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「CIRCLE '18」の様子。 (写真提供:CIRCLE)

福岡「CIRCLE」主催者の次の一手は「Q」

“音楽業界の名バイプレイヤー”是澤泰志に、角張渉と聞く

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5月18、19日に開催を控える福岡の野外イベント「CIRCLE」。今回で9回目を数えるこのイベントは、皆勤賞である細野晴臣を筆頭に、EGO-WRAPPIN'が6回、ペトロールズが5回など良質なアーティストが連続出演を果たす“ブッキングの色”で異彩を放ち、全国の音楽ファンからの注目を集めている。

このイベントを手がけているのは、LITTLE CREATURES、高田漣、沖仁らを擁するマネジメント事務所・TONEの社長でありながら、細野晴臣やCorneliusのライブ制作なども手がける是澤泰志氏。氏はそのマルチな活躍ぶりから、音楽業界の名バイプレイヤーとして広く名が知られた人物だ。

そして是澤氏は東京・両国国技館と兵庫・神戸ワールド記念ホールで3、4月に新イベント「Q」をスタートさせることを発表。Cornelius、ゴダイゴ、never young beachが競演するなど、こちらもブッキングの妙が光るもので、何より「CIRCLE」主催者の次の一手として話題となった。

音楽ナタリーでは、そんな是澤氏の作るイベントに着目。「CIRCLE」「Q」が生まれた経緯を中心に話を伺うことにした。なおこのインタビューには、是澤氏と同様にインディペンデントでアーティストのマネジメント / レーベル事業を手掛け、是澤氏とも親交の深いカクバリズムの角張渉氏にも同席してもらった。

取材・文 / 加藤一陽(音楽ナタリー編集部)

本当の“なんでも屋”

──まずは是澤さんの“本業”を整理させていただけますか。

是澤泰志 基本的にはミュージシャンのマネジメントです。それプラス、ほかの事務所の方のコンサート制作を行っています。今ライブの制作をお受けしているのは細野晴臣さんとCornelius。ありがたいですね。Corneliusは、僕がレコード会社に勤めていたときに関わっていました。仕事の割合は時期によって変わるんですけど、細野さんやCorneliusのツアーに出ると8割くらいは外部の仕事に時間を使っていて、自社案件は2割くらいかな。

角張渉 是澤さんのライブ制作はすごいんですよ。マネジメントを知っている人の制作だから、行き届いているんです。ライブの1から10までだけじゃなく、マネジメントがフォローする部分まで気にかけてくれるっていうか……そのぶん仕事も多いんでしょうけど。

是澤 弊社のミュージシャンもツアーをやるんですけど、忙しいときには他社さんにライブ制作を頼みたいときもあるんですよ。でも、頼みたいライブ制作の方との出会いがあまりなくて。せっかくお願いするなら、自分よりも優れている方に頼みたいから。

角張 出た(笑)。是澤さんはそこが厳しいんですよね。どっかで妥協しなければならないところを、それができないんですよ。いばらの道を歩きたい。

是澤 いやいやいや(笑)。角張だってそうでしょ?

角張 僕なんか、もうちょっとユルいですもん。あと、是澤さんと仲良くなり始めた頃に打ち合わせのお願いをしたら、レコーディングスタジオを指定されて。そのときbirdさんのレコーディングが行われていたんですけど、当時是澤さん、外部の原盤ディレクターという立場でソニーの仕事をされていたんですよね。最初は「どういうことなんだろう?」って思ったんだけど、「なるほど、外部ディレクターという仕事はこういうことなんだ」と知り得たというか。それも特殊ですよね。

是澤 ほかにも冨田恵一さんのディレクターをやらせていただいていた頃かな。でも今は原盤ディレクターの仕事は物理的にお受けできない。アルバムを作ろうと思ったら丸1カ月はかかりっきりで、ほかの業務ができなくなるから。

角張 レコーディングって終わらないですからね。何時に終わるかわからない。しかも是澤さんの場合は歌のテイク選びとかも厳しいから。言ったらディレクター兼プロデューサー。ライブ制作もできるし、すごいですよ。勝手に言わせてもらうと“何でも屋”っていうか、インディペンデントでいろいろやれる。

是澤 すべての仕事がそうなんですけど、まずは全部知りたくなるんですよ。これまでもすべて勉強だと思って、やれそうだと判断したらどんな仕事でもお受けしてきました。もちろん「なんでそれ僕なの?」みたいな“巻き込まれ”もあったんですけど(笑)、すべてが自分の血や肉になると思って。そんな中、去年50歳になって、「もう大概勉強させてもらったんじゃないかな」と思って。それで原盤ディレクターは基本的にはもうお受けしないことにしました。コンサートの制作も、現状以上はお受けしません。体力的にもお受けできないですしね。

──角張さんもカクバリズムの運営を軸に、いろいろと手広くやられているような印象があります。

角張 僕はレーベルとマネジメントだけなんです。小さなイベントの制作は自社でやっちゃうことがあるけど、フェスはやりませんし、地方でライブをやるときはイベンターにお願いしています。それに他社アーティストの業務を扱うってことはやってないですね。

細野さんをフェスで見たい

──それでは本題に移ります。是澤さんはさまざまな顔を持ちながら、福岡に「CIRCLE」を根付かせ、そして今年は東京と神戸で「Q」をスタートさせます。是澤さんはなぜイベントをやりたがるのかな、と。まずは「CIRCLE」発足の動機と経緯を教えていただけますか?

