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映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第25回 [バックナンバー]

思わず自分なりのうっすい考察をしてしまった「天使にラブソングを…」

全然違ったら教えてください

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第25回のお題は、ウーピー・ゴールドバーグ主演の大ヒットコメディ「天使にラブ・ソングを…」。運命的な出会いもあり、基本的には大いに本作を楽しんだ駒場だったが、ある一点が気になり、思わず自分なりの“うっすい考察”をしてしまう。その考察はややズレてこそいたが、“映画超初心者”からの脱却が見える回となった。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

ウーピー・ゴールドバーグさんのお導き

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。今回観るのは1992年公開の「天使にラブ・ソングを…」です。

タイトルを聞いたことはありましたが観たことはなく、事前情報もなかったです。タイトル的に「歌を歌いそうやな」という予想がつくくらいです。でも今回ちょっとびっくりしたことがありまして、少し前にたまたま入った洒落た服屋さんで、ちょっと色褪せた加工がされたいい感じのプリントTシャツが何枚か売っていたんです。その中の1枚にこの「天使にラブ・ソングを…」のジャケット写真が印刷されたものがあり、僕はそれがこの作品のジャケットとは知らず、ただ単にプリント的にかっこいいなぁと思って買ったんです。その数日後ナタリーさんから次は「天使にラブ・ソングを…」を観てくださいと言われ、どんな映画なのか検索したらそのTシャツにプリントされたジャケットの画像が出てきたのでめちゃくちゃ驚きました。すごいタイミングじゃないですか? 買うべくして買っているし、観るべくして観せられているなと感じました。ウーピー・ゴールドバーグさんが「駒場にティー・シャツを…」的なことで導いてくれたんでしょうかね。これは訳がわかりませんが、でもそんな運命を感じました。

うっすい考察をしてみました

内容ですが、上映時間も100分とちょうどよく、ストーリーもとてもわかりやすかったです。ウーピー・ゴールドバーグさんの雰囲気もめっちゃ好きでした。演技ももちろん上手ですし、表情とか動きで感情がとてもわかるのがいいです。コミカル加減も、やられすぎたらこっちが恥ずかしくなるのですが、ウーピー・ゴールドバーグさんのは恥ずかしく感じない絶妙なところでとてもよかったです。あと、歌もめっちゃうまいですね。僕がオールディーズの曲が好きなのもあるのですが、序盤のウーピー・ゴールドバーグさんが歌っているシーンいいですね。もっと長く観たいくらいでした。ミュージカル映画とは違い、これは話の中で歌っているシーンなのでこんな感じなら大歓迎です。

「天使にラブ・ソングを…」場面写真(写真提供:Buena Vista Pictures / Photofest / ゼータイメージ)

「天使にラブ・ソングを…」場面写真(写真提供:Buena Vista Pictures / Photofest / ゼータイメージ) [拡大]

ただ気になったこともあります。めちゃくちゃ変なことを言ってるかもしれませんが、オープニングのウーピー・ゴールドバーグさんの子供の頃のくだりっているのかなと思いました。そこから順を追って歳を重ねていくわけではなく、次のシーンからはもう大人になりきったウーピー・ゴールドバーグさんで話は進むので、あそこっているんですかね? 授業中先生に当てられてふざけたことを言い、“お調子者やった”ということを表しているということでしょうか。子供ではなく大人になった状態でお調子者だということを表すのではダメだったんですかね。あと個人的に、そのときの先生も修道女の格好をしていたので、その先生が後半、教会に出てきてつながるのかななど変な読みをしてしまい、「あの先生」を記憶に留めながら観たので微妙な引っ掛かりになってしまいました。あれはなんの意味があるのでしょう。ひょっとして、冒頭でキリスト系の学校に通っていたということを描いておいて、大人になっても結局教会、つまりキリストのもとに身を置いているということを表すためなのでしょうか!? うっすい考察をしてみました。全然違ったらまた教えてください。でもそこが気になったくらいで、あとはわかりやすくいい話でとても楽しく気楽に観れてよかったです。

