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第32回東京国際映画祭の特別招待作品に選ばれた本作では、「この世界の片隅に」に約30分間の新規映像を加え、新たに「昭和20年の春」の物語が紡がれる。のんが主人公・すずの声を引き続き担当し、遊郭に迷い込んだすずと出会う女性・リンを岩井が演じた。片渕は「実はまだ(作業が)途中でして……これから数分長くなります」と申し訳なさそうな表情を浮かべ、「すごく長い映画になりますが、もっと長いすずさんの人生の中で、前作より少し多くページが開かれたんだなということを感じていただければ」と語りかける。
のんは、3年ぶりにすずを演じるにあたって「期間を置いてから同じ役に挑むことが初めてで、すごく緊張していました。何度も前作を観たり、原作を読み返したり、新しいシーンに向かってどう解釈していこうかと悩みましたが、役を構築していくうちにすずさんの皮膚感がよみがえってきました」と述懐。岩井は「私自身この作品のファンで、新しいシーンがすごく楽しみでしたし、呉に行ったり前作をいろんな劇場で10回ぐらい観たりしていました。収録は緊張しましたが、気張らずに当日を迎えました」とほほえんだ。
本作のために3曲を書き下ろし、エンディングテーマ「たんぽぽ」を再収録したコトリンゴ。MCから今回使用された楽曲に込めた意図を問われると、「今作では、すずさんの世界にリンさんが深く関わっていって、すずさんの夫・周作さんも絡んでくる。ですから、前作で使用した音楽を発展させる形で新しいシーンにつながっていけばいいなと思っていました」とコメントする。続けて「『たんぽぽ』は名残惜しい重厚感を出したくて、アレンジを豪華にしています」と解説した。
前作との違いについて片渕は、「前作は主にすずさんと義理の姉・径子さんの関係が変わっていくことによって、すずさんの進んで行く道が示されていくんですが、今回はもっと複雑。人間はそんなに単純なものではないですし、たくさんの物や人に出会い、苛まれ、それでも生きていかなければならないんです」と語る。今作でのすずに対して「前作よりももっとたくさんのことを見る」と述べ、新たなシーンを加えたことで前作のすずと印象が変わる部分があると紹介。「すずさんはあんなことを思いながら、このセリフを言っていたんだと思っていただける場面があります。より、すずさんが多面的になっているということだと思います」と見どころを述べた。
周作とリンの過去が明かされる本作。のんは「すごく複雑ですね。リンさんがすずさんの中でこんなに大きな存在なんだと思えるシーンがたくさんあるんですよ。彼女は、すずさんがお嫁入りしてきて、嫁の義務を果たすことで居場所を見つけようとする日々の中で、初めてすずさんに絵を描いてほしいと言ってくれた人物なんです。自分がもともと持っていたものを認めてもらえた、ということをすずさんは心のよりどころにしていたんじゃないかと思います」と役の心情に思いを馳せる。また「周作さんとの秘密を知ったとき、すずさんがどういう感情でいればいいのか戸惑っている気がしました。それ以外にも、いろんな感情が入れ替わり立ち代わり出てくる場面が難しく、監督に演出をしていただきながら『こういうことか』と気付く部分もありました」と苦労した点を振り返った。
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」は、12月20日より東京・テアトル新宿、ユーロスペースほか全国でロードショー。
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