「十二月大歌舞伎」が、昨日12月2日に東京・歌舞伎座で開幕した。ステージナタリーでは、初日夜の部の様子をレポートする。
今年の「十二月大歌舞伎」夜の部は、
物語の前半部分は、梅枝演じるお舟のいじらしい恋心が見どころ。梅枝は、一目惚れした義峯に健気にアプローチを仕掛ける様や、うてなと義峯の関係が気になり、ついつい客間を覗こうとしてしまう姿など、恋に夢中なうら若き少女・お舟を生き生きと表現する。また亀蔵は、恋人がありながらお舟の一途さにほだされてしまう義峯を、品の良さと人間臭さの両方を兼ね備えた人物として立体的に立ち上げた。うてな役の児太郎は、色気漂う遊女としての存在感で魅せ、下男六蔵役の
後半、松緑勤める頓兵衛が藪の中から姿を現すと、それまでの和やかな雰囲気から一変し、緊張感漂う場面が連続していく。非情で強欲な頓兵衛を、松緑はその大柄な体躯で迫力たっぷりに演じ、極悪人という役柄を説得力を持って勤めた。頓兵衛が義峯の身代わりとなったお舟を刺し、なおも乱暴を働くシーンでは、松緑と梅枝は息の合った立ち廻りで実の父娘であるが故の痛ましさを表した。
夜の部のラストを飾るのは、グリム童話「白雪姫」をもとに、竹柴潤一が脚本、
人を疑うことを知らない美しい白雪姫を、玉三郎は鈴のような声色と可憐な佇まいで、無垢さを際立たせながら演じる。梅枝は、真実のみを語る鏡の精を、どこか得体のしれない存在として立ち上げ、児太郎演じる野分の前と鏡合わせに舞を踊る場面では、幻想的な美しさで観客を魅了した。児太郎は「1番に美しくないと嫌なのじゃ」と幼子のように駄々をこねる芝居で野分の前の精神の未熟さを表現しつつ、やがて美への執着が増していく様子を鬼気迫る舞で表し、表面的な美にとらわれない白雪姫との対比をより鮮やかなものにした。
「十二月大歌舞伎」は、12月26日まで。昼の部では、
「十二月大歌舞伎」
2019年12月2日(月)~26日(木)
東京都 歌舞伎座
昼の部
「たぬき」(Aプロ、Bプロ共通)
柏屋金兵衛:
妾お染:
太鼓持蝶作:
狭山三五郎:
隠亡平助:
芸者お駒:
女中お島:
松村屋才助:
門木屋新三郎:
隠亡多吉:
芝居茶屋女房おはま:市川齊入
備後屋宗右衛門:
女房おせき:
「村松風二人汐汲」(Aプロ)
村雨:中村梅枝
松風:中村児太郎
「保名」(Bプロ)
保名:
「壇浦兜軍記 阿古屋」(Aプロ、Bプロ共通)
遊君阿古屋:坂東玉三郎(Aプロ)/ 中村梅枝(Bプロ 4、5、10、11、16、17、22、23日) / 中村児太郎(Bプロ 6・7・12・13・18・19・24・25日)
秩父庄司重忠:坂東彦三郎
榛沢六郎:
岩永左衛門:
夜の部
「神霊矢口渡 頓兵衛住家の場」
渡し守頓兵衛:尾上松緑
娘お舟:中村梅枝
傾城うてな:中村児太郎
下男六蔵:中村萬太郎
新田義峯:坂東亀蔵
「本朝白雪姫譚話」
白雪姫:坂東玉三郎
鏡の精:中村梅枝
野分の前:中村児太郎
輝陽の皇子:中村歌之助
浦風の局:
従者晴之進:坂東彦三郎
家臣郷村新吾:
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