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ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第53夜 [バックナンバー]

選者 / 南波志帆「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」

ゾンビ作品史上、ゾンビが蔓延る世界を一番エンジョイしている主人公

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ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。

第53回は南波志帆がNetflix映画「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」を推薦。ゾンビだらけの街で生き生きと過ごす主人公には、南波も感心させられたよう。

/ 南波志帆(コラム)、田尻和花(作品紹介)

働きすぎな現代人にこそ観てほしい

「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」場面写真

「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」場面写真

「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」場面写真

「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」場面写真

みなさん、こんばんは。「今宵も悪夢を」案内人のすいか生肉ゾンビが大好きな南波志帆です。
私はコメディ要素のあるゾンビ作品が大好物なのですが、原作のお噂はかねがね聞いていて、気になっていた作品がついに映画化されたということで、今回は、石田雄介監督の「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」をご紹介したいと思います。

すでにゾンビパンデミックが始まった世界の中で、マンションの外廊下を必死に走っている主人公のシーンから、この物語はスタートします。
「何だあれ 何だあれ ゾンビ? どう見てもゾンビだよなあれ どうすんだよ」と、ここまではゾンビ作品でありがちなオープニングだと思うのですが、ここからがこの作品ならでは!
「このままじゃ…このままじゃ…会社に遅れちまうじゃねえかよ!」と、続くのです…!(笑) そっちかーい!!(笑)

そこから急に、1年前の回想シーンが始まります。
有名大学のアメフト部出身、気力体力ともに充実していて、希望に満ち溢れた主人公の天道輝。キラキラとした業界に憧れた彼が、就活の末に入社したのは制作会社。
ここまではよかったのですが、入社初日から残業、しかも完徹、からの二徹目突入と、理想だったはずの職場はかなりのブラック企業であることが判明します。あんなにキラキラと輝いていた主人公がすり減っていく日々が、またリアル。現代社会の闇を感じます。
主人公が職場で憧れている、優しくて美人な先輩の言葉、「ホントにやりたいことって忘れてっちゃうよね」も妙に刺さりました。
パワハラ上司にも追い詰められ、睡眠も栄養もろくに取れず、とっくに限界を迎えていた主人公。電車を待っている時に、ホームドアが邪魔だと思い始めます。これがなければ明日会社に行かなくて済むのにな、と。
その背後で不穏な声を「ガガガッ」と出しながら、あの特有の動きをしてるサラリーマンが通り過ぎます。

そこから迎えた朝、すでにゴミ屋敷と化している部屋の中(やはり心の状態と部屋の荒れ具合は比例しますよね…!)で、アラームが無情にも鳴り響きます。そして、回想前の冒頭のシーンへと繋がるのですが、主人公はここで気づくわけです。
「もしかして…もしかしてだけど…もう会社に行かなくてもいいんじゃね?」

「やったあ!」と大声かつ、両手でガッツポーズで喜びに震える主人公。
ここまで、主人公に感情移入して観ていた私は、まさかゾンビの存在が救いとなる日が来るなんて驚きでした。新しくて、面白い視点…!!

そこから主人公は、ゾンビになるまでにしたい100のことをノートに書き始め、ひとつひとつ実行して、本来のポジティブな自分を取り戻していきます。
屋上で好きなだけ寝っ転がって、空を眺めて、世界の美しさを感じたり、散らかり放題だった部屋の大掃除をしたり、値段を気にせず買い物カゴに入れたり、良いお肉や食材を調達してべランピングを楽しんだり、髪の毛を派手に染めてみたり。
ゾンビ作品史上、ゾンビが蔓延る世界を一番エンジョイしている主人公だと思います…!(笑)

このメンタリティーって非常に大事ですよね。発想の転換。何事もすべては自分の心の捉え方次第なんだなと、常々感じさせられます。

そして、この作品は働きすぎな現代人にこそ観てほしい。自分の人生にとって、何が大切なのか。人生は、泣いても笑っても、一度きりですからね。最後に、主人公の名言を。
「やりたいこともやれないくらいなら、ゾンビに食われたほうがマシだ!」

「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」場面写真

「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」場面写真

南波志帆(ナンバシホ)

南波志帆

南波志帆

1993年6月14日生まれ、福岡県出身のシンガー。2008年11月にミニアルバム「はじめまして、私。」でデビューを果たし、デビュー10周年を迎えた2018年には初のベストアルバム「無色透明」をリリースした。2014年からNHK-FM「ミュージックライン」のDJを務めている。

Netflix映画「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」(2023年製作)

「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」場面写真

「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」場面写真

ブラック企業で連日の徹夜、上司のパワハラを受けて憔悴し、まるで死んでいるかのように毎日を送っていた天道輝。ある朝起きると、街にはゾンビがあふれていた。輝は荒廃した光景を見て「もう会社に行かなくてもいいのでは」と歓喜。ポジティブに「ゾンビになるまでにしたい100のこと」をリストアップし、実現していく。
麻生羽呂高田康太郎の同名マンガをもとに、石田雄介が監督を担当。赤楚衛二が輝を演じたほか、白石麻衣柳俊太郎市川由衣川崎麻世早見あかり筧美和子北村一輝らもキャストに名を連ねた。

※川崎麻世の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記

※Netflix映画「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」はNetflixで独占配信中

Netflix映画「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」本予告

Netflix映画「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」メイキング映像

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(c)麻生羽呂・高田康太郎・小学館/ROBOT

読者の反応

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南波志帆 @nanba44

【お知らせ】映画ナタリーさんで案内人をさせていただいているホラー連載コラム「今宵も悪夢を」、今回は現代社会や自分の人生についても改めて考えさせられたゾンビ映画をご紹介しました。
ゾンビ作品史上、ゾンビが蔓延る世界を一番エンジョイしている主人公が最高…!笑 ぜひ読んでね〜🧠🌟

🧟‍♀️🧟🧟‍♂️ https://t.co/0cu9CW9e3d

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