GLAY、20年の時を経て仲間たちと完成させた「UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY」

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GLAYが7thアルバム「UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY」を再現するホールツアー「GLAY Anthology presents -UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY 2022-」の最終公演を、昨日10月24日に静岡・アクトシティ浜松 中ホールで開催した。

「GLAY Anthology presents -UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY 2022-」静岡・アクトシティ浜松 中ホール公演の様子。(撮影:岡田裕介)

「GLAY Anthology presents -UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY 2022-」静岡・アクトシティ浜松 中ホール公演の様子。(撮影:岡田裕介)

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今回のツアーの主軸となった2002年9月リリースの「UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY」は、TAKURO(G)の内省的な一面を表現したことで知られる情緒的な一作。ファンからの評価が高い一方で、その音楽性ゆえにリリース当時は同タイトルを冠したツアーが行われることはなかった。しかし、「今の成熟したGLAYなら、優しいアルバムに収められた楽曲たちと共に、とっても心地よく、優しくて温かい時間をファンの皆さんに提供できるんじゃないか」というメンバーの思いのもと、発売から20年を経て再現ツアーが実現。奇しくも最終公演の地には、今年2月に終幕したアリーナツアー「GLAY ARENA TOUR 2021-2022 "FREEDOM ONLY"」においてTAKUROの新型コロナウイルス感染のために中止せざるを得なかったエコパアリーナ公演の開催県である静岡が選ばれた。

TERU(Vo)(撮影:岡田裕介)

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この日の会場となったのは荘厳なパイプオルガンが常設され、名だたる楽器メーカーが拠点を置く“楽器の街”にふさわしい、音響設備にもこだわったラグジュアリーなホール。舞台と観客席の間に境界のないオープンステージかつキャパシティは約1000人と、アーティストとオーディエンスが近い距離でコミュニケーションが取り合うことができる空間とあって、開場中から温かな空気が漂っていた。

夜の帳が下りるようにゆっくりと場内が暗転し、GLAYと今回のツアーメンバーであるTOSHI(Dr)と村山☆潤(Key)、2人の女性コーラス、6人編成のストリングス隊に加え、浜松市立高等学校と東京スクールオブミュージック専門学校渋谷の生徒からなる学生コーラス隊が黒を基調としたシックな装いでステージに登場。最後に現れた光沢のあるスーツを身にまとったTERU(Vo)が恭しくお辞儀したことを合図に、HISASHI(G)が奏でる清涼感のある柔らかな音色、ストリングスの優美なアンサンブルが渾然一体となってホールにこだまする。そこにTERUのまっすぐに響く歌声、コーラス隊によるフレッシュなハーモニーが溶け合い、ライブは祝祭感たっぷりの「WE ALL FEEL HIS STRENGTH OF TENDER」で華々しく幕を開けた。

「UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY」のオープニングを飾る「WE ALL FEEL HIS STRENGTH OF TENDER」はもともとソウルフルな楽曲ではあったが、学生たちの合唱が加わることでより生命力あふれるサウンドに。ホール内はたちまち高揚した空気で満たされ、早くもライブはクライマックスさながらの盛り上がりを見せた。1曲目が終わったところで、学生たちが一旦退場し「またここであいましょう」がスタート。観客は着席したままGLAYチョップを繰り出し、TERUがサビで「OK、心の中でカモン!」と呼びかけると各々の心の中でシンガロングする。普段の公演とは異なる環境ながら、演者と観客の双方から確かな熱気が立ち上る中、ライブはアルバムの曲順通りに進行していった。

夏の景色とともに大人の恋を歌った「girlish MOON」、季節の移ろいと愛する人との惜別を表現した「Way of Difference」という、50代になったGLAYが奏でることでより説得力を増すラブソングを経て、「航海」で会場の雰囲気は一変。躍動するJIRO(B)のベースラインとTOSHIのパワフルなリズム、軽やかなカッティングギターが弾むようなアンサンブルを紡ぎ、大海原の景色を描き出す。一方でアコースティックギターの音色を軸とした「ゆるぎない者達」では、JIROが奏でるたおやかな低音やTERUの包容感のある歌声がゆったりとホールに広がった。

TAKURO(G)(撮影:岡田裕介)

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ここでTAKUROが口を開き、「当時は30過ぎたくらいで、がむしゃらに突っ走ってきた20代を経て、これからのGLAYについて模索する時期でした」と「UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY」制作時の心境について吐露。2001年9月に起きたアメリカ同時多発テロ事件や、自分たちの行き先に思いを巡らせる中で生まれた「大人と子供の境目のような作品」であると説明し、「当時は幼くて表現できなかった。でもGLAYを辞めなかったからこそ、こうやって新しい仲間と自分たちのルーツをこうして皆さんと共有できている。20年分の愛を込めて皆さんに楽しんでもらいたいなと思います」と噛み締めるように語った。そんな言葉に続いたのは、TAKUROがメインボーカルを務めるサマーチューン「夏の彼方へ(Johnny the unity mix)」だ。リズム隊のJIROとTOSHI抜きでパフォーマンスされた同曲でTAKUROは、村山の弾くウクレレに乗せて、低く甘さをはらんだボーカルを披露。TERUの「ギターボーカルTAKURO!」という紹介に照れくさそうな笑みを浮かべていた。

