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本作は他人とうまく接することができない中学生の少女・琉花が、ジュゴンに育てられた不思議な2人の少年・海と空に出会う海洋ファンタジー。この日のトークイベントは特別展「大哺乳類展2 - みんなの生き残り作戦」とコラボした企画で、渡辺と五十嵐は展示監修を担当する国立科学博物館動物研究部の脊椎動物研究グループ研究主幹・田島木綿子と映画や哺乳類に関するトークを繰り広げた。
連載時から原作マンガの大ファンだったという渡辺は、映画化企画の初期段階を「大好きな作品なのでハードルは高かった。僕が出した企画ではないですし、どこまでいけるかわからないけれど、ひとつ挑戦してみようとなったんです」と述懐。映画では琉花の物語により焦点を当てており、その構成の意図について「一番大きい理由は、マンガで描かれているすべてが映画の中に入り切らないから。海の神秘性や自然を全部語ることはマンガに任せようと。1本の映画に仕立てるために琉花に集中したんです」と説明した。
原作のストーリーを映画に落とし込む際に苦労した点を、渡辺は「原作は明確に何か答えがある、結論が付く話ではない。そういう意味で、なるべく映画もふくよかに、広く物語を終焉させたかった。矛盾してますが、だから琉花個人の話として、彼女が最後に見たものは何かという、そこにたどり着くまでが重要になっている」と述べる。唯一こだわっているのが「マンガと同じ読後感を目指すこと」だそうで、「明確な帰結を描いてふくらみがないより、広がりをもった作品として映画を観てもらえれば、と祈るような気持ちでいます」と続けた。
まだ作品が完成していないため、仮編集のバージョンを鑑賞している五十嵐は、「原作というより、原作のもとになった種から生まれた兄弟のような作品」と表現し、「そのコアをマンガで表現したらマンガに、映像表現をしたら映画になったという感じで捉えています」と渡辺に伝える。琉花に声を当てた芦田愛菜のアフレコ現場を見学したそうで、「マンガのキャラクターにあまり声のイメージを持っていなかった。芦田さんの声を聞いて『これが琉花だったんだ』と。ちょっとした感動を覚えました。違和感もなく、それが当然という感じだった」と振り返る。田島は研究者という立場から、渡辺と五十嵐に関して「お二人とも生物や自然史の本質をテーマにされている。そこが我々と同じ目標に向かっている方々だと思いました」と共通点を語った。
ザトウクジラが海から“ブリーチング”と呼ばれるジャンプをして、琉花を見つめるシーンについての話も展開された。田島は「ザトウクジラは本当に見つめてくるんです」と明かし、映画の描写に感心した様子。五十嵐から「これはアニメーション独自」と振られた渡辺は「実物を何度も見て、佇まいや動きを突き詰めるしかありませんでした。そして、それらしい誇張を表現する。アニメではクジラも実物より大きく、ヒレも少し長め。だからより動きがダイナミックになっているんです」とコメントする。田島もこの表現に「本物のブリーチングを見るより迫力、訴えたいものが伝わってくる。これがアニメーションの力なんだと実感しました」と感嘆していた。
トークではクジラがコミュニケーションのために発する“歌”に関する話題も。中でもザトウクジラの間では“流行歌”が存在しているそうで、田島は「だいたいがオスによるメスへの求愛行為。流行りを重視してモテたいために歌います」と説明。映画における歌の表現について、渡辺は「本物を加工したんですが、むしろ象徴的な扱いにしたほうがいいんじゃないかとなり、音の半分以上は作っています。制作中も本物を用いずイメージで作るか、本物を用いるかという議論はありました」と明かす。色彩に関しては五十嵐によるカラー原稿を参考にしながら作り上げており、「原稿がすべてではなくて、画面に潜んでいる色を抽出し、現実の色と照らし合わせました。どのように描けばそれらしく見えるか。“嘘”はいろいろついてます」とアニメーション独自の表現がなされていることを強調した。
「海獣の子供」は、6月7日より全国ロードショー。哺乳類の骨格模型や多数の剥製標本を紹介する「大哺乳類展2 - みんなの生き残り作戦」では、「Art of Mammals」と題したコーナーに、五十嵐による原作マンガのカラー原画や、映画本編カットを使用した特別映像が展示されている。
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- 「海獣の子供」公式サイト
- 「海獣の子供」予告編
- STUDIO4℃ 公式サイト
- 「大哺乳類展2 - みんなの生き残り作戦」公式サイト
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「海獣の子供」監督の目標はマンガと同じ“読後感”、五十嵐大介は芦田愛菜の声に感動(写真19枚) - 映画ナタリー https://t.co/3MDiMs7rx2
このトークイベントめっちゃ行きたかった…。