パンチライン・オブ・ザ・イヤー2025 (後編) [バックナンバー]
女性ラッパーの闘い、JJJへの思い、2020年代的ヒップホップへの移行……そして大賞の行方は?
言葉という観点からシーンを振り返る日本語ラップ座談会
2026年3月17日 20:00 7
2025年のパンチライン・オブ・ザ・イヤーは……
──では2025年の「パンチライン・オブ・ザ・イヤー」の選定に移りたいと思います。複数ノミネートされたラッパーは、
渡辺 勢いという意味では、その2人のどちらかですよね。
ポーザー 僕は、
高久 このラインは本当にカッコいいですよね。
ポーザー ありがたいことに、ラップをやってる視聴者から僕のところに「曲を聴いてください」というDMが届くんですよ。DMの文面はめっちゃ熱いんです。だから熱量の高い順に聴いていくんですけど、文章ほどの熱さは感じないラップが多くて。もちろん中にはすごくカッコいい人もいますけど、その体験を踏まえるとYvngboi Pのラインがより刺さるというか。
渡辺 個人的には、高久さんが選んだMIKADOの「売れたらダサくてもいいんじゃないの / 俺に関係ないしいいんじゃないの」(「TOES」)もいい。もうセルアウトという概念が成立しない今のラッパーのあり方を端的に言い表してる。2025年っぽいラインですね。
高久 ラップって音楽であって、文字だけで表現する詩とは違うじゃないですか。そういった意味で、
YAMADA 私もMIKADOで異論はないのですが、2025年に顕在化した差別と排外主義も忘れてはいけないと思うので、Worldwide Skippaの「すべての差別と改憲に反対です」もいいと思います。ただ、このラインだけがひとり歩きするのもWorldwide Skippaの魅力をミスリードすると思う側面もあって……。
渡辺 そうなんですよ。私も「これでええやん」と思うんだけど、「ハネたことないけどコイキング / 次ギャラどうする? / 沢山ギャラ貰う」みたいなラップがWorldwide Skippaの持ち味でもあるから、そういう一面ばかり焦点を当てるのは悩ましくもあって……。
──最後に1本を選ぶのが毎年一番大変ですね(笑)。
YAMADA 実際に選ぶ立場になると、これは本当につらいですね……。
ポーザー なんだろう。でも「RAPSTAR」とか、アンダーグラウンドでいろんなラッパーが出てきた話題とか、網羅の困難さとかを踏まえると、やっぱり僕はYvngboi Pがいいと思う。あと僕がこれを推すもう1つの理由は、クラブでめっちゃかかっていたっていうのもあるんですよ。
渡辺 あー、それは大事! ギャルもローソンの前で歌っていたし(笑)。
──では2025年の「パンチライン・オブ・ザ・イヤー」はLunv Loyal「Big Step ft. YTG, Deech, Yvngboi P」からYvngboi Pの「今誰でもマイク持てる時代 / カスか偽物ばかり / I’m trap star, not rapstar / You feel me? / 俺の仲間たち本物しかいない」でいいでしょうか?
全員 異議なし! おめでとうございます!
──最後の最後に、2026年注目のラッパーを教えてほしいです。
YAMADA 福島県相馬市出身のラッパー、
渡辺 めっちゃカッコいいっすもんね。客演もいろいろ参加されてますし。
YAMADA フッドについてラップする場合に、YELLASOMAを必ず呼ぶ流れがあるのかな?と思ってしまうくらい客演参加しているので勢いを感じますね。
YELLASOMA「BoroBoro」ミュージックビデオ
渡辺 2026年は東北勢がヤバそうですね。
ポーザー 東北でお互いに団結しているイメージがありますね。YELLASOMAを擁するFAMILY BUSINE$$の人たちと、青森の人たちと、新潟の人たちみたいな。
渡辺 ひと口に青森といっても、例えば三沢とか八戸とかあると思うけど、地域ごともつながっているの?
ポーザー 仲いいみたいです。同じイベントでお互いにしのぎを削る、みたいな。
高久 MK woopが気になってます。リリックが抽象的なので、「パンチライン・オブ・ザ・イヤー」っぽくはないんですけど(笑)。エレクトロっぽいトラックに乗せるのがうまくてすごくカッコいいんですよ。
MK woop「iridescent feat YAYA子」ミュージックビデオ
渡辺 私は
Reichi prod. by XLII | Red Bull 64 Bars
Rama Pantera「Get Money」ミュージックビデオ
ポーザー 自分は
Kianna「blah blah」ミュージックビデオ
ポーザー 2025年ですら今日の話みたいな感じだから、今年はマジでどういう人がでてくるか想像もつかないですよね。
渡辺 「POP YOURS」も3日間になるしね。シーン全体もいろいろな変化が起こりそう。今年も日本のヒップホップシーンは本当に楽しみですね。皆さまおつかれさまでした!
