入管問題を描いた「イマジナリーライン」本予告解禁、折坂悠太ら8名からコメント到着

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第19回田辺・弁慶映画祭のコンペティション部門にて観客賞を受賞した「イマジナリーライン」の本予告とアザービジュアルが解禁。またひと足早く本作を鑑賞した著名人からの推薦コメントも到着した。

「イマジナリーライン」アザービジュアル

「イマジナリーライン」アザービジュアル [高画質で見る]

本作は、日本で生まれ育った友人が入管へ収容されてしまった女性の物語。映画学校を卒業してまもない山本文子は、アルバイトをしながら音楽好きの親友・モハメド夢と一緒に映画制作を続けていた。ある日、2人で訪れた旅先で、夢が在留資格をもたないことが発覚。彼女は県境を越えたという理由で、入管施設へ収容されてしまう。苦悩の末、文子と夢はわずかな希望を求めて立ち上がる。文子を俳優・モデルとして活躍する中島侑香、夢を俳優・脚本家でもあるLEIYAが演じ、文子の幼なじみで入管職員の船橋役として丹野武蔵が出演。ほか早織松山テサ鈴木晋介諏訪敦彦生津徹オブエザ・エリザベス・アルオリウォもキャストに名を連ねた。坂本憲翔が長編初監督を務める。

「イマジナリーライン」ポスタービジュアル

「イマジナリーライン」ポスタービジュアル [高画質で見る]

2023年6月に入管法改正案が採択され、入管制度の厳罰化が進んだことにより、東京藝術大学大学院の修了制作として企画された本作。学生スタッフと俳優たちは、仮放免者や入管の被収容者、支援者への取材を行い、入管内部の実態にまで切りこんだ。

「イマジナリーライン」アザービジュアル

「イマジナリーライン」アザービジュアル [高画質で見る]

YouTubeで公開された本予告には、折坂悠太の「今も閉ざされたままの、その人がいる。響きの異なる名前を持った、私たちがいる。」、「ルポ入管」著者の平野雄吾による「人と人のあいだに引かれた残酷な『見えない線』をそっと可視化し、観る者に静かでありながら確かな問いを投げかけてくる。」というコメントの引用とともに、劇中の文子と船橋の言い争いのシーンが収められている。「夢は、日本で生まれ育ったんだよ、私たちとおんなじように」と訴える文子に対し、「あの子の母親は偽造パスポートで入国している。れっきとした犯罪だ」と船橋は突き放す。だが文子は「そんなの夢には関係ない!」と声を荒げた。

「イマジナリーライン」場面写真

「イマジナリーライン」場面写真 [高画質で見る]

スリランカ人青年と日本人シングルマザーの恋愛と結婚を通じて、入管問題を描いた小説「やさしい猫」で知られる作家の中島京子は、「日本に生まれ育ったふつうの女の子が、犯罪者のように扱われることの理不尽。怖さ。絶望。そんなの、なにかがおかしい。間違ってる」とコメント。ライターの武田砂鉄は「乗り越えた先の人間と人間の結束がたくましい」と語った。ほか音楽家・文筆家の寺尾紗穂、アフリカルーツの弁護士である柏倉キーサレイラ、坂本の東京藝大時代の師であり本作にも出演している諏訪、塩田明彦のコメント全文は下記に掲載した。

「イマジナリーライン」は1月17日より東京・ユーロスペースほか全国で順次ロードショー。

映画「イマジナリーライン」本予告

映画作品情報

折坂悠太(シンガーソングライター)コメント

「日本」だとか。「日本人」だとか。「外国人」だとか。「国」だとか。
今日まで一体、誰の話をしていた?
この映画では、名前を呼んで、問いかける。
何度も繰り返し、名前を呼んで、問いかける。
そんな当たり前の事を、もう忘れたくないと思った。
今も閉ざされたままの、その人がいる。
響きの異なる名前を持った、私たちがいる。