そして今回の「そんなこと言うてた?」ですが、これはストーリーとか以前の話で申し訳ないのですが、「ウーピー・ゴールドバーグさんって女性って言ってた?」です。先ほどから知っていたかのようにウーピー・ゴールドバーグさんウーピー・ゴールドバーグさんと言ってますが、実は今作を観るまで知りませんでした。知らなかったというか、正確には名前はインパクトがあるし聞いたことはありましたが、顔はまったく出てきませんでした。こんな方なんですね! 僕は名前の響きからずっと男性やと思っていました。完全な独断ですが“ウーピー”も男ですし、“ゴールド”もめちゃくちゃ男、“バーグ”も男じゃないですか。なんなら“バーグ”と言えばスピルバーグということで、バーグつながりで勝手に監督やと思っていました。恰幅のいいおっちゃんのウーピー・ゴールドバーグ監督やと思っていました。本当に失礼なことです。このたびちゃんとお目にかかれてうれしかったです。誰か教えといてよ、と言いたいところですが、常識すぎて今さら「ウーピー・ゴールドバーグは女性で……」とかいう話にならないですもんね。映画初心者はこんなことすら知らないので本当に恥ずかしいです。ちなみに「ナタリー・ポートマン」さんも女性と知ったときに勘弁してよと思いました。“マン”言うてますやん、と思いました。でもそんなこと言ったって名前なんですからこっちが悪いです、失礼です。これからはちゃんと覚えておきます。

今回も、映画も知れて海外の俳優さんも知れて、どんどん知識が増えていってるのが実感できて、やはり映画はいいですね。これからもいろんな映画を観ていこうと思います!

編集部から一言

「子供の頃のくだりっているのかな」と疑問に持ち、そこからなぜそういう無駄に見えるシーンが必要だったのかを考察していることに感動しました。第0回のこがけんさんとの対談で「意味のなさそうなシーンには意味がある」とアドバイスされたという話がありましたが、まさにそれが生きているのではないでしょうか。そのうえでしっかり考察をしてくれているのですが……おそらく少しズレています(笑)。説明するのも野暮なんですが、「違ったら教えてください」と書かれてますし、映画を観ていない読者がこの原稿だけを読んで「いらないシーンがあるの?」と誤解してしまうといけないので、念のため補足させてください。この「編集部からの一言」の欄があってよかったです。
まずオープニングでは、主人公デロリスの幼少期が描かれます。彼女がカトリック系の小学校に通っていたことがわかり、シスターから「12使徒を言ってみて」と言われたデロリスが「ジョン、ポール、ジョージ……」とふざけます。そこで怒られても今度は「エルヴィス」と答えてしまい、シスターは激怒、クラスメイトは大爆笑という場面です。このシーンがあるからこそ、「小さい頃から抑圧を嫌っていたのに、今はシスターとして修道院にいる」という構図の面白さが生まれます。そして「少女時代からの反骨心や窮屈さを嫌う性格が、最終的に修道院を救う力になった」という流れを示す前フリでもあります。大人になったデロリスが「子供の頃も抑圧されていて……」とセリフで語るよりも、映像で見せることで説得力があるのではないかと個人的には思いました。ということで子供の頃のくだり、いります!

「天使にラブ・ソングを…」(1992年製作)

「天使にラブ・ソングを…」ビジュアル(写真提供:Buena Vista Pictures / Photofest / ゼータイメージ)

「天使にラブ・ソングを…」ビジュアル(写真提供:Buena Vista Pictures / Photofest / ゼータイメージ) [拡大]

アメリカ・ネバダ州リノにあるクラブで歌う歌手のデロリスは、マフィアのボスであるヴィンスの愛人だった。しかし彼女はある日、ヴィンスが裏切り者の部下を殺す現場を目撃したことで命を狙われる身となってしまう。警察に逃げ込んだ彼女はサンフランシスコの女子修道院にかくまわれることに。当初はシスターとしての不自由な生活に辟易するデロリスだったが、音痴ぞろいの聖歌隊の指導を任されると、聖歌にロックやゴスペルを取り入れて改革。その派手なパフォーマンスは噂を呼び、ローマ法王からも声が掛かるほどの人気になるが、デロリスの居場所はギャングたちにバレてしまう。「ゴースト ニューヨークの幻」でアカデミー賞助演女優賞を受賞したウーピー・ゴールドバーグが主演し、その人気を不動のものにした。監督はエミール・アルドリーノ

駒場孝

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。またミルクボーイが主催し、デルマパンゲ、金属バット、ツートライブとの4組で2017年から行っているライブ「漫才ブーム」が、2033年までの10年を掛けて47都道府県を巡るツアーとして行われている。

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くもつ @Kumotsu9

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駒場さんの天使にラブソングを評、おもしろい

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