「孤狼の血II」現場でハラスメント講習導入、白石和彌「今日で負の連鎖を断ち切る」

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孤狼の血II(仮題)」の撮影開始にあたり、白石和彌組のスタッフ・キャストが現場でのハラスメントを予防するための“リスペクト・トレーニング”を受講した。

リスペクト・トレーニングの様子。

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「孤狼の血II(仮題)」ビジュアル

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2018年に公開され、第42回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞など4冠に輝いた「孤狼の血」。同作では暴力団対策法成立以前の広島を舞台に、ヤクザとの癒着をうわさされる刑事・大上章吾と、所轄署に配属となった日岡秀一の姿が描かれた。そして今回は前作から3年後の日岡の物語が、オリジナルストーリーとしてつづられる。前作のスタッフが再集結し、9月29日から11月8日にかけてオール広島ロケで撮影した。

多数の企業でハラスメント研修をサポートしてきたピースマインドによるリスペクト・トレーニングは、クランクイン前日の9月28日に実施。今回、東映作品として初めて導入され、監督の白石やキャストをはじめ、作品に携わる約50人が参加した。

「孤狼の血」現場での白石和彌。

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近年、ハラスメント問題が大きな課題となっている日本映画界。Netflix作品「全裸監督」でリスペクト・トレーニングが導入されたというニュースを見て、今回の実施を自ら希望したという白石は「今回僕から、こういう場を設けたい、マスコミも入れてほしいとお願いしました。映画界も変わろうとしているということを、伝える機会が重要。それもインモラルな作品に分類される『孤狼の血』の現場でやることが、映画界の力になるんじゃないか」と述べる。さらに「これまでも自分のできる範囲で、オールスタッフ打ち合わせのときなどに『セクハラ禁止』ということは言ってきました。でも僕も専門家ではないので、こういう機会をきちんと設けて、整理したかった。そしてやはり、楽しい現場にしたいという気持ちが常にあるので、そのためにはまずリスペクト・トレーニングが必要なんじゃないかと思った」と語った。

リスペクト・トレーニングの様子。

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講義の中では、この場合の“リスペクト”という言葉の前提である「みんなが平等に尊重され、かつ安全な職場環境である」「仕事の楽しみや創造性は尊重しつつも、決してほかの人を傷つけてはならない」「セクハラ、その他ハラスメントや差別は、徹底的に取り締まる」「各部署の責任者には、自分の責任を認識し、報告と対応を求める」「ハラスメントなどを報告した者に対する仕返しは一切許されない」といった項目を説明。自分の行動に迷ったときは、この“リスペクトとは”という考えに立ち返るべきだということ、リカバリーや周囲からのフィードバックが重要だということが説かれた。さらに「部署やポジションによって泊まるホテルが変わるのは“区別”だが、年齢や性別を理由に違う扱いをするのは“差別”」「仕事をまったく頼まないこと、すなわち“過小な要求”もハラスメントにあたる」「あだ名で呼ぶことも場合によってはハラスメントになる」と具体的なケースについても解説が行われた。

質疑応答の際には、白石自ら講師に「スタッフからアイデアなどをもらっても、全部を採用することは難しい。例えば脚本を上げてもらったときに『つまらない』と言うのはハラスメントにあたりますか?」と質問。相手との関係性が重要であり、言ったあとに詳しく意図を伝えてフォローすることが必要、いい仕事をしてほしいという脚本家へのリスペクトが前提であるという回答を得た。

リスペクト・トレーニングの様子。

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約1時間の受講を終えた白石は「人間だから感情的になるのは仕方ない。リカバリーする意識が重要だとわかったし、講師の方が『今日を機に変えていきましょう』と力強く言ってくれたのも印象的。スタートするきっかけがないと変われない。“今日を機に”と意識すればいいんだとわかったのも大きいです」と感想を語る。日本映画界の問題点については「助監督時代は、監督が黒いカラスを見て『白だ』と言えば、みんなも白だと言わなければならないと思っていた。でも『それは違う』と言えるようにならなければ。この業界は基本フリーランスの人が多く、みんな『次の作品も呼んでやるよ』という口約束で仕事を続けてきた。だからこそ『これが我慢できなければ映画界で生きていけないよ』という負の連鎖が続いていた部分があります」と語り、「でもそれも、今日をもってやめる。連鎖を断ち切る。タイミングは今だと思います。この経験を次の現場、ほかの現場へ広げていくことが重要」と強い意志を明かす。また「映画界は若い人がいなくなっているんです。働きやすい環境を作ることが大事。いい業界に変えていきたいと、本当に思っています」と力を込めた。

過激描写も含む「孤狼の血」シリーズだが、白石は「この講習を受けたからと言って作品の内容を変えることはない」と断言。それでも今回の現場にあたり「女性が裸にならないといけないシーンだったら、スタッフの人数を減らしたり、女性の演出部に必ず対応してもらったり、俳優さんへのリスペクトの仕方を一層考えていきたい」と意気込んだ。

なおその後「孤狼の血II」の撮影は無事に終了。ハラスメントだけでなく新型コロナウイルスへの対策も徹底され、1人の感染者を出すこともなくクランクアップを迎えた。「孤狼の血II」は2021年に公開。

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