裳の色は、2022年に放送されたテレビアニメ版と同様に、ヨーク家は青、ランカスター家は赤、ウォリックの一族は緑を基調としている。またリチャードは漆黒、"リチャードの鏡"的存在のジャンヌダルクは純白の衣裳に身を包んだ。
飛龍は、リチャードが“悪魔の子”としての宿命に常に葛藤しながら、敬愛する父ひいてはヨーク家が王位を得るべく、自らを血塗られた運命に導いてしまう姿を、力強さと繊細さを兼ね備えた演技で立ち上げる。父が無惨に殺された怒りをぶつけるように、ランカスター家を相手に荒々しい剣さばきで戦うその瞳には狂気を感じさせる一方、羊飼いのヘンリーからの愛情に閉ざされた心が溶かされていく様子を瑞々しく表現した。
冨岡は、争いを望まぬヘンリーが変装した姿である羊飼いを、儚げな笑顔と共に、純粋な青年として演じる。ヘンリーがリチャードに愛を伝えるシーンでは、「君をずっと待つよ」と温かな歌声を響かせながら、葛藤するリチャードの身体を後ろから包み込み、観客の胸を打った。また、リチャードの前にたびたび姿を現すのが、リチャードにだけ見える幻影・ジャンヌダルクだ。ジャンヌダルク役の明音亜弥は、リチャードの心の底を見透かすような言葉と、しなやかな身体の動きでリチャードを惑わせるかように見せかけつつも、リチャードが立場にとらわれずに“本当の願い”であるヘンリーとの将来を叶えるように後押しした。
上演時間は約2時間45分。公演は4月27日まで行われる。
ミュージカル「薔薇王の葬列」
2025年4月19日(土)〜27日(日)
東京都 こくみん共済 coop ホール / スペース・ゼロ
スタッフ
原作:
脚本:日月立
演出:
作曲:鎌田雅人
総合演出・振付:
出演
リチャード:
ヘンリー:
アン:小田えりな
エドワード王太子:KANJI(XY)
エドワード:
ジョージ:
ケイツビー:
エリザベス:
イザベル:三田美吹
ジャンヌダルク:明音亜弥
ウォリック:
セシリー:今井かなこ
マーガレット:
ヨーク公リチャード:良知真次
岡本麻海 / 高倉理子 / 寺島レオン / 浅野郁哉 / 三原大知 / 山﨑由晏
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【公演レポート】愛を求めることは悪なのか?飛龍つかさがリチャードとして生きる「薔薇王の葬列」開幕(舞台写真あり) https://t.co/oGdki2n7oE