角張 やりたがるって(笑)。僕は是澤さんを見てきて苦労をわかっているつもりなので、「やりたがっているんだっけ?」って感じすらありますけど(笑)。先に話すと「CIRCLE」については、是澤さんが九州、福岡で何かやりたいっていうのがあったんですよね。“春フェス”っていう言葉ができる前くらいかなあ。最初に細野さんに出てもらおうとしたんですよね。

是澤 そうそうそう。「CIRCLE」は2007年に初回をやったんですけど、僕は九州の宮崎出身で、予備校時代に福岡にも1年住んでいて。いつか九州で野外イベントをやりたいなあという気持ちがあったんです。福岡のBEAというイベンターのスタッフに言っていたんですよ。「フェスやろうよ!」って(笑)。そしたらいよいよ開催するということになって。それで僕は外部スタッフとして、ブッキングと制作を担当しまして。だから最初は僕が主催者ではなかったんだけど、ずっと大好きな細野さんをフェスで観たい!っていう気持ちがかなり強かった。そのために2006年頃から動き出していて。まずは細野さんにオファーして出演OKをいただいて、ほかにどんな方々に出ていただくと面白いかってところを任されたんですよね。角張のところからは、SAKEROCKにも出てもらいましたよね。もう12年前。僕は38歳で、角張は28歳。

角張 そうそうそう。終わって細野さんがタクシーに乗るときに万歳で見送った記憶がありますよ。「わ、細野さんが来た……バンザーイ!」って。どんだけ全員緊張していたんだ!っていう(笑)。

是澤 でも初回は赤字になってしまって、2回目ができなくなるんです。しかも2回目のブッキングが9割くらい決まっていたタイミングで白紙。今だから言える話で、当時はCorneliusが「SENSUOUS」のワールドツアーを終えて、最後に東名阪で日本公演をやるってことになっていたんですけど、福岡公演がなかったから、そのファイナルとして「CIRCLE」でやってほしいなと画策していたんです。でも結局イベント自体がなくなってしまった。悶々としているところに、東京のイベンターから「(偶然にもCIRCLEと同じ日程の)日比谷の野音が空いたんだけど、やりません?」って連絡が来て。それで野音で「CIRCLE」の東京出張版をやるかってなって、もともと「CIRCLE」にお誘いしていた細野さんやハナレグミに改めて声をかけたら、まだスケジュールが空いているって。それが2008年ですね。「CIRCLE '08~東京出張~」を開催しました。

角張 あー、ありましたね。ほかにDouble Famousが出て、うちからはSAKEROCKが出たやつ。

是澤 そうそう。お陰様でチケットは売れたんですけど……まだ当時は今のようにSNSが普及してなくて、mixiの掲示板を見たらいろいろ書かれているわけですよ。九州の人も書き込んでいて、「いろいろあるだろうけれど、やっぱり福岡ではイベントはできないんですね。寂しいです」っていうのを見たんです。もう胸が痛んで。「これはどんなことをしても、福岡でもう1回『CIRCLE』をやらなければいけないな。かつ、この名前を福岡以外では絶対に使わない」って決めたんです。「CIRCLE」は九州の人のためのもの。ほかでは絶対やっちゃダメ。それで福岡でまたやるために、まずは東京と大阪で「Springfields」というイベントを立ち上げました。それを2009~2011年の3年間やりながら、自分でいろいろシミュレーションですよ。収支のこととかを勉強し直して。

角張 不勉強だったって気持ちがあったんですね。

是澤 そうなの。そして3年目は東京、大阪、満を持して福岡でやってみた。そうしたら、福岡の収支が真っ赤っかだったの。東京と大阪の利益で補填しても、全体で赤。でね、福岡で「CIRCLE」をやるために東京と大阪で補填のためのイベントをやらなきゃならないって考え方は間違っているなって思ったんです。「もうやめた、福岡でしかやらない!」って。

角張 えー!(笑)

是澤 だって、もうそれでしか自分のモチベーションが上がっていかなくて。それからBEAのスタッフに、「もう1回やりたい」って掛け合ったんです。そしたら「野外イベントのリスクは負えない。申し訳ないんだけど」って言われちゃったの。だから、「わかりました。うちが100%リスクを背負ってやります。運営を手伝ってください」って。

角張 当時TONEのスタッフに話を聞いたときは「腹を決めた」って。戦国時代みたいだなって思いました(笑)。是澤さんの話とは比べものにならないですけど、僕もツアーで赤を出したことはありますよ。マジでキツいなと思いました。本当に、1カ所の赤がほかの黒を食うことはあるんですよね。

是澤 でも、また同じ企画をツアーでやろうとしたとき、その1カ所は外さないでしょ? リベンジマッチ! 僕は外さないもん。

角張 性格出ますよね……僕はわからないです(笑)。

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