感情を粒立てて“成長の過程”描く、劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」東京で開幕

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劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」が、本日12月22日に東京・自由劇場で開幕。これに先駆け、昨日21日に最終通し舞台稽古と取材会が行われた。

劇団四季 オリジナルミュージカル「ロボット・イン・ザ・ガーデン」最終通し舞台稽古より。

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劇団四季 オリジナルミュージカル「ロボット・イン・ザ・ガーデン」最終通し舞台稽古より。

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イギリスの作家デボラ・インストールの同名小説を原作にした「ロボット・イン・ザ・ガーデン」は、劇団四季の新作オリジナルミュージカル。昨年10月に初演され、東京のほか、福岡でも上演された。

劇団四季 オリジナルミュージカル「ロボット・イン・ザ・ガーデン」最終通し舞台稽古より。

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舞台は、アンドロイドが人間に代わり家事や仕事を行う近未来。イギリスの田舎町で妻のエイミーと暮らすベンは、両親を不慮の事故で失い、心を閉ざして無気力な日々を送っている。前に進もうとしないベンの姿に、弁護士として働くエイミーは苛立ちを感じ、2人の関係はぎくしゃくしていた。ある朝、彼らの庭にボロボロで壊れかけのロボットが迷い込む。エイミーはベンにそのロボットを捨てるよう言いつけるが、ベンは“タング”と名乗るロボットをどうしても捨てる気になれない。わがままで言うことを聞かないタングの世話を焼きはじめたベンに、エイミーはついに愛想を尽かし、家を出ていってしまう。ベンはエイミーとの別れに喪失感を覚えながらも、タングを修理するため、アメリカに飛び……。

劇団四季 オリジナルミュージカル「ロボット・イン・ザ・ガーデン」最終通し舞台稽古より。

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ベンは、タングを修理するため、ホームであるイギリスから、アメリカ・カルフォルニア、ヒューストン、日本の秋葉原、そしてパラオ共和国と長旅を続ける。この日、ベン役を務めた田邊真也は、ベンを純真さと傷つきやすさを持ち合わせる青年として演じる。最初は、“ゴミ”として扱われるタングに感情移入してしまう心の脆さを芝居ににじませるが、タングの手を引きながら旅を続けることで、人生を再出発しようと決意するようになるベンの成長を、鮮やかに表現した。

劇団四季 オリジナルミュージカル「ロボット・イン・ザ・ガーデン」最終通し舞台稽古より。

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2人の俳優が操作するタングは、どこかおぼつかない歩き方やぐらぐら揺れる大きい頭と、その愛らしい佇まいで観客を魅了。最初はただ「イヤ、イヤ!」と暴れるだけだったが、旅の中でさまざまな感情を覚えていくタングを、俳優たちはぴったり息を合わせ、表情豊かに立ち上げた。

左から劇団四季の吉田智誉樹代表取締役社長、小山ゆうな、長田育恵。(撮影:阿部章仁)

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長田育恵(撮影:阿部章仁)

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小山ゆうな(撮影:阿部章仁)

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取材会には、台本・作詞を手がけた長田育恵、演出の小山ゆうな、劇団四季の吉田智誉樹代表取締役社長が参加。まず長田は、今作の魅力について「登場人物に共感させる力がとても強く、ささやかだけど、普遍的なメッセージが込められている」と述べ、「その“ささやかさ”があったからこそ、今の時代にフィットする新しいミュージカルになった」と語る。小山は、タングをパペットにしたのは劇団四季側のアイデアだと明かし、「(パペットにしたことで)お客様の想像に委ねる部分がとても大きくなった」と話す。また「ロングランとして公演を重ねる中で、俳優たちがどんどん役を深めていけたのは、本人たちの努力に加え、一緒に作品を育ててくださったお客様の力が大きいと思います」と感謝の言葉を口にした。

左から劇団四季の吉田智誉樹代表取締役社長、小山ゆうな、長田育恵。(撮影:阿部章仁)

左から劇団四季の吉田智誉樹代表取締役社長、小山ゆうな、長田育恵。(撮影:阿部章仁)[拡大]

もともと長田と小山のファンだったと言う吉田代表取締役社長は、長田との出会いに触れ、「2016年の鶴屋南北戯曲賞の授賞パーティで、ある方からご紹介いただき、そこでピンと来まして。そこから長田さんの作品が上演されるたびに観に行くようになり、その直感は確信に満ちたものになりました」と信頼を寄せる。また、小山については「(小山にオファーしたのは)世田谷パブリックシアターで上演された『チック』を拝見したことがきっかけです。『ロボット・イン・ザ・ガーデン』と同様、『チック』もさまざまな場所を旅する作品ですが、あちこち回る旅を描くことはとても難しく、相当力のある演出家でないとできない。(『ロボット・イン・ザ・ガーデン』の演出は)小山さんしかいないと思い、お願いしました」と話した。

小山は長田との初タッグに「私は普段古典をやることが多く、作家がいないことが多い」と前置きしつつ、「(長田は)世代も近く、物腰が柔らかくてコミュニケーションが取りやすい方。たくさんお話を伺いながら作品を作ることができたので、すごくやりやすかったです」と笑顔。また長田の脚本の魅力を「日常の言葉なんだけど、詩的で美しい。今回、再演で改めて長田さんの書く言葉の深さに感動しました」と感慨を述べる。

長田は、小山について「ゆうなさんは、その俳優自身が持っている魅力を、役として引き出してくださる演出家。本作はWキャストで、一部トリプルキャストなのですが、俳優の数だけ、その役の魅力が生まれています。アンサンブルに至るまで、舞台上のすべての役が“生きている”という実在感があるんですね。信頼できる演出家だなと思っています」と小山に視線を送った。

最後に小山は「何度もご覧になったお客様は『観るたびに視点が違った』とおっしゃっていて。“家でお子さんとけんかした”とか、“調子が良くない”とか、お客様の状態によっても、作品から感じることは変わると思います。その時々で、作品からキャッチするものが違う作品であれたら」と期待を寄せる。長田は「タングは、未知なる未来を秘めたキャラクターとしてオープニングで提示しています。何にもない“ブラックボックス”だったタングが、人の営みの美しい部分を取り入れていくことで、自分で自分の未来を選ぶようになる。その成長の過程を、“ストーリーの都合”として描かないよう、感情を粒立てるように作り上げました」と作品への思いを述べた。

上演時間は休憩ありの約3時間。東京公演は1月23日まで行われ、本作はそのあと2月23日から4月16日まで京都・京都劇場で上演される。さらに5月14日からは全国公演がスタート。

なお1月22日公演と、23日13:00開演回は、劇団四季ライブチャンネル、U-NEXT、Rakuten TVでライブ配信される。詳細は公式サイトで確認しよう。

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劇団四季 オリジナルミュージカル「ロボット・イン・ザ・ガーデン」

2021年12月22日(水)~2022年1月23日
東京都 自由劇場

2022年2月23日(水・祝)~4月16日(土)
京都府 京都劇場

2022年5月14日(土)~
全国公演

原作:デボラ・インストール
台本・作詞:長田育恵
演出:小山ゆうな

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