「新春浅草歌舞伎」新リーダー・中村橋之助がバトンを手に「体当たりで勤める覚悟」

「新春浅草歌舞伎」の記者会見が、昨日11月11日に東京都内で行われた。

“若手歌舞伎俳優の登竜門”として知られる「新春浅草歌舞伎」は、次代の歌舞伎界を担う花形が顔をそろえる初春行事。来年1月2日から26日にかけて東京・浅草公会堂で上演される「新春浅草歌舞伎」は、2024年版まで出演していたメンバーが一部入れ替わり、出演者には中村橋之助、中村鷹之資、中村莟玉、中村玉太郎、市川染五郎、尾上左近、中村鶴松が名を連ねた。

会見には、橋之助、鷹之資、莟玉、玉太郎、染五郎、左近、鶴松、そして松竹の山根成之取締役副社長が登壇。2部制となる本公演では、「絵本太功記」の十段目「尼ヶ崎閑居の場」が、部ごとに異なる配役で上演される。山根取締役副社長は、1977年に行われた俳優祭で、武智十兵衛光秀を初代松本白鸚、武智十次郎光義を尾上梅幸、旅僧実は真柴筑前守久吉を十七世中村勘三郎、母皐月を尾上多賀之丞、妻操を中村歌右衛門、嫁初菊を七世中村芝翫、そして佐藤虎之助正清を市村羽左衛門が勤めていたことに触れつつ「（『尼ヶ崎閑居の場』は）“時代物の役柄”がすべて集結している、歌舞伎にとっては教科書的な作品で、この新しいメンバーに勉強していただくのにふさわしい作品だと思い、選びました。厳しい先輩方の指導のもと、“今”だからこそ、お客様にお見せできる『絵本太功記』十段目をご期待いただければ」と述べる。

橋之助は「この7人で、令和7年度『新春浅草歌舞伎』をさせていただくことになりました。私自身、座頭という立場は初めて務めますが、ここにいる7人全員それぞれが座頭だと思って、同じ熱い思いを持って走り抜ける、そんな公演にしたい」と話したあと、「今日、ちょっと持ってきたものがありまして……」と、青いバトンを取り出す。「これは、（『新春浅草歌舞伎』に出演していた中村）勘九郎の兄たちの世代が、私たちの前の世代である（尾上）松也兄さんに渡し、そして今年の1月の『新春浅草歌舞伎』の千秋楽で、（中村）米吉のお兄さんが僕と莟玉くんに託したバトンでございます。このバトンをもっと重いものにできるように、僕たちの代も、一生懸命に勤めてまいります。山根さんもおっしゃっていた通り、まだまだ勉強中の身ではございますが、体当たりで勤める覚悟です！」と言葉に力を込めた。

鷹之資は「『新春浅草歌舞伎』で、今まで先輩たちがなさってきた姿を見て、いつか私も勉強させていただきたいとずっと思っておりました。ですので、今回新たな世代のメンバーとして加えていただけて、本当にうれしく思っております」と瞳を輝かせる。2013年より「新春浅草歌舞伎」に出演してきた莟玉は「私も橋之助さんも、“上級生”1年目ですので、新しく入ってきてくれた皆さんに『わからないこともあるんだな』と思われてしまうこともあるかもしれませんが（笑）、これまで先輩たちが作ってきてくれたチームワークをなんとか引き継いでがんばっていければ」と意気込みを語った。

玉太郎は「私も鷹之資さんと同じく、『新春浅草歌舞伎』は初めて。私自身、浅草の方々とも関わりがございますので、その方々にも楽しんで観ていただけるよう、一生懸命勤めたい」、染五郎は「大役に挑戦させていただけるということで、先輩方の背中を追いながら、若さを武器に、ひと月精一杯勤めさせていただきます」とそれぞれコメント。

最年少となる左近は「お客様に、晴れ晴れとした気持ちになっていただけるような舞台を届けるのはもちろん、私たちの後輩たちに、この『新春浅草歌舞伎』を憧れだと思ってもらえるような舞台を勤めたい」、鶴松は「浅草は、6歳で平成中村座に出演して以来、ずっとお世話になっている土地でございます。大変なお役ばかりではございますが、勘九郎と七之助の兄から『死ぬ気でやってこい』とメッセージをもらっておりますので、精一杯、舞台で命をかけてみたい」と真摯に述べた。

上演演目には、「絵本太功記」のほか、第1部には「仮名手本忠臣蔵『道行旅路の花婿』落人」、第2部で「春調娘七種」「棒しばり」が並んでいる。チケットの前売りは11月20日10:00にスタート。