7月3日に放送・配信が始まったアニメ「水属性の魔法使い」。原作は久宝忠による小説で、7月15日にはシリーズ通算15巻目となる最新刊「水属性の魔法使い 第三部 東方諸国編3」(TOブックス)も発売される大長編だ。コミックナタリーでは、メインキャスト3人による鼎談をセッティング。涼役の村瀬歩、アベル役の浦和希、セーラ役の本渡楓に、演じるキャラクターたちの魅力やなりたいクラス・属性、「水属性の魔法使い」の見どころなどを語り合ってもらった。
取材・文 / 丸本大輔撮影 / 番正しおり
あらすじ
異世界ファイに転生する際、水属性の魔法を操る才能を与えられた青年・涼は、人里離れた森でモンスターなどと戦い、魔法や剣の腕を磨きながら20年の時を過ごす。しかし、森の近くの海岸に打ちあげられていた剣士アベルを助けたことで、スローライフを目指した日々は終了。住み慣れた森を出て、アベルの仲間と合流するため、2人でルンの街を目指すことになった。そして旅の中、モンスターとの戦いで見せた涼の水魔法の力は、凄腕の冒険者であるアベルを驚愕させる。
7月17日に放送・配信される第3話では、涼とアベルがルンの街に到着。ヒロインのセーラも登場し、人知れず人類最高峰の水魔法使いとなっていた涼のさらなる活躍が描かれていく。
キャラクター紹介
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涼(CV:村瀬歩)
異世界転生時に水属性の魔法と、隠し特性「不老」を与えられる。無詠唱でも使える魔法をわざわざ詠唱するなど、カッコよさと様式美を重要視する傾向も。魔法だけではなく、接近戦でも後れを取らないために、剣術も修行している。
鼎談
古きよきRPGの空気感
──最初に「水属性の魔法使い」という作品と、ご自身が演じるキャラクターの第一印象を教えてください。
村瀬歩 すごくド直球のタイトルなので、第一印象も「(主人公が)水属性の魔法使いなんだな」というド直球なものでしたね(笑)。その後、原作を読ませていただき、自分が子供のときに大好きだった「FF(ファイナルファンタジー)」などの古きよきRPGの空気感を感じました。最初、涼はこの世界のことを何もわかってないのですが、アベルと一緒に旅をして話を聞き、世界のことを知っていく。その進捗は読者も同じなので、すごく入りやすくて共感もしやすい作品になっているなと思いました。涼については、とても勤勉で真面目で、魔法に対して熱心な思いを持っている。ただ、ひんやりした思考の持ち主でもあるので、同時に正義感も持っていてよかったなと思うところもありました。
──正義感が薄い人だと、熱心に学んだ魔法を悪いことに使うかもしれなかった?
村瀬 実はサディストな面もありますからね。すごく強い力を持っているし、たまに少し悪ぶった感じで敵を倒すみたいな一面もあるんです。だから、正義の人でよかったなと思いました。
──浦さんは作品とアベルについて、どのような印象を受けましたか?
浦和希 村瀬さんもおっしゃった通り、タイトルが本当にシンプルで、逆に「どういう内容なんだろう?」と興味を惹かれました。実際に原作を読ませていただいて感じたのは、すごくメリハリがしっかりとした作品だなということ。最初は涼が修行をしたり、世界について学んでいくところから始まって、アベルと出会い、さらにいろいろなキャラクターにも出会いドラマが生まれていくんですけど、そのドラマの雰囲気がすごく優しいというか、のどかなんです。だからこそ、敵との戦闘などの緊張感あるシーンとの差がガッと際立つんだなと思いました。アベルについては第2話で初登場だから、この時点ではまだまだ謎には包まれてはいるんですけど……。
──第3話の放送直前の時点で話せる範囲で教えてください。
浦 一度村瀬さんにも言われたんですけど、アベルにはある種の母性というか、すごく面倒見のよいところがあって。どちらかというと、涼にいろいろな物事を教える立場なんです。でもそれと同時に、男同士2人で他愛のない会話をしているときには、涼の無邪気さに引っ張られて、アベル自身の無邪気な面もすごく見えたりして。すごくかわいいなとも思いました。そういう意味では、意外と幅があるキャラクターなんだなってことは、序盤から感じましたね。
村瀬 アベルは度量が深いよね。涼は完全に甘えているから、すごいなと思う。
浦 確かに懐が深いなって思います。
──本渡さんはいかがでしたか?
本渡楓 オーディションを受けさせていただくときにもいろいろと拝見したのですが、すごく印象的だったのが、その後に公開された最初のPVなんです。音楽と映像で見せる形のPVで、最後に村瀬さん演じる涼が一言タイトルを言うみたいな内容になっていて。水属性の“水”の要素や、村瀬さんもおっしゃっていた涼の少しひんやりした部分など、この作品の独特な空気感をすごく感じられました。個人的には、その雰囲気がとても上品に感じられて、さらに楽しみになりました。セーラについては、見る人によっては堅物にも見える子なんだろうなというのが第一印象です。でも人から嫌われるような子ではなく、慕われてもいる子でしたので、アフレコが始まる前はどういうふうにお芝居を作っていこうかなといろいろ想像していました。
オーディションでは、自分なりの挑戦をした
──本渡さんはセーラ役のオーディションを受けたとおっしゃっていましたが、村瀬さんと浦さんもオーディションを受けたのですか?