HISASHI(G)(撮影:岡田裕介)

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ライブの後半戦の口火を切ったのは、TAKURO曰く「(先日50歳の)誕生日を迎えて新しいフェーズに入ろうとしている」というJIROが作曲した「neverland」。そして今の時代にも通用するメッセージが込められた「彼らのHOLY X'MAS」、TAKUROが幼い頃に亡くした父への思いを歌った「Father & Son」、ノスタルジックな感情を呼び起こす「卒業まで、あと少し」と続いていく。豊かなストリングスや鍵盤の音色も相まって各曲の世界観が立体的に浮かび上がる中、観客はそれぞれに過去やGLAYに思いを馳せつつステージを見つめた。

学生たちによるコーラス隊が再び合流して披露された「Friend of mine」で再現ライブは佳境に突入。伸びやかな合唱を背に、TERUはハンドマイクでステップを踏み、ステージ上の全員を率いるようにパフォーマンスを繰り広げ、観客全員を魅了していく。演者たちはそれぞれの思いを歌声や楽器に乗せ、1000人のオーディエンスはクラップでその音を後押しする。全員の心をひとつにする音を介してのやりとりは、このうえない幸福感を会場にもたらしていた。その後、「UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY」を厳かに締めくくる「ALL STANDARD IS YOU~END ROLL~」の余韻を浴びながらTERUが、学生たちに向かって「よくがんばった! 微笑ましくて泣きそうになりました。純粋なものを見させていただきました」「最高のツアーになりました!」と破顔。「学生のみんなと一緒に皆さんに愛を届けますので受け取ってください!」と叫び、現代の世相を反映したメッセージソング「Only One,Only You」を高らかに歌い上げた。

JIRO(B)(撮影:岡田裕介)

JIRO(B)(撮影:岡田裕介)[拡大]

ガッツポーズを決め、はしゃぎながら現れたJIROを筆頭に、全員が晴れやかな表情でアンコールに応えたGLAYの面々。JIROは「航海」の演奏中にうれしすぎて涎を垂らしていたことを自己申告しつつ、「みんなのおかげでGLAYってまだまだ楽しくできているんだなと感じたツアーでした」とツアーを振り返り、HISASHIは「新曲をすでに録り終えている!」「来年もよろしくお願いいたします」とGLAYの未来について言及する。「20年前に置き忘れてきたものを、皆さんの力添えで取り戻すことができました。生きる糧をもらえた気がする」と述べたのはTAKURO。「すべてが今日のためにあるんだな」と感慨深そうに語った彼は、この日共演した学生たちに向けて「若いみんなにバトンを渡すことができたことも音楽をやっている者としてうれしく思いました」とエールを送る。「UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY」発売時には生まれていなかったであろう“後輩”たちとの邂逅に充実感をにじませ「最高だった、ありがとう!」と学生たちが控えるバックヤードに向かって叫んだ。

「GLAY Anthology presents -UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY 2022-」静岡・アクトシティ浜松 中ホール公演の様子。(撮影:岡田裕介)

「GLAY Anthology presents -UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY 2022-」静岡・アクトシティ浜松 中ホール公演の様子。(撮影:岡田裕介)[拡大]

「最高の思い出になりました」。そう語ったTERUの言葉に続いて始まったのは、ストリングスによって重厚さを増した「Freeze My Love」。TERUはInstagramでライブ配信をしているスタッフからスマートフォンを受け取ると自らの手でメンバーの姿を配信し始める。大ヒット曲のサビを熱唱しながらカメラマンに徹するという、TERUらしい突拍子もないパフォーマンスを観客は微笑ましく見守った。30年前に生まれた「TWO BELL SILENCE」を挟み、ラストを飾ったのは「BEAUTIFUL DREAMER」。TERU、TAKURO、HISASHI、JIROの4人は横一列になり、観客1人ひとりに向けて夢見ることの大切さを歌った1曲を一丸となって届けた。

なおツアーファイナルの模様は、GLAYと「ザ・プレミアム・モルツ」によるキャンペーン一環でオンラインライブとして配信されることが決定している。キャンペーンには「ザ・プレミアム・モルツ」商品を購入するとこのエントリーすることができ、応募期間は11月14日まで。詳細は特設ページで確認しよう。

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GLAY「GLAY Anthology presents -UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY 2022-」2022年10月24日 アクトシティ浜松 中ホール公演 セットリスト

01. WE ALL FEEL HIS STRENGTH OF TENDER
02. またここであいましょう
03. girlish MOON
04. Way of Difference
05. 航海
06. ゆるぎない者達
07. 夏の彼方へ(Johnny the unity mix)
08. neverland
09. 彼らのHOLY X'MAS
10. Father & Son
11. 卒業まで、あと少し
12. Friend of mine
13. ALL STANDARD IS YOU~END ROLL~
14. Only One,Only You
<アンコール>
15. Freeze My Love
16. TWO BELL SILENCE
17. BEAUTIFUL DREAMER

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HISASHI @HISASHI_

【ライブレポート / メンバーソロカットあり】GLAY、20年の時を経て仲間たちと完成させた「UNITY ROOTS & FAMILY,AWAY」(写真7枚) https://t.co/ZUbAESCdUi

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