選者 / 南波志帆「ゾンビーバー」

文 / 南波志帆（コラム）、田尻和花（作品紹介）

ゾンビーバーが襲った人間たちはビーバー風のグロテスクな怪物に…

みなさん、こんばんは。「今宵も悪夢を」案内人のすいか生肉ゾンビが大好きな南波志帆です。
私はクスッと笑える要素のある面白ゾンビ映画が好きなのですが、今回は愛らしいビーバーがまさかのゾンビ化するという、新しい視点にワクワクさせられる、ジョーダン・ルービン監督の「ゾンビーバー」をご紹介したいと思います。

ママロネック医療廃棄物処理施設、と書かれたトラックを運転しながら下品なトークを繰り広げる従業員の男性二人。道路上に鹿が現れますが、運転に集中していないため、思いっきり轢いてしまいます。その拍子に汚染物質が入ったタンクがひとつ、川へと転がっていきます。どんぶらこどんぶらこ、と遠くまで流れていくタンク。ついに、森の奥のビーバーたちが暮らしている住処まで辿り着いてしまいます。吹き出す緑の液体。見守るビーバーたち。

時を同じくして、女性三人の旅が始まります。その行き先は、ビーバーたちがいる森のコテージ。固定電話はあるものの、圏外で携帯電話が全く使えないという、フラグも立っています。ドキドキします。

この作品のほっこりポイントは愛らしいビーバーたちなのですが、あからさまなぬいぐるみ感がチープでかわいい…！（笑）
ゾンビ化したとて、全然怖くないのです。だめじゃん。だけどそこが愛しい。

それと、笑えるB級ゾンビ映画ならではの、お色気とお下品さが随所にちりばめられている所もこの作品の特徴です。登場人物たちの性格と会話があまりに最低で最悪なため、自然とゾンビーバーの味方になってしまうというか、謎にゾンビーバー頑張れ！みたいな気持ちになってしまうのが不思議で面白いのです（笑）。

しかも、このゾンビーバーたちは賢い！ 唯一の連絡手段だった固定電話の線を噛み切ったり、人間を逃さないように木を切り倒して道を塞いだり、小屋の窓を塞ぐために使った木を食べたり、ビーバーであることを最大限に活かして応戦します。仕事ができるゾンビーバーたち！ 素敵…！ いつの間にか、ゾンビーバー応援隊長になってしまう私なのでした。

そして、ゾンビーバーが襲った人間たちが徐々に覚醒し始めてからが、この作品の恐怖ポイント！ 人間だけど、ビーバーであり、ゾンビでもある、グロテスクな怪物たちの誕生です。大パニック…!!

後味の悪いシニカルな終わり方も好きですし、エンディングで流れる撮影のNGシーンやゾンビーバーの歌も最高です。
家族や恋人と観るのに最も適していない映画ですが、頭を空っぽにして笑いたい時におすすめの、モフモフラブリーパニック映画だと思います！（笑）

南波志帆（ナンバシホ）

1993年6月14日生まれ、福岡県出身のシンガー。2008年11月にミニアルバム「はじめまして、私。」でデビューを果たし、デビュー10周年を迎えた2018年には初のベストアルバム「無色透明」をリリースした。2014年からNHK-FM「ミュージックライン」のDJを務めている。

「ゾンビーバー」（2014年製作）

本作はトラックで運んでいた汚染廃棄物の荷物が、ビーバーの住む湖に落ちたことから展開するコメディホラー。その湖の近くへ、仲良し3人組の女の子たちが何も知らずにキャンプをしにやって来る。その後男子たちも加わって大はしゃぎをする中、凶暴化したビーバーが彼らの小屋を襲撃し始めるのだった。
「ハングオーバー」シリーズのスタッフが参加し、ジョーダン・ルービンが監督を担当。レイチェル・メルヴィン、コートニー・パーム、レクシー・アトキンスのほか、ハッチ・ダーノ、ジェイク・ウィアリー、ピーター・ギルロイ、レックス・リンが出演した。

「ゾンビーバー」Blu-ray / DVD販売中

税込価格：Blu-ray 5280円 / DVD 4180円
販売元：インターフィルム