ミュージカル「スリル・ミー」が4月1日に東京・東京芸術劇場 シアターウエストで開幕した。
「スリル・ミー」は、1920年代にアメリカで起きた殺人事件をもとに、Stephen Dolginoffの原作・脚本・音楽で舞台化されたミュージカル。2名のキャストと1台のピアノで、ニーチェの“超人”思想に傾倒する“彼”と、“彼”に特別な思いを抱く“私”の関係を描く。
日本では2011年の初演以来、さまざまな顔合わせで上演が重ねられてきた。今回は、
物語は、仮釈放審議会にて、30年以上前に起こした犯罪について“私”が語る様子からスタートする。事件の動機を聞かれた“私”役の田代は、気持ちを明かすのを拒むかのような硬質さでセリフを語り出す。だが一転、回想シーンでは小動物のようなかわいらしさで魅せた。対する“彼”役の新納は冷酷な空気を全身にまとい、“私”を翻弄。ところが、いよいよ刑が確定する前夜に発狂する場面では、感情を爆発させ、ガラリと雰囲気を変える。日本版初演のペアである2人は、さすがの息の合ったかけ合いで物語を進行させた。
“私”役の成河&“彼”役の福士ペアは、2018年公演で初登場以来、2度目の出演となる。成河は青年時代の“私”のヘタレっぷりから“彼”の発言に一喜一憂するさま、そして力関係が逆転するまでを、声や表情を自在に操り怪演。福士はそんな成河演じる“私”に、どこか抱擁感のある大きさと、強さで応えた。
また、今回オーディションで出演を勝ち取ったのは、松岡&山崎ペア。ほかのペアに比べて若い2人は、“私”と“彼”の危うさをエネルギッシュに演じ、白熱したセリフのかけ合いと歌唱で、観る者を作品世界へと誘った。
演出を手がける
東京公演は5月2日まで行われ、4・5日に群馬・高崎芸術劇場 スタジオシアター、15・16日に愛知・ウインクあいち(愛知県産業労働センター)、19日から23日まで大阪・サンケイホールブリーゼでも上演される。栗山とキャストのコメント全文は以下の通り。
栗山民也コメント
あぁ、10年続いたんだ
老朽化で取り壊しになる寸前の麻布にあった「アトリエ・フォンテーヌ」、その100席ほどの何もない空間が、私たちの初演の劇場でした。ピアノが一台、とにかく二人の俳優とピアノを弾く音楽家だけで、とても豊かでとても危険な世界が創れると勇んではじめた作品です。あっという間に10年が経ちました。
そして本日、3組それぞれの公演の初日が無事開きました。3組といっても、どこか違った3様のドラマですが。
舞台ってライブだから何が起こるかわからないね、とはよく言われることですが、その時その場所に居合わせたことの奇跡だけを信じるしかありません。それがなんと心躍ることか。人と人が出会い、ぶつかることで起こるその時だけのスリルを、全身で体験してください。このコロナでの荒涼とした状況が続く中、人間であることを忘れないために、私たちの中に住む無数の感情だけはしっかりと動かしましょう。
田代万里生コメント
個人的には10年前の初演から、劇中の台詞「5度目の正直」ならぬ「5度目の出演」となります。作品のモチーフは今から97年前の1924年にシカゴで起きた事件。終身刑プラス99年の懲役と判決された2人ですが、もうすぐ本当に99年を迎えるということもあり、演じていて今回はよりリアルに感じています。再び「私」として舞台に立てること、そして栗山民也さんの演出のもと、超人・新納慎也さんと再びペアを組める奇跡に感謝して、皆様に最高の「スリル・ミー」をお届けします。
新納慎也コメント
9年ぶりの僕と万里生のペア、そして日本初演10周年を迎える記念すべき「スリル・ミー」がとうとう開幕しました! まさか4回目の「スリル・ミー」が出来るなんて思っていなかったので本当にありがたく思っています。しかも相手役が初演と変わらずに万里生で、あの時を再現するかのように、そしてあの時を超えるかのように二人で日々切磋琢磨して頑張っています。
僕ら二人が「スリル・ミー」を演じていることを感慨深く思って観てくださるお客様も多いと思いますが、純度100%、最初に出来た純正ver.1.0.0が僕らの「スリル・ミー」です。その後色々な方が「スリル・ミー」を演じ、ペアによって見え方違ったり、別作品に見えたりすることもこの作品の魅力ではあるのですが、これが純正品だと誇りを持っています。10年前、稽古の始めに演出 栗山民也さんが開口一番でおっしゃった「これは壮大なる愛の物語だ」という言葉を大切に、10年経っても追及し続けています。この作品ほど劇場で観られて良かったと思える作品はないと思いますので、ぜひ劇場でしか体験出来ない緊迫感を味わいに来てください。
成河コメント
待ちに待ったこの日、とうとう開幕しました。2年前に演じた時とは情勢も違いますが、お客様とどのような時間が共有できるのだろうとすごく前向きにわくわくしています。劇場内しっかり対策しているので感染症対策的には安全ですが、演劇的にはとても危険な場所を用意しましたので、人間が危険に身を置く、ということをお客様も一緒に体験していきましょう。
福士誠治コメント
2年前演じた「スリル・ミー」。今回また新しい「スリル・ミー」が出来上がったと感じております。成河くんという「戦友」とまた出会えたことはとても嬉しく財産です。3組の色々な「スリル・ミー」が繰り広げられますが、まずは自分たちの世界を作って、演劇の楽しさやお客様との一体感、「スリル・ミー」ならではの緊張感を味わっていただけたら嬉しいなと思います。
松岡広大コメント
初日、無事に開幕しました。「私」役の松岡広大です。個人的には本当に色々とまだまだだな、と思うこともありますが、本日出来る限りのことをお客様に向けて、そして「彼」に向けて存分に演じられたと思います。これからも慢心せず、邁進していきたいと思いますので、どうかどのペアも愛していただけたらと思います。
山崎大輝コメント
無事初日を終えることが出来まして、今までで一番緊張する作品でした。今回、やれる限りのことは出来ましたが、もっと詰めていくことはたくさんあるので、今作ったものをさらに突き詰めていきたいと思います。ここから約1カ月以上ありますが、どのような風に僕たちのペアが進んでいくのか、ぜひ皆さま気にしてくださると嬉しいなと思います。
ミュージカル「スリル・ミー」
2021年4月1日(木)~5月2日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト
2021年5月4日(火・祝)・5日(水・祝)
群馬県 高崎芸術劇場 スタジオシアター
2021年5月15日(土)・16日(日)
愛知県 ウインクあいち(愛知県産業労働センター)
2021年5月19日(水)~23日(日)
大阪府 サンケイホールブリーゼ
原作・脚本・音楽:Stephen Dolginoff
翻訳・訳詞:松田直行
演出:
出演:
ピアニスト:朴勝哲、落合崇史、篠塚祐伴
※2021年4月24日追記:4月25日から5月2日までの公演は、新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
※2021年5月10日追記:大阪公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。
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あくあわこさん @aquawako
【公演レポート】初演から10年の「スリル・ミー」開幕、3ペア3様の“私”と“彼”の世界が立ち上がる(コメントあり) https://t.co/gZUyj2AnGD