村瀬 僕はオーディションではなく、「涼役をやってください」というご依頼をいただきました。
本渡 やっぱり、そうだったんですね! これまでも村瀬さんとご一緒したときって、少し冷静で俯瞰して物事を見られる役柄をされていることが多くて。今回の涼もそんな印象があったし、すごくぴったりだなって。
浦 うんうん。ぴったり。
村瀬 言われてみれば、確かに……。本渡さんと一緒の作品では、どこか当事者じゃないみたいな、自分のことも駒のように使ってるような役が多いね(笑)。浦くんはオーディションだったの?
浦 僕もオーディションでした。
村瀬 オーディションはテープ?
本渡 テープオーディションだけでした。
──オーディションのときは、どのようなことを特に意識しましたか?
浦 割と序盤のほうのセリフを何個かピックアップして録る形だったんですけど、年齢感をどこに置くかは、すごく迷いました。アベルは26歳の設定なんですが、異世界ファイにおける26歳と、現実の26歳は、同じ年齢だとしても培ってきた経験とか、いろいろなものが違うはずなので。最終的に自分がこういうアベルだったら一番好きだなと思うところで演じてみたら、ありがたいことに演じさせていただけることになりました。年齢感以外は、自分にとってもすんなりと入ってくる人間性だったので、すごくやりやすかったです。
──本渡さんはいかがですか?
本渡 個人的にセーラのような、明るいというよりもミステリアスや真面目という印象が先に来る子は、これまであまり多く演じてきませんでした。だからこそ、せっかくオーディションを受けさせていただける機会に、挑戦してみたいことがいろいろとあって。自分なりにあまり普段使わない声のトーンにしてみたり、人との距離感の測り方がちょっと独特な子でもあるので、そこを少し遊んでみたりしました。そういった自分なりの挑戦を詰め込んだオーディションでしたので、そのテープだけでご縁があったことにはびっくりしましたし、すごくうれしくて、「よっしゃがんばるぞ!」という気持ちでいっぱいになりました。
──浦さんと本渡さんは、涼は村瀬さんにピッタリだと思ったそうですが、村瀬さん的には掴みやすい役柄だったのでしょうか?
村瀬 役者さんは、みんなそれぞれの役作りの仕方があって、自分に近い役柄の方が掴みやすい人もいるし、まったく違う真逆のような役柄の方がわかるっていう人もいるんですね。それでいうと、涼の魔法に対する前向きな気持ちはわかりやすかったというか。僕も好きなものに対して夢中になったりするタイプなので、魔法の研究とかをがんばるところは、すごく掴みやすいなと思いました。
──実際にアフレコが始まって、印象が変わったり、より深まったりしたところはありましたか?
村瀬 第1話はプロローグ的な話なので、この先の広がり的なことも意識して、自分の中では少し青い感じで作っていたんです。その後、第1話の収録が終って、(佐竹秀幸)監督と第2話以降の涼についてお話ししたときに、「(異世界ファイに来て)時間も経つし、少し落ち着いてもよいかも」といったお話をいただき、それを自分の(芝居の)軸に入れました。でも、涼が魔法とか自分の興味あるものに対してキラキラして盛り上がるとき、その感情の高ぶりをどこまで出すのか、逆に抑えるのかというところの塩梅は、最初はけっこう難しかったです。途中で自分の中の感覚として身についてからは、そんなに苦労しなかったんですけど。
──はしゃぐときと冷静なときのバランスが難しかったのですね。
村瀬 そうですね。涼はいろいろな表情を持っているけど、芯が違っちゃうと別の人に聞こえてしまうかもしれないので。そうではなく、「え! こんな一面もあるんだ」と意外性を感じてもらえる範囲に留まってほしいという意識を持ってました。
──浦さんと本渡さんも、印象が深まったり変わったりしたことがあれば教えてください。
浦 アベルは、本当にずっといいやつだなと思います(笑)。
村瀬 そうだね、本当にいいやつ。
本渡 裏表がなくて、ずっといい人ですよね。
浦 そうなんです。例えば、新人の冒険者の子たちにも優しく声をかけるし、誰と接するときも態度が変わらないんですよ。逆に、ちょっとタジタジになってしまう相手はいたりするんですけど(笑)。その中で、柔らかさというか、親しみやすさみたいなところも一貫して変わらない。周囲の人たちに対する愛みたいなものを崩したら、アベルから逸脱してしまうという気持ちはありました。
本渡 セーラは、次の第3話から登場するのですが、最初のアフレコのとき、オーディションで自分なりに解釈したセーラ(の芝居)を持っていったんです。ただ、ほかのキャストさんと一緒に掛け合いしながら収録できることがうれしくて、ついつい周りに優しくしたいみたいな気持ちが湧いていたみたいで。音響監督(の髙桑一)さんから「そんなに愛想よくしなくていいよ」とか「もっとサラッとしていていいよ」というディレクションをいただきました。そのとき、愛想はあるけどさっぱりしていて、すごく気持ちのいい子という気づきも得られて、勉強になりました。今後のお話で、この人に対するときだけは、ちょっと様子が違うなという相手が出てきたりしますが、そういうときのアフレコもまた楽しかったです。
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異世界ファイに転生するならどのクラス?