「ハムレット」は、
舞台下手には、地割れが描かれたゆるやかな傾斜の坂が作られ、上手には椅子ほどの大きさのオブジェが置かれている。プレスコールでは、第2場と第7場の一部が上演された。第2場では、父が死んだ直後にも関わらず、結婚した母と叔父の浅はかさに思い悩むハムレットが、ホレイショーの知らせにより、父である先王の亡霊に会いに行こうとするまでが展開し、第7場では、ハムレットの狂気に振り回されるオフィーリアの姿が描かれた。吉田羊は、ハムレットをアンニュイな色気を湛えた青年として、魅力的に演じる。独白のシーンでは、ときに激しく、ときに静かに、その時々のハムレットの心情を言葉に乗せながら、丁寧にセリフを発した。
またクローディアス役の吉田栄作は、優しげな声色でハムレットに話しかけるが、立ち居振る舞いに底知れなさを巧みに漂わせ、ガートルード役の広岡は、ハムレットに甘えるようにすり寄るが、クローディアスと同様に、どこか冷徹な印象を観客に与えた。大鶴はレアティーズを品良く演じ、ホレイショー役の牧島は、ハムレットの信用に足る誠実さを演技ににじませる。飯豊は、清廉なオフィーリアをまっすぐに演じ、彼女の悲哀を増幅させた。
初日前会見には、吉田羊、吉田栄作、飯豊、牧島、大鶴、そして広岡が登壇。吉田羊は、明日初日を迎えることに「ようやく皆様に観ていただけるというワクワク感と、できればあともう1カ月稽古したかったという気持ちが入り混じった、複雑な思いで今ここに立っております(笑)」と心境を明かし「作品の魅力であるハムレットの独白も、お客様にハムレットと共犯関係を結んでいただけるよう、語りかけるように紡いでまいりますので、どうか彼の復讐劇を最後まで見届けていただけたら」と思いを語る。またお気に入りのシーンについて問われると「たくさんあるのですが……父上の亡霊との対話のシーンでしょうか。栄作さんが、憎き叔父・クローディアスと、愛しき父上・先王ハムレットの、2役を素敵に演じ分けてくださり、両方の役から(ハムレットを演じる上で)いただくものは多いのですが、特に父上からはいただく感情は大きい」と話す。
吉田栄作は「Q1版には、クローディアスが自分の罪咎を懺悔するシーンがあるんです。その姿を、吉田羊さん演じるハムレットが見ているのですが、そのシーンがお気に入りですね。今回、吉田羊さんとは初共演なのですが、その“吉田吉田対決”は見どころだと思います(笑)」と笑顔を見せる。飯豊は「お気に入りのシーンは、ハムレットとオフィーリアがすれ違ってしまうシーンです。ハムレットの狂気の部分を見てしまい、それによりオフィーリアが変わっていってしまう場面でもあるのですが、吉田羊さんの思いをしっかりと受け止めて演じられれば」と意気込みを述べる。
牧島は「羊さん演じるハムレットが、信頼を寄せるホレイショーにしか見せない顔があるんです。ホレイショーとしてその顔を見ていると、うれしくなったり、切なくなったりと、感情が揺さぶられるので、お客様にはぜひハムレットの表情に注目してほしいですね」と語る。大鶴は「どの役も全員異なる悲哀を抱えていて、やがて全員の悲哀が解放されるのですが、そこをどうお客様に受け止めていただけるかが、すごく楽しみです」と言葉に力を込める。広岡は「今回、クローディアスとホレイショーの2人だけのシーンがあるのですが、そのシーンがあるのはQ1版だけなんです。なので、そのシーンはとてもありがたく、大切に稽古しました」と述べた。
吉田羊が森演出で、シェイクスピア作品の男性主人公を演じるのは、2021年上演の「ジュリアス・シーザー」以来2度目のこと。吉田羊は「『ジュリアス・シーザー』のときもそうですが、これといって“男”であることを意識した役作りはしていません」と明かしつつ「これはあまり言うとネタバレになってしまいますが、女性の身体機能を逆手に取った演出を森さんから受けているので、そこを楽しみに観ていただければ」とニヤリと笑う。さらに「森さんは、すべてのキャラクターに愛情を持って作品を立ち上げられたので、群像劇ではありますが、キャラクター1人ひとりが、埋もれることなく魅力的に描かれています。お客様にはご自身や、身近な人を役に投影して、自分ごととして楽しんでいただければ。劇場でお待ちしています」と観客に呼びかけ、会見は終了した。
上演時間は、20分の休憩時間を含む約2時間50分で、東京公演は6月2日まで。このあと本作は、8・9日に大阪・森ノ宮ピロティホール、15・16日に愛知・東海市芸術劇場 大ホール、22・23日に福岡の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで行われる。
PARCO PRODUCE 2024「ハムレットQ1」
2024年5月11日(土)〜6月2日(日) ※公演終了
東京都 PARCO劇場
2024年6月8日(土)・9日(日) ※公演終了
大阪府 森ノ宮ピロティホール
2024年6月15日(土)・16日(日) ※公演終了
愛知県 東海市芸術劇場 大ホール
2024年6月22日(土)・23日(日) ※公演終了
福岡県 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
スタッフ
作:
訳:松岡和子
演出:
出演
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