映画