アリアーヌ・ムヌーシュキン、太陽劇団「金夢島」誕生のきっかけは「実現しなかった佐渡島への旅行」

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テアトル・デュ・ソレイユ(太陽劇団)「金夢島 L'ILE D'OR Kanemu-Jima」の演出を手がけるアリアーヌ・ムヌーシュキンの取材会が、昨日7月28日にオンラインで行われた。

太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)「金夢島 L'ILE D'OR Kanemu-Jima」より。(Photo by Michele Laurent)

太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)「金夢島 L'ILE D'OR Kanemu-Jima」より。(Photo by Michele Laurent)

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太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)「金夢島 L'ILE D'OR Kanemu-Jima」より。(Photo by Michele Laurent)

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「金夢島 L'ILE D'OR Kanemu-Jima」は、2021年に東京・京都で上演予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大のため延期されていた。今回の公演は、ムヌーシュキン率いる太陽劇団にとって、約22年ぶりの日本公演となる。本作は、ムヌーシュキンが2017年に日本を訪れた際に構想を固めた作品で、2021年に太陽劇団の拠点であるフランス・パリのカルトゥーシュリで初演された。劇中では、病床に伏す女性が夢見る、“日本と思しき架空の島”を舞台にした祝祭劇が展開。その島では、国際演劇祭で町おこしを目指す市長派と、カジノリゾート開発をもくろむ勢力が対立していて……。

アリアーヌ・ムヌーシュキン

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太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)「金夢島 L'ILE D'OR Kanemu-Jima」より。(Photo by Michele Laurent)

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ムヌーシュキンは、かねてから東洋の古典や民俗芸能に深い関心を持ち、その技法を作品に取り入れてきた。太陽劇団が1999年に発表した「堤防の上の鼓手」は、文楽の形式を取り入れた演出で話題に。「金夢島」も、太陽劇団が日本の能楽師や演劇関係者とのワークショップを重ね、制作が進められてきた。ムヌーシュキンは今回の制作について「さまざまな方に日本の演劇芸術を教えてほしいとお願いし、彼らの協力のおかげで(作品を)作り上げることができました。まず私の頭に浮かんでくるのは(能楽シテ方の)大島衣恵さん。彼女は、私たちに会いに(フランスまで)3回も来てくれたんです。私たちの求めるものは大きかったと思いますが、彼女は非常に寛大で、忍耐強く私たちを教育してくれました。歌舞伎俳優の方にも、いくつかの動作を教えていただき、そして(狂言師の)小笠原由祠さんにも、狂言を教えていただきました。本当に感謝しています」と語る。

アリアーヌ・ムヌーシュキン(c)Archives Theatre du Soleil

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「金夢島」のテーマを考えたきっかけを「実現しなかった佐渡島への旅行」と明かしたムヌーシュキンは、「実は新型コロナウイルスの感染拡大前に、(太鼓芸能集団)鼓童の皆さんが私たちを、彼らの本拠地である佐渡島に招待してくださっていたんです。私たちはうれしくて、熱に浮かされたように旅行の準備を始めたのですが、コロナ禍で行くことが叶わなくなってしまって。そこから、発熱しているヒロインの夢の中、つまり劇によって、私たちができなかった旅行を実現したいと思いました」と話す。タイトルについては「最初は、存在しない島の名前を付けたかったんです。金という言葉と、島という言葉を含む3つの漢字になるように、そして日本語でもフランス語でも美しいタイトルになるよう、考えて付けました」と笑顔を見せる。

アリアーヌ・ムヌーシュキン

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上演は、中止公演と同様に、東京と京都で行われる。なお、京都で太陽劇団が公演を行うのは、今回が初めてのこと。司会から、それぞれの街のイメージを問われると「東京は信じられないくらい大きな都市。最初は怖かったのですが、東京というのは無数の“村”で構成されているということがわかり、それで少し安心しました。毎回来るたびに、1つや2つの地域を時間をかけて見るようにしています。ベンチに座って、街の、住む人の心の鼓動に耳を傾けるんです」と述べ、「京都は、東京ほど頻繁に行っていませんが、行くたびに、自分は今“美しさの中心”にいるんだと実感します。ただ、日本の美しさは非常に壊れやすいものだと思っていて。進歩に伴う、破壊的な力に壊されそうになっているように感じます」と続けた。さらに「『金夢島』が完成した要因の1つは、2019年に私が受賞した京都賞です。日本、そして京都には感謝の気持ちでいっぱいです」と言葉に力を込めた。

アリアーヌ・ムヌーシュキン

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演劇を通して、どのように時代や社会と向き合ってきたかを問われると「2024年に、太陽劇団は60歳になります。これほど長く続く劇団も珍しいかと思います。60年間、私たちは世界中で起こるさまざまなことに動揺してきましたし、消滅させられそうになったこともあります。私が舞台に乗せたいのは、“世界”です。悲しい、過酷で、泣きたくなるような世界かもしれませんが、そのまま自分の中に受け入れ、そして(世界を)変えるためにも芸術にしなければなりません。それが、私たちの仕事なのです。そうしなければ、どうやって自分たちの生活の中で演劇ができるんでしょうか」と語る。また「私も皆さんと同じように、心配なことはたくさんありますが、演劇の未来にはあまり心配していません。本物の才能あふれた芸術家たちによって、そして献身的な人々によって支えられている限り、演劇というものは無事だと思います」と微笑んだ。

公演は、10月20日から26日まで東京・東京芸術劇場 プレイハウス、11月4・5日に京都・ロームシアター京都 メインホールにて行われ、期間中はムヌーシュキンによるトークや、関連イベントなどが東京・京都で実施される。

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太陽劇団(テアトル・デュ・ソレイユ)「金夢島 L'ILE D'OR Kanemu-Jima」

2023年10月20日(金)~26日(木)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス

2023年11月4日(土)・5日(日)
京都府 ロームシアター京都 メインホール

作・出演:太陽劇団
演出:アリアーヌ・ムヌーシュキン
創作アソシエイト:エレーヌ・シクスー
音楽:ジャン=ジャック・ルメートル

※L'ILEの「I」はサーカムフレックス付きが正式表記。

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※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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