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暴力団対策法が成立する以前の広島を舞台に、組織間の激しい抗争が描かれる本作。暴力団との癒着をうわさされる刑事・大上を役所広司、部下の日岡を松坂桃李が演じた。
アメリカ人男性の「この(極道の)世界に関しては何も存じ上げずに拝見したので、非常に混乱してしまいました」という感想を聞き、白石は思わず声を上げて笑う。「この作品を通して何を語りたかったのか?」と質問されると、柚月は「世界共通である、人間の生きる姿。生きることは誰もがつらいですが、生き残ることのすごさを書きたいと思いました」と答えた。
自身にとっての「仁義なき戦い」シリーズとは?という話題では、白石が「東映実録映画は、大傑作であり大好きな映画群。でもある意味ではもう終わった映画というか、今はできない映画。自分の監督人生に関係のない作品だと思っていました。今回柚月先生がこの原作を書かれて映画のプロジェクトが生まれ、まさか監督として自分に白羽の矢が立つとは。不安と同時に、今これをできるのは僕だけなんじゃないかという思いがありました」と語る。「仁義なき戦い」と同じく本作の舞台が広島であることに言及し、白石は「10代の頃に観ていた『仁義なき戦い』の印象が強すぎて、ヤクザは基本的に広島弁をしゃべっているんじゃないかと思っていたくらいです(笑)」と笑いを誘う。そんな広島弁のセリフに関して「この物語を脚本にして俳優さんに見せたら、もう説明はいらなかった。『ああ、こういうことがやりたいのね』と」と続けた。
「原作に、女性作家ならではのアプローチを感じたか?」という質問に、白石は「女性だからということは特に感じず、単純にストーリーラインが面白くて、キャラクターもはっきりと意志のある人物として描かれていると思いました。ただ柚月先生は上品で育ちのよい方なので、もうちょっと下品さがほしいなと思って(笑)。映画に出てくる下品なところは、だいたい僕らがやらかしたところかな」と笑いを起こす。「男性同士の馴れ合いではない関係性を描きたかったので、なるべく男は男らしく書こうと心がけました」と振り返る柚月だが、映画の中で大上が拷問相手の性器から真珠を取り出すシーンを回想し「あれは、原作では頬に傷をつけるという描写だったので……。“男”の部分の表現は、監督には敵いませんでした。次回がんばります!」と返した。
また白石は「キャストの皆さんも、ヤクザ(役)初心者の方が多かった。でもみんな『ヤクザ楽しいっすね!』ってのびのびとやってくださったので、まだまだ日本の俳優も捨てたもんじゃないなと(笑)。彼らが暴れ回ってくれたので、僕も非常に満足してます」と俳優陣の演技を絶賛。さらに役所の1990年代の出演作「シャブ極道」「大阪極道戦争 しのいだれ」を挙げ「キレキレのヤクザの役をやっていた当時の役所さんが大好きで。最近はあまりそういう役を演じられていなかったので、『あの頃の役所さんを取り戻してほしい!』という思いもありました。非常に“やくざな刑事”を演じてくださって、ファンタスティックでした」とコメントする。
最後に「原作の続編を映画化するとしたら、監督は白石さんにお願いしたいですか?」と聞かれた柚月は「もちろんです!」と即答。「最後に出てくるライターは、松坂くんが『次に会うときまで持っておきます!』と言って持って帰りました」と映画の続編製作へ期待をかける白石も、柚月に「お引き受けくださるんですか?」と聞かれると「もちろんです。断る理由が何もないです」と快諾する。それを聞いた柚月が「相思相愛です!」と言うと、会場で拍手が起こった。
「孤狼の血」は5月12日よりロードショー。
※「孤狼の血」はR15+指定作品
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