ラオスのホラー「Dearest Sister」の上映会とトークイベントが7月20日に東京のアテネ・フランセ文化センターにて行われ、監督のマティー・ドゥー、空族の
第89回アカデミー賞外国語映画賞に、ラオス初の代表映画として出品された本作。原因不明の病で視力を失った従姉・アナの世話をすることになったノックは、死者のビジョンを見たというアナからある数字を聞くが、やがてその番号が家族全員を不幸に巻き込んでいく。
富田が監督を務め、相澤と共同脚本を手がけた「バンコクナイツ」で、ドゥーはラオスでの撮影に協力。「爆撃を受けたところでクレーンショットで撮りたいってトミー(富田)が言うから、その要望にどう応えようかと思った」とドゥーが明かすと、相澤は「本当に助けられました。高い機材がなくても知恵を使って作っていきました」と述懐する。ドゥーが「クレーンがないカメラがないって言ってたら、何も作ることはできなかったですよね。映画はさっさと作るべきです」と述べると、富田は「姉さんはそんな感じだったっすよね」としみじみ振り返った。
タイのホラー映画について富田は「タイのホラーは伝統も人気もあって。しかも、怖いところはめちゃくちゃ怖くて、笑うところはめちゃくちゃ笑わせるというスタイルなんです」と説明し、「そんな中、マティーの作品は抑制されてて、そこがよかったです」と感想を伝える。「私と違って怖くなかったでしょ(笑)」とジョークを飛ばしたドゥーは、「それには理由があるんです。ラオスではメディアが充実していないので、タイの番組はとても人気があります。でも、一方でラオスらしさというものが失われている。私は、どうせ作るならラオスならではのものを作りたかったんです」と思いを語った。
劇中で登場する宝くじについて話が及ぶと、富田は「『バンコクナイツ』の撮影のとき、大きな蛇が道を横切ったんです。それを見た主演女優の方がパニックになってお母さんに電話をしたら、『ラッキーだから宝くじを買いなさい!』って言われて。そしたらそれが大当たりしたんですよ(笑)」とエピソードを披露。「それくらいタイやラオスでは習慣となっているんです」と言うドゥーは「動物などあらゆるものに数字が割り当てられています。私の母が亡くなったときも、多くの人が宝くじのナンバーを私に聞きました。当時は『こんなときになんで!?』と思ったんですけど、その印象が強く残っていたので、この映画の題材にしたんです」と作品の裏側を語った。
終盤には観客との質疑応答も。裕福な暮らしをしているアナの夫が白人男性である点を尋ねられると、ドゥーは「ある意味で搾取に近いような関係性ですよね。ラオスの若い女性が自分を売って、甘い汁を吸おうとする状況は確かにあります。また私が一番嫌悪を感じるのは、ラオスの人々が白人というだけで彼らを一段高いところに置いてしまう、その構造そのものなんです」と意見を表明する。続いて、「劇中での主人公たちの生活が、欧米人が想像するような“貧しいアジア”という描き方とは違う」と感想が伝えられると、ドゥーは「ラオスの人々は、いつもニコニコしていて単純であるかのように見られがちですが、私はそういう表面的ではないものを描きたかった。“貧困ポルノ”には飽き飽きしているんです」と明言し、富田と相澤は「さすがです」と彼女を称えた。
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三上功 Kou Mikami @mikamikou
ラオスらしさを重視したホラー『Dearest Sister』。展開がかなりスローな感じで、大きな波というものがなかったのですが、それが逆にこの映画を他のホラー作品と切り離している感じがしました。映画もトークも非常に面白かったです。https://t.co/H3q2d6bpqg