選者それぞれのパンチライン5選
高久大輝が選んだパンチライン
MIKADO「TOES」
「売れたらダサくてもいいんじゃないの / 俺に関係ないしいいんじゃないの」
Masato Hayashi「Vibes!」
「裸のまま雨曝し / あいつが掴んで離さない俺の魂 / あいつのチンケな言い回し / 俺はまだPTSD」
Fisong「Nlobody can choose their roots.」
「おれにとって平凡がお前にとってコンシャス」
Lunv Loyal「Big Step ft. YTG, Deech, Yvngboi P」
「今誰でもマイク持てる時代 / カスか偽物ばかり / I"m trap star, not rapstar / You feel me? / 俺の仲間たち本物しかいない」
dj.Blackoly「Our Friend(feat. 仙人掌)」
「お前の苦しみは俺たちの一部だと知れ」
プロフィール
1993年生まれのライター。音楽メディア「TURN」編集部に所属。
ポーザー白石が選んだパンチライン
Worldwide Skippa「WAKARASE」
「ハネたことないけどコイキング / 次ギャラどうする? / 沢山ギャラ貰う」
Need a Flex「Why do we fall?(feat. Kamui)」
「誰だって最初は無名 / 破れたダチの夢 / 代わりにおれ縫うミシン / 美人を追うように人生夢で生きてる羞恥心」
※Kamuiのヴァース
VCE NAVA「flame」
「親2人飯も食えてるけど満たないハート / 自殺した友達だって貧乏じゃなかったっしょ」
e5「BUTTOBASHIT」
「安いビーフを売り付ける偽モン肉屋 / 臭いわちゃんと上手いエサ草食わしな / つまらんアンタの地元には生えもしないか?」
「たまに言われるんだ / 女だからラップすんな / 思い出せ魂の兄弟 / あんま意味ない / 借りもんこの体」
Link Hood「Maiko step」
「真っ黒に染め上がった俺らの手 / 白塗りなんかじゃ隠しきれねぇ / 俺らの世界はグレーだぜ? ok? / 一見さんお断りやで ok?」
プロフィール
ラッパーのKamuiとともにTwitchで配信番組「ラフスタ」を運営。また、TikTokでヒップホップに関する情報を発信している。
YAMADA KEISUKEが選んだパンチライン
evisv「Rooftop」
「意味が違う昔と今の口だけ / 社会人になった友達は愚痴だらけ / 今は行けないかも忘年会とか輪抜け / 代わり花火のようにchartにする打ち上げ」
jellyy「Most Hated」
「大嫌いな自分の声で 大嫌いな奴ら殺す」
Tete「angela」
「帰ってきたら 泥だらけ / お風呂に入れたら 靴を磨く」
ZORN「戦争と少女」
「虹が架かんのは雨のあと / 歴史の末っ子 誰もがそう」
Jinmenusagi「うそさ」
「結局バースで歌うほどみんな好きじゃなかったんだろ この音楽 / 『これしかねぇ』とか平気で嘘つける / お前なら余裕だよ就活」
プロフィール
ブログ「IN MY LIFE」「日本語ラップ日記」、ポッドキャスト「IN OUR LIFE」を更新中。
渡辺志保が選んだパンチライン
Elle Teresa「Love Deluxe」
「好きなタイプの男 ちょっとオラオラ / 好きな男の前でしちゃうよ女女」
KID FRESINO 「hikari」
「ありがとう言う前に会えなくなったりするのも俺達らしい」
MIKADO, HARKA & ENEL「Intro *GUNSO WALK」
「行った事ない ATL / でもQC 地元で」
Worldwide Skippa「まほろば」
「すべての差別と改憲に反対です」
Moment Joon 「入管Freestyle」
「そのたびに気になるアクセント、いやアクセント / 間違ったまま並んでる / 恥ずかしい」
プロフィール
広島市出身。音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳などに携わる。これまでにケンドリック・ラマー、エイサップ・ロッキー、ニッキー・ミナージュ、ジェイデン・スミスらへのインタビューも経験。共著に「ライムスター宇多丸の『ラップ史』入門」(NHK出版)などがある。
- 宮崎敬太
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1977年神奈川生まれのインタビュアー / ライター。K-POPや日本語ラップを中心にオールジャンルで執筆している。
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アボかど @cplyosuke
「東北でお互いに団結しているイメージがありますね。YELLASOMAを擁するFAMILY BUSINE$$の人たちと、青森の人たちと、新潟の人たちみたいな」
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