「悲劇喜劇」賞にイキウメ前川知大が感慨「降り積もったものが形になった作品」俳優陣も喜び語る

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第12回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞の贈賞式が昨日3月31日に東京都内で行われた。

第12回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞贈賞式の様子。左から森下創、盛隆二、生越千晴、松岡依都美、前川知大、安井順平、浜田信也、大窪人衛、平井珠生。

第12回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞贈賞式の様子。左から森下創、盛隆二、生越千晴、松岡依都美、前川知大、安井順平、浜田信也、大窪人衛、平井珠生。

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受賞作に選ばれたのは、昨年8・9月に上演されたイキウメ「奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話」。「奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話」は、小泉八雲原作のオムニバス作品として、2009年に東京・シアタートラムにて初演された。劇中では古びた旅館を舞台に、ある事件を追ってきた男たちとそこで出会った人々によって語られる物語が展開。昨年8・9月に上演されたのは、そのリメイク版となる。なお本作は第32回読売演劇大賞で優秀作品賞を獲得。また本作の演出が評価され、同アワードにて脚本・演出の前川知大が最優秀演出家賞に輝いている。

前川知大

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贈賞式には前川をはじめ、出演者の浜田信也安井順平盛隆二森下創大窪人衛松岡依都美生越千晴平井珠生も出席した。受賞に際し前川は「特別なことをしたわけではないが、自分たちでも『こういう表現ができるのか』と感じていた」と創作を振り返る。続いて前川は「“ピカソの30秒”という話をご存知ですか?」と話し始め、「絵をリクエストされたピカソが、その場でさらさらと描いてみせ、絵の値段を聞かれて『100万ドル』と答える。その理由をピカソは『この絵には今手を動かした30秒だけではなく、自分がこれまでに絵を描いてきた30年分の価値もあるから』と答えたそうです……という小話なんですが、どうやらこれは実話ではないそうで(笑)。でも説得力を感じるエピソードです。今回の『奇ッ怪』もこの話のように、劇団を20数年やってきて降り積もったものが形になったという感覚があります」と感慨深げに語った。

既報の通り、5・6月のイキウメ 2025年新作公演「ずれる」をもって、イキウメはしばらく本公演を休むことを発表している。これについて前川は「こうして賞をいただいて『イキウメ、良いじゃん』という雰囲気のときに立ち止まるのも、それはそれで良いことだなと。劇団が新しいことを始めようとしているときに、この賞に勇気をいただきました。ぜひ今後も僕らの作品を観続けていただけたら」と謝辞を述べつつあいさつを締めくくった。

浜田信也

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壇上の水を飲もうとおもむろにペットボトルを手にし、登壇者を笑わせた安井順平。

壇上の水を飲もうとおもむろにペットボトルを手にし、登壇者を笑わせた安井順平。[拡大]

その後、壇上に出演者も登場してあいさつした。浜田は、本作のテーマが怪談や読書と深く関連していることを挙げて「僕らも、日本の夏の文化を豊かにしてくれるものの一助になれたらとてもうれしい」と笑顔。安井は「恥ずかしながら少し前まで『悲劇喜劇』賞のことを知りませんでしたが、もらえるものはもらっておこうと」と切り出して笑いを誘い、「我々は劇団活動を完全に休むわけではなく、新しい方向を目指します。ここから試練が続くと思いますが、まずは今年の公演をぶっかまし、それからいろいろ考えたいと思います。温かく見守ってもらえたら」とスピーチした。

盛隆二

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森下創(中央)があいさつしている最中、マイクの高さ調整を手伝う安井順平(左から2番目)。

森下創(中央)があいさつしている最中、マイクの高さ調整を手伝う安井順平(左から2番目)。[拡大]

盛は「お客様と自分たちが面白いと思うものを作りたいと思って劇団を続けてきた。受賞できて本当にうれしい」と顔をほころばせる。森下は「『悲劇喜劇』は、国内外の幅広い作品を紹介してくれていて、俳優の僕らにとっても大切な雑誌。受賞できてありがたい」と喜びを口にした。

大窪人衛

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大窪が緊張した表情で「劇団は過去にも賞をいただいていますが、自分が壇上に立つところは想像がつかなかった。今の気持ちは幸せであり、地獄。俳優は台本がないと何もできないなって……」と率直に打ち明けると、安井が「そんなことないだろ!?」とツッコミを入れ、登壇者を和ませる。さらに大窪は「身内を褒めるのもどうかと思いますが(笑)、前川さんの作品はやはり素晴らしい。自分は恵まれていると感じます」とコメントした。

松岡依都美

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生越千晴

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平井珠生

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客演の松岡は「暑かった昨年の夏、着物の所作を練習しながらみんなで舞台を作りました。賞もいただくことができ、この作品は私の演劇人生の宝物になりました」と笑顔。イキウメの作品を観劇してきたという客演の生越は「『こんなことがあるんだ』と私もうれしい。イキウメの皆さん、これからもがんばってください!」と劇団の面々にエールを送る。さらに客演の平井は「緊張しすぎて不整脈が出ている」と明かして会場を笑いで包み、「この作品に参加した記憶が、今後しんどいときに自分を助けてくれると思います。私も、これからもがんばります!」と瞳を輝かせた。

第12回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞贈賞式の様子。イキウメ「奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話」の公演関係者たち。

第12回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞贈賞式の様子。イキウメ「奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話」の公演関係者たち。[拡大]

早川書房と公益財団法人早川清文学振興財団が主催する「悲劇喜劇」賞は、選考委員と批評・評論家の劇評意欲を最も奮い立たせる演劇作品を顕彰することを目的とした賞。第12回の選考会は有吉玉青、辻原登、濱田元子、矢野誠一により行われ、受賞作には正賞として雑誌「悲劇喜劇」にちなんだ賞牌、副賞100万円が贈られた。詳しい選考過程の採録、各選考委員が推薦する作品の劇評は、4月7日発売の「悲劇喜劇」5月号(早川書房)に掲載される。

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小泉八雲記念館 @hearnmuseum

「奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話」
受賞おめでとうございます🎉 https://t.co/Us7GHfW5DZ

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