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こうの史代のマンガをもとにした本作では、戦時中の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前を向いてたくましく生きる女性・すずの姿が描かれる。
司会に制作のきっかけを尋ねられると、監督の片渕は「すずさんがこの世界のどこかで健在だしたら、彼女は現在91歳です。今、あの時代のことを知る人がとても少なくなってきています。自分たちの両親がどんな時代を生きてきたのかを知ることによって、やっと大人になれるのだという気持ちで作りました」と回答。
すずに声を当てたのんは、役作りで意識した点を「すずさんという人は、戦争というものにあからさまに嫌悪感を示している人ではないんじゃないかなと思いました。それよりも、目の前にある毎日の暮らしを一生懸命に生きるという部分を意識しました」と語る。
本作は、イギリス、フランス、ドイツ、メキシコなど14カ国での上映が決定している。そこで2人へ、世界へ向けて動き始めた心境に関する質問が。片渕は、前作「マイマイ新子と千年の魔法」をアメリカで上映した際、舞台挨拶で観客から次作について質問されたことを振り返り「『次の映画の舞台は1945年の広島です』と答えたとき、その場にいた多くの人が息を飲んだ。原爆というものは人類史的な悲劇であると、外国の方ともひとつの心になれている気がします」と話す。そして「そこにいたのがどんな人たちだったのかを、この映画を通じて世界中の方々に感じてもらえれば」と明かした。また同じ質問にのんは、「昭和20年の広島を舞台としていることも重要ですが、その中で普通に生活していくっていう切なさや感動は、すべての人に響くんじゃないかと感じています」と考えを述べた。
終盤には、観客からの質問コーナーが設けられた。一番好きなセリフを聞かれたのんは、すずがアメリカ軍の落としていったビラをトイレットペーパーに利用する場面を挙げて「そのシーンの『なんでも使って暮らし続けるのがうちらの戦いですけえ』っていうセリフがすごく響きました」と答えた。
最後に片渕は、公開を楽しみに待つファンへ「観ることで、タイムマシンに乗って当時へ行くような気持ちになれるものができたと思っています。行った先に、のんちゃんが声を貸したすずさんという人がいます。すずさんが毎日をどんなふうに暮らしていたのかをのぞいてください」とメッセージを送る。のんも「普通に毎日が巡ってくるという、“普通”がすごく愛おしくなる作品だと思います。生きるということに涙があふれてくるのですが、悲しい涙ではない。何があっても生活を続けるという力強さに心震える映画だと思います」と作品をアピールした。
「この世界の片隅に」は11月12日より全国ロードショー。
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