中島京子(作家)コメント

日本に生まれ育ったふつうの女の子が、犯罪者のように扱われることの理不尽。怖さ。絶望。そんなの、なにかがおかしい。間違ってる。登場人物たちが自分の心で気づくように、観客ひとりひとりが、気づくだろう。おかしいのは、悪いのは、彼女じゃない。
間違っているのは、彼女が未来を夢見ることを禁じる、日本の法制度の在り方なのだと。

武田砂鉄(ライター)コメント

人間と人間とを隔てるものは何なのか。
本当にそんなものがあるのか。
それを設けてラクをするのは誰か。
それに苦しめられているのは誰か。
乗り越えた先の人間と人間の結束がたくましい。

寺尾紗穂(音楽家・文筆家)コメント

本編の終わり近く、文子の書く脚本の一場面として、入管の面会場面が描かれる。
文子演じる面会者は二人を隔てるアクリル板を壊し、二人はそこから逃げ出す。
制止する入管職員はおらず、現実離れしたシーンだ。
しかしそう思った瞬間、気づかされた。
アクリル板を壊してはならないものと思い込まされているように社会の法やシステムは不変不可侵のもののように多くの人が誤解している。
不条理に苦しむ隣人の涙に気づく人が増えれば、それを壊して作り直せるのだと本作は静かに、力強く伝える。
フィクションの力、想像をとめないこと。
表現者としての監督の、スケールの大きさを感じさせる力作。

柏倉キーサレイラ(弁護士)コメント

難民になりたくてなった人なんていない。
難民二世になりたくて、生まれてきた子どもなんていない。
私たちがたまたま日本国籍を持って生まれてきたように、その子もたまたま難民の子供として日本に生まれてきただけ。
この状況を「仕方ない」という言葉で片付ける世界に、未来なんてあるのだろうか。

平野雄吾(共同通信記者、「ルポ入管」著者)コメント

「ルールを守らない外国人が、国民の安全と安心を脅かしている」──。そんな言葉が国家機関からも政治家からも平然と語られる。だが、実際にルールを踏みにじっているのはいったい誰なのか。司法審査も期限もないまま自由を奪い続ける日本の入管収容制度。国連の自由権規約委員会や拷問禁止委員会は国際基準から逸脱していると繰り返し懸念を示し、日本政府に改善を求めてきた。なぜ国際法は、恣意的な無期限拘束の廃止を強く求めるのか。その答えはこの映画の中にはっきりと映し出されている。入管当局の裁量行政に翻弄される外国人と、友を見失うまいと必死に寄り添う日本人。本作は、人と人のあいだに引かれた残酷な「見えない線」をそっと可視化し、観る者に静かでありながら確かな問いを投げかけてくる。

諏訪敦彦(映画監督)コメント

近年、その非人道性が社会問題となった日本における入管制度、難民問題を取り上げ、短い準備期間の中で取材、調査を行って「現実」に挑んだ。何より俳優との信頼関係を構築し、その身体に空間を開け渡すことで、迫真の演技とリアリティを実現し、わたしたちをこの耐え難い状況に巻き込んでゆく力を画面に漲らせる。しかし、それは現実の再現にとどまらず、撮影するという行為そのものを映画に導入することで抽象的な表現に高められる。ある場面における驚くべきその非現実的な切り返しは、「夢」という人物が他の誰かでもありうること、日本のみならずあらゆる場所で起きうる普遍的な世界であることに映画を跳躍させるのだ。

塩田明彦(映画監督)コメント

自由は光と共にある。さりげなくも華やいだ幸福の記憶はいつも光に包まれている。女性二人が両頬に太陽の光を受け止めながら、彼方をみつめるところで映画内映画のラストカットは終わっている。自主映画の監督と主演女優。だが、ある日とつぜん、女優の自由が奪われていく。女優ひとりが、光の奪われた世界へと閉じ込められていく。その痛みも悲しみも憎しみもすべて光と、光の喪失のドラマとして描かれていく。人の肌を温め、居場所を照らし、共に光に包まれていることの幸福感を、あるいはそれが奪われていくことの痛みを、この映画は見事なまでに言葉を超えて伝えてくる。

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