本作は大島真寿美の小説「ピエタ」を舞台化した作品。小泉の念願だったという今回の舞台版では、
本作は、「四季」で知られる作曲家ヴィヴァルディが、孤児の養育施設・ピエタ慈善院の少女たちに音楽を教えていたという史実をベースにした作品。ヴィヴァルディの死をきっかけに、彼と関わりのあった境遇の異なる8人の女性たちが出会い、心の深いところで結び付いていく様子が描かれる。舞台は18世紀のイタリア・ベネチア。孤児としてピエタで育ったエミーリア(小泉)は、かつてピエタで共に音楽を学んだ貴族のヴェロニカ(
ステージには、上手前から下手奥に向けてだんだんと高くなるように、段差が設けられている。キャストたちがそれらの段差をさまざまな向きで昇り降りする様子は、まるで運河や路地が入り組んだベネチアの街並みを進んでいるかのような印象を与えた。
劇中では、ヴィヴァルディの楽曲や音楽監督の向島が本作のために作った曲、小鳥のさえずりや水の音などが、バイオリンやピアノ、小道具などにより奏でられ、情景の変化が音で伝えられる。演奏スペースとなる下手奥のエリアはゴンドラのような箱型になっており、五線譜を思わせる手すりも設けられた。また衣裳は、白を基調としたエレガントなドレスで統一されているが、登場人物のキャラクターや職業、立場によって異なるデザインとなっている。
本作では、それぞれの葛藤を抱えながら清廉に生きようとする女性たちの姿が、出演者たちにより生き生きと立ち上げられた。小泉が演じるエミーリアは、自分が育ったピエタの事務仕事を担う真面目な女性。小泉は、周囲を尊重する聡明さを感じさせる繊細な演技を見せ、個性的な登場人物たちの中で調和を担う存在として、エミーリアを立ち上げた。かつてはエミーリアら孤児に混ざって音楽を学び、今は未亡人の貴族となったヴェロニカを演じたのは石田。少女のようにかわいらしく澄んだ声の中に、石田はヴェロニカの気品や誇りを感じさせた。峯村演じる高級娼婦クラウディアは、ヴィヴァルディの元恋人で、教養とやんちゃさを併せ持つ女性。峯村は、エミーリアやヴェロニカたちにとって大きな存在となる彼女の生き様を、凛とした佇まいで演じ切った。
最後に彼女たちが見つけた詩につづられていたのは、“むすめたち、よりよく生きよ”というメッセージ。少女ヴェロニカが自分たちに向けて書いたこの言葉は、大人になった彼女たちの姿と重なり、生きることへの祝福に満ちた幕切れとなった。果たして、この詩はどこで見つかるのか、謎の行方をぜひ劇場で確かめてみては。
上演時間は約2時間30分。東京公演は8月6日まで。その後、9・10日に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール、19・20日に富山のオーバード・ホール 中ホール、26日に岐阜・ぎふ清流文化プラザ 長良川ホールで上演される。
asatte produce「ピエタ」
2023年7月27日(木)~8月6日(日)
東京都 本多劇場
2023年8月9日(水)・10日(木)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
2023年8月19日(土)・20日(日)
富山県 オーバード・ホール 中ホール
2023年8月26日(土)
岐阜県 ぎふ清流文化プラザ 長良川ホール
原作:大島真寿美「ピエタ」(ポプラ社)
プロデュース:
脚本・演出:
音楽監督:向島ゆり子
キャスト
エミーリア:小泉今日子
ヴェロニカ:
クラウディア:
パオリーナ:
ザネータ:
ジロー嬢:橋本朗子
ジーナ:
アンナ・マリーア:会田桃子
演奏:向島ゆり子、江藤直子
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株式会社明後日 @asatte2015
ステージナタリーさま
ありがとうございます。
山崎伸康さんが撮って下さったステージ写真がとても美しいのです✨感謝✨✨✨ https://t.co/Q9DPxGgOwy