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1969年にアポロ11号の船長として人類で初めて月面に降り立った宇宙飛行士ニール・アームストロングの伝記をもとにした本作。企画はチャゼルの前作「ラ・ラ・ランド」の公開前から進行していた。彼は自身の出世作となった「セッション」に触れながら、原作の印象を「あの作品から続いている問いかけの延長線上にある物語だと感じました。何かゴールに対する代償を描き、その過程を考察すること。ある意味、月面着陸ほど大きなゴールはないですから、アイコン的な物語をバックに、このテーマをさらに掘り下げたいと思いました」と明かす。
しかし本格的にアームストロングについての調査を進める中でその思いにも変化があったという。「ゴールより、なぜアームストロングが月面着陸を達成できたのか。言ってしまえば、その裏には深い悲しみや喪失がありました。それが彼を月に駆り立てたものの1つであると感じたんです。月へのミッションと妻ジャネットをはじめとした親密な家族関係、この2つのバランスを取りながら物語ることを重視しました」と続ける。
映画では宇宙のシーンをIMAXの65mmカメラ、地上を35mmと16mmカメラを自在に使い分け、ダイナミックな映像とともにアームストロングのリアルな心理描写が捉えられる。チャゼルは「彼の偉業を知ってはいたものの、僕らは1960年代に生きていない。だから描こうとしている時代や事象に少し距離を感じていました」と企画段階での不安を吐露。しかし、その不安は入念なリサーチによって解消されたことを明かし「映画に本物の宇宙飛行士の経験がリアルに反映されていることが重要でした。そこでデヴィッド・スコットさん、バズ・オルドリンさん、マイケル・コリンズさんなど多くの宇宙飛行士の方々に実際にお会いしてリサーチを続けました」とアポロ計画に関わった名だたる宇宙飛行士の名を挙げる。
「ラ・ラ・ランド」でもチャゼルとタッグを組んだゴズリングが、アームストロングを演じた。歴史上の偉人を演じることに光栄さを感じると同時に、プレッシャーも相当なものだったと語るゴズリング。「原作を読むまで、ニール・アームストロングという人物をまったく理解していなかった。ミッションを成し遂げるまでどれほど多大な犠牲を払ったか。その背後にある喪失感を背負ったうえで演じることは、重責であり、刺激的な挑戦でもありました」と振り返る。具体的な役作りでは、ジャネットをはじめとしたニールの知人や関係者と対面したことも大きかったという。「彼女が亡くなる前に出会えたことは幸運でした。ほかにもニールの妹や2人の息子、NASA時代の同僚などさまざま人々が惜しみない協力を捧げてくれた」と感謝を述べた。
イベントには日本人ゲストとして宇宙飛行士の山崎直子、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイの創業者である前澤友作が出席。前澤が宇宙ロケット「ビッグ・ファルコン・ロケット(BFR)」の初搭乗者として、月を周回する宇宙旅行の契約を結んでいることにちなみ、チャゼルとゴズリングが「月に行ってみたいか?」と問われる場面も。思わず笑みをこぼすチャゼルは「月を近くで見られることに嫉妬します。とてもユニークでシュールな経験になる思う」と素直にコメント。一方のゴズリングも「実際の宇宙服を着た撮影でもっとも気分が高揚したのは、カットがかかってから地に足を下ろし、宇宙服を脱いだ瞬間」と撮影を述懐しながら「行きたい、とは思わないけどその勇気に感服します。地上で陰ながら応援してます」と語りかけた。
「ファースト・マン」は2月8日より全国でロードショー。
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