原嘉孝らが何げない日常の幸せを伝える、タクフェス「天国」東京公演開幕

タクフェス「天国」の東京公演が、12月1日に東京・サンシャイン劇場で開幕した。

宅間孝行が作・演出を手がけ、原嘉孝が主演を務める「天国」は、タクフェスにとって約4年ぶりの新作公演。本作は10月22日に愛知で開幕し、その後北海道、新潟、宮城、大阪を経て、このたび東京に到着した。劇中では、宮城県石巻市にある映画館・山田劇場を舞台にした物語が描かれる。2010年春、山田劇場の事務所に忍び込んだ高校生・島村龍太郎は、ひょんなことから映画館で働くことになり……。

公開ゲネプロ後に行われた取材会には、キャストたちが登壇。宅間は、コロナ禍で手がけた本作について「地方の芝居小屋の裏方さんたちが主人公になるような、応援歌となる物語ができないかと考えたところから、この作品は始まりました。折しも震災から10年という節目の年ですし、石巻に津波で丸ごと流されてしまった岡田劇場という古い映画館があることも知って。コロナ禍ですべてが一瞬で変わったことと、震災で何もかもが変わってしまった人たちと近いものがあるのかなと思ったので、何げない日常の素敵さを伝えたいなと」と述べる。さらに宅間は、タイトル「天国」に込めた思いを「僕は楽園に近い意味での“天国”として捉えています。ご覧になった方々が、劇中で劇場のバックヤードにいるみんな素晴らしい楽園で生活をしているんじゃないか、と思ってもらえたらうれしいです」と明かした。

タクフェスに初参加となった原は「稽古のとき、自分の出ていないシーンでもほかの方のお芝居を観て、『ああでもない、こうでもない』って俳優として言い合える関係が1カ月続いた。全員で作品に向き合っている体制が素敵で、タクフェスならではの濃い時間を過ごすことができました」と稽古の充実ぶりを語る。タクフェスには2度目の参加となる入山杏奈は「今回は前回と違って、コロナ禍でみんなで食事することが難しかったんですが、それでもすごくすごく仲の良い座組になったなと」と座組の仲むつまじさをアピールした。

入山と同じくタクフェスには2回目の参加となるモト冬樹は「タクフェスというと『宅間さんが厳しい』と皆さんおっしゃいますが、はっきり言っときます。宅間さんは厳しいです！」と笑いを誘い、「良いものを作るためには、ありがたい厳しさです。みんなそのことをわかっていますし、今回はみんな1つになって良い作品が作れたと思います」とコメントした。

最後に原が「この作品には、3.11のような震災の怖さを忘れちゃいけないというメッセージもあります。同時に僕たちは、何げない日常の幸せを伝えるためにここに立ちます。ぜひ大切な方やお友達、家族と一緒に観ていただけたら」と呼びかけ、取材会は終了した。公演は12日まで行われる。