映画「
つげ義春のマンガ「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」をもとにした本作では、うだつの上がらない脚本家・李(イ)が、旅先のおんぼろ宿で“べん造”と名乗る宿主と出会い、人生と向き合う様子が描かれる。シム・ウンギョンが李、堤真一がべん造に扮した。
11月25日に、石川・金沢の映画館シネモンドでトークショーを行った大川。自身の地元である金沢で「旅と日々」を改めて鑑賞したといい、「編集中、あんなに何回も繰り返し観たのに、(河合優実が演じる)渚と(髙田万作が演じる)夏男の海のシーンで本当に怖いと思ったんです。そしたら大学の講義室での上映シーンになって、『あ……これ(劇中)映画だった』と思って」と感想を述べる。この言葉を受け三宅は「忘れた頃に『あ、今観ているのは映画だったんだ』となってほしい。僕らは狙いどころとして、それをどう作るかを考えていましたよね」と口にした。
イベントでは、三宅と大川が観客からの質問に答えた。「『旅と日々』の“間合い”がかっこよかった。お二人はどうやって間合いを発見しているのか」という問いに対し、大川は「やり取りするワードはものすごく具体的。三宅さんと一緒にいろいろ試しました。視線でつなぐのか、アクションでつなぐのか、編集点はたくさんあると思うんですけど、ひとまず試して、それぞれのパターンでどう見えたかを、三宅さんと私で言語化していって」と回答する。三宅は「編集は、その都度その都度、面白いものを見つけていく、“映画の勉強”の時間。『映画って面白いねえ!』って言いながらやっている」と振り返った。
主演のシム・ウンギョンについて三宅は「会った瞬間『なかなかこんな人はいない』と興味を惹かれた。人間をものに例えるのは失礼かもしれませんが、美術館にある珍しいもののよう。有り難い感じがして、もっと知りたいと思いました」と初対面の印象を明かす。また観客から「原作では、夏男が渚に泳ぎを見せるというニュアンスが強かったが、海の怖さを強調する演出になったのはどういう意図か」と質問が飛ぶと、三宅は「ドンッと見開いたときの驚きにたどり着きたいと考えていました」と回答。大川は同シーンに関して「2人の距離は縮まっていくのに、環境は大荒れ、と真逆のことが起こっているのが面白いよね、と話しましたね。何が正解かわからなくなったときに三宅さんから『あの2人は海のほうが生きやすい』という言葉をもらって、ああ、なるほどと思いました」と回想した。
また三宅は「人の感想について何か言うのは野暮かもしれませんが」と前置きしつつ「『夏編をわざと面白くなく作ったんじゃないか』説というのを(インターネット上で)見まして。『そんなわけないだろう!』と(笑)。世の中にものを出すうえで、あえてつまらなくすることはないです! 」と言及。さらに「登場人物たちにとって、島でもうすることがないという心理状態が序盤にあるので、退屈さを感じさせる狙いはありますが、それ自体はつまらないものではない。なので、夏編を退屈と感じる人は、映画の中ですごく旅を体感しているのかもしれない」と語った。
「旅と日々」は全国で公開中。同作は第78回ロカルノ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門にて、最高賞である金豹賞とヤング審査員賞特別賞を受賞した。
映画「旅と日々」本予告
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【イベントレポート】「旅と日々」の“間合い”はどうやって生まれる?監督・三宅唱と編集・大川景子が明かす
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