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「高畑勲展」開幕!“絵を描かない”アニメ演出家の功績を、1000点超の資料で辿る

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「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」入口の様子。

「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」入口の様子。

高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」が、7月2日から10月6日まで東京国立近代美術館1階・企画展ギャラリーで開催される。開催に先がけ、7月1日にプレス向けの内覧会と記者発表会が行われた。

本展は、2018年4月に死去した高畑勲の業績を、未公開資料も含む約1000点の資料から総覧する初の回顧展。記者発表会では東京国立近代美術館・館長の加藤敬氏が「高畑監督の作品の特徴は、日常生活の丹念な描写に支えられた豊かな人間ドラマにあります。人間と自然への深い理解と愛情に裏付けられた高畑アニメーションの意義を、改めて考える機会となれば幸いです」と挨拶し、続いて主任研究員の鈴木勝雄氏から本展の説明が行われた。鈴木氏は「本展覧会は私1人でできたものではなく、スタジオジブリのスタッフの方々や、NHKプロモーションの方々、展示デザインの担当者など、10名以上のチームで議論と調査をしながら作ってきたものです」と前置きし、「展覧会は高畑さんの生前から予定されていたものでした。最初に高畑さんにお話したプランでは、高畑さんの好きな映画や好きな美術作品と、高畑さん自身の作品を合わせて見せるような展示でしたが、その形は高畑さんがいないとできないので、改めてチームで議論を重ね、このたびの回顧展に至りました」と経緯を明かした。

自身もアニメーターとして腕をふるう宮崎駿とは異なり、絵を描かない演出家であった高畑。本展では、高畑の遺品から出てきた段ボール18箱分の資料から選出したという膨大な手書きのメモやノートのほか、高畑作品を支えたアニメーターによる原画・絵コンテ、背景美術画などの現物を通じて、高畑の志向した表現を浮き彫りにしていく。展示は時系列に全4章で構成され、イントロダクションとして作品群とアニメーションの歴史を振り返る年譜、高畑に大きな影響を与えたフランスのアニメーション映画「やぶにらみの暴君」の紹介が用意された。

1章「出発点─アニメーション映画への情熱」では、若き日の高畑が演出助手として携わった「安寿と厨子王丸」の絵コンテやセル画に始まり、劇場用長編作品において初めて演出を担当した「太陽の王子 ホルスの大冒険」をフィーチャー。宮崎によるイメージボード、小田部羊一によるキャラクタースケッチ、大塚康生によるキャラクター比較表といった、その後も高畑作品を支えた人物の当時の仕事ぶりや、高畑がスタッフと共有するために制作した人物相関図、ドラマの流れを詳細に図表化した「テンション・チャート」といった資料を見ることができる。また「ドラえもん」のTVシリーズスタート時に高畑が書いたという企画書も。さらに1960年前後に書かれたという「ぼくらのかぐや姫」と題された企画メモからは、のちの「かぐや姫の物語」につながる構想が、当時から高畑の内にあったことを感じさせる。

2章「日常生活のよろこび─アニメーションの新たな表現領域を開拓」では、「パンダコパンダ」「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「赤毛のアン」など、子供たちの姿がのびのびと描かれた作品に焦点を当てる。図録の校了直前に出てきたという、宮崎が手がけた「パンダコパンダ」のレイアウトや、宮崎が絵を、高畑がト書きを手がけた「アルプスの少女ハイジ」の絵コンテは、本展で初めて披露されるもの。また「ペリーヌ物語」の絵コンテでは、数少ない高畑自身が描いた絵を見ることができる。さらにハイジたちが暮らす「アルムの山小屋」周辺の景色をリアルに再現した巨大なジオラマも用意された。

3章「日本文化への眼差し─過去と現在との対話」では、高畑が手がけた日本の風土や庶民の生活を描いた作品群を取り上げる。なかでも「火垂るの墓」の展示では、高畑が原作を切り貼りして構成を練ったノートをはじめ、近藤喜文と百瀬義行によるイメージボード、保田道世が手がけたこだわりの色彩設計、山本二三による背景美術といった多数の資料が揃えられた。カラフルなイメージボードで埋め尽くされた「平成狸合戦ぽんぽこ」のコーナーを抜けると、4章「スケッチの躍動─新たなアニメーションへの挑戦」へ。ここでは高畑が模索し続けていた新しい表現方法の結実として、「ホーホケキョ となりの山田くん」「かぐや姫の物語」の2作品を紹介する。「かぐや姫の物語」で濱田高行が手がけた「転がる赤子」の原画、橋本晋治が手がけた「疾走する姫」の原画は、本展の中でも異彩を放ち、同作のアニメーション表現がいかに新しいものであったかを実感させる。

記者発表会で各章の見どころを語った鈴木氏は、アニメーション作家の展覧会を美術館で行うということに関して「これだけの原画が一堂に会することはなかなかない。映像になる前の、原画の力を感じてほしい」とアピール。そして「高畑さんからの贈り物を、次の世代にどうバトンタッチできるかを意識して作ってきました。語り継がれていく高畑作品の力を再認識してもらえる機会になれば幸いです」と語った。

会場では展覧会オリジナルグッズも販売。公式図録をはじめ、「太陽の王子 ホルスの大冒険」から「かぐや姫の物語」までの作品群より、ポストカード、A4クリアファイル、しおり、ブックカバー、ボールペン、一筆箋、お茶など多数のアイテムが用意された。また7月21日には映像研究家・叶精二による記念講演会「高畑勲の革新的アニメーション演出術」を開催。なお本展では俳優の中川大志が音声ガイドを務めている。

「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」

会期:2019年7月2日(火)~10月6日(日)※月曜日(7月15日、8月12日、9月16日、9月23日は開館)、および7月16日(火)、8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)は休館日
時間:10:00~17:00(金・土は10:00~21:00)※入館は閉館30分前まで
会場:東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー
料金:一般1500円、大学生1100円、高校生600円(前売および20名以上の団体料金:一般1300円、大学生900円、高校生400円)※中学生以下、障害者手帳を提示した本人およびその付添者1名は無料

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