渡辺源四郎商店の畑澤聖悟、戦争題材の新作発表で「町の記憶を可視化したい」

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畑澤聖悟率いる渡辺源四郎商店が、第24回本公演「青森に落ちてきた男」を上演する。

「青森に落ちてきた男」宣伝ビジュアル

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本作は畑澤による書き下ろしの新作。太平洋戦争が終わる直前の1945年7月28日、青森市が壊滅的な被害を受けた青森大空襲と、同年5月5日、熊本県阿蘇地方にB29が墜落した事件を下敷きに、ユーモアを散りばめつつ、戦時下における人間の感情の機微をえぐり出す。

上演に際して、畑澤は「人に記憶があるように、町にも記憶がある。それを可視化するのが劇作家の仕事。地域演劇に携わる者にとって、それはほとんど使命ともいうべきものだと思う」と意気込む。

「青森に落ちてきた男」は、5月3日に東京のザ・スズナリで開幕。その後、拠点とする青森・渡辺源四郎商店 しんまち本店 2階稽古場に移り、15日から22日にかけて上演される。

第23回公演「クリスマス解放戦線」より、三上晴佳。

第23回公演「クリスマス解放戦線」より、三上晴佳。[拡大]

渡辺源四郎商店主宰の畑澤は、劇作家、放送作家、公立高校の演劇部顧問という3つの顔を持つ。青森市を拠点に全国的な演劇活動を行うかたわら、放送作家として発表したラジオドラマ「シュウさんと修ちゃんと風の列車」で1999年度の文化庁芸術祭賞で大賞を受賞。現役の公立高校教諭でもあり、指導した青森中央高校、弘前中央高校の演劇部を合計で8回、全国高等学校演劇大会に出場させ、そのうち最優秀賞3回、優秀賞4回の受賞に導いている。

畑澤聖悟コメント

1945年7月28日は青森市が空襲された日である。死傷者は1767人(諸説あり)。市街地の88%におよぶ18045戸が焼失した。これは東北で最大の被害。北海道産の石炭の本州陸揚げ拠点であるがゆえ、徹底的に攻撃されたのである。
戦後70年を迎えた昨年、指導する青森中央高校演劇部と「7月28日を知っていますか?」という30分の芝居を作った。高校生たちは祖父母から初めて空襲の体験を聞き、手記を集め、被爆の跡地を訪ねた。空襲からちょうど70年目の7月28日、空襲の常設展示室を持つ青森中央センターとかつて犠牲者の遺体が並べられた柳町通りで上演した。「アメイジング・グレイス」というタイトルで60分に改稿し、コンクールに出場した。
人に記憶があるように、町にも記憶がある。それを可視化するのが劇作家の仕事である。地域演劇に携わる者にとって、それはほとんど使命ともいうべきものだと思う。
青森という町の記憶を「現代」もしくは「未来」の「世界全体」に置き換え、より多くの人に伝えることは出来ないか。そう考えたのが今回の「青森に落ちてきた男」である。
青森空襲のエピソードに加え、同年5月5日、熊本県阿蘇地方にB29が墜落し、アメリカ兵11人が村人と遭遇した事件を下敷きにしている。人は憎しみを超えられるのか。「どんとゆけ」等で繰り返し描いてきたテーマに再び挑みたい。
「楽しんで」というにはいささか重い話ではあるが、それでも楽しんでいただければ幸いである。

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渡辺源四郎商店 第24回公演「青森に落ちてきた男」

2016年5月3日(火・祝)~8日(日)
東京都 ザ・スズナリ

2016年5月15日(日)~22日(日)
青森県 渡辺源四郎商店 しんまち本店 2階稽古場

作・演出:畑澤聖悟
出演:三上晴佳、工藤良平、夏井澪菜、我満望美 ほか

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読者の反応

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sumi no toutan @suminotoutan

♪Planet Earth is blue... のブルーは青森の青でしょとチラシが家に届いたその日から今回はデヴィッド・ボウイねとヤマ張って聴いてきたんだけど私は外してるかも☞ 渡辺源四郎商店の畑澤聖悟「町の記憶を可視化したい」 https://t.co/JOKsZwfr3l

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