ミルクボーイ駒場孝の「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」第5回ビジュアル

映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第5回 [バックナンバー]

伏線回収の面白さを教えてくれた「バック・トゥ・ザ・フューチャー」

時間旅行系は苦手だけど、1往復の旅なら付いていける

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第5回に観てもらったのはSF映画の金字塔「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクションでしか本作を知らなかった駒場は、タイムマシンが登場することに一瞬ひるむも、「これが伏線回収の面白さか」と感じるほどにかなり楽しんだという。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

事前情報はUSJのアトラクションのみ

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。 今回鑑賞させてもらった映画は1985年公開の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」です。カタカナで表記すると「・」が多い映画ですね。 全3作、すべて1分も観たことがないのですが、どんなものかはなんとなく知ってます。タイムマシンがあって、名前はデロリアン。そして博士がいたり不良少年がいたり、みたいな感じですよね? この知識は、USJの「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」というアトラクションで仕入れました (乗り物になったら、より「・」が増えますね) 。

今はなくなってしまいましたが、「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」と言えばUSJの初期から何年も親しまれた代表的アトラクションで、僕も何度も乗らせてもらいました。そのアトラクションに乗るまでの列のところにモニターがあり、その映像の中で博士と不良少年のやり取りみたいなのがあったので知ってるんです。映画はまったく観たことがなかったのであまりよくわかっていませんでしたが印象に残っています。あと個人的にその映像と同じくらい印象に残っているのが、乗る直前くらいにあった、透明なパイプの中にピタゴラスイッチのような仕掛けがあり、そこを球が延々と転がってくという研究所の雰囲気を醸し出していた装置みたいなやつです。あれを見るのが好きでした。今やアトラクションがないので確認しようがないことを書いてしまいすみません。でも1人でも共感してくれる方がいたらうれしいです。少し話はそれましたが事前情報としてはその程度です。

ただ、タイムマシンが出てくるということで観る前からとんでもなく不安でした。今までも苦手な映画の特徴を挙げさせてもらってましたが、中でも僕が最高に苦手なのが「過去に行ったり未来に行ったりする系」なんです。これをされると呆れるほどに意味がわからなくなるんです。今いつなのか、どこなのか、誰なのか、まったく付いて行けなくなるんです。なので今回は絶対はぐれないように極限まで集中をして観始めました。

頭の中でつながる感覚が楽しい

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」場面写真 (写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータ イメージ)

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」場面写真 (写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータ イメージ)

しかし始まってみるとその不安は無駄だったことがわかりました。なぜなら「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、1回過去に行って現在に帰って来るという、「1往復の旅」だったからです。これはありがたいです。何回も行ったり来たりするから場面がわからなくなるのですが、今作のような一往復の旅なら付いて行けます。しかも、1人で過去に行って1人で帰ってくるという、「1往復1人旅」ではありませんか。これならその1人を追っていればとりあえずはぐれることはないです。これはとても易しいです。こういう作品をたくさん観たいと思いました。まずは1往復1人旅ものから始めて、2往復1人旅、3往復1人旅と往復を増やし、慣れてきたら2往復2人旅ものや、3往復3人旅もの、というように人数も増やして慣らしていけばいいんだと思いました。ただ3往復3人旅もの、なんていう映画があるかはわかりませんが。

あと「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、伏線回収の楽しみ方を初心者にもめちゃくちゃわかりやすく教えてくれる作品だなとも思いました。過去と現在の1往復だけなので、過去に行って主人公がハッとした部分は、絶対序盤の現在のほうで触れられている、というとても太い伏線をたくさん張ってくれていました。映画に慣れている人からしたら簡単すぎるのかもしれないですが、初心者からすると「え、これってあのとき言ってなかった?」などと思い観返してみたらわかりやすく「やっぱり!」となる点があって、頭の中でつながる感覚が楽しく「これが伏線回収の面白さなのか」ととても見応えがありました。

しかも映画の音楽も、当たり前ですがUSJのアトラクションで散々聴いたあの音楽だし、挿入歌も「この映画の歌なんや!」というのも多くあり楽しく、ストーリーも終盤に向けてかなりハラハラする展開で、なんでアトラクションがあるときにこれを観なかったんや、と後悔するくらい面白い映画でした。

そんないい気分でラスト10分くらいを迎えたのですが……油断していました。最後、急激に意味がわからなくなりました。「なんでこんな感じになっているの? それぞれのキャラも全然違う。違う世界なの? 何これ!」と、気持ちよく観終われると思っていましたがそう甘くなかったです。本当になんでそうなってるのかわからなくて、必死に理解しようと思いましたが何もわからずそのまま終わりました。すぐにネットで調べると「まあ言われてみれば」という単純なことだったのですが僕の映画力ではそれをスムーズに理解できませんでした。なので今回の「そんなこと言うてた?」は、「最後こんなにむずなるって言うてた?」です。皆さんあれ一発で「あそこでああなったからこうなるよね」って理解できるもんなんでしょうか……できるんでしょうね……。終盤まであんなに楽しく観ていたのに、ゴール前でこけてしまいました。悔しいです。

でも苦手とする過去とか未来に行く作品を観れましたし、伏線回収の楽しさを学ばせてもらったので、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のおかげで確実に経験値はアップしたと思います。

まだまだいろんな作品を観て映画勉強がんばりますのでよろしくお願いします。

編集部から一言

「君の名は」に関しては「何度観ても理解できなかった」「画面の端に日付を表示しておいてほしい」と言っていた駒場さん。もしかしたら「バック・トゥ・ザ・フューチャー」も難しいかも……?と思いつつ薦めてみたら「これが伏線回収の面白さか」と言わせる結果に。歴史的名作の強さを感じました。確かに映画のストーリーって時代が進むにつれてややこしくなる傾向はあると思うので、SFに苦手意識がある人はまずこういった古典から当たるのは1つの手かもしれません。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年製作)

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ビジュアル (写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータ イメージ)

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ビジュアル (写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータ イメージ)

高校生のマーティは、仲のいい科学者ドクが開発したタイムマシン・デロリアンによって誤って30年前にタイムスリップ。そこでは当時高校生だった母が、マーティの父ではなくマーティに恋をしてしまう事態に。自分が生まれなくなる未来を防ぐため、マーティは2人の仲を取り持つべく奮闘する。SF映画の傑作として名高く、続編として「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」が製作されている。マイケル・J・フォックスがマーティ、クリストファー・ロイドがドクに扮した。製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ、監督はロバート・ゼメキス。2025年4月からは、本作を原作とする劇団四季によるミュージカルも上演される。

駒場孝(コマバタカシ)

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。またミルクボーイが主催し、デルマパンゲ、金属バット、ツートライブとの4組で2017年から行っているライブ「漫才ブーム」が、2033年までの10年を掛けて47都道府県を巡るツアーとして行われることが決定。日程などの詳細は後日発表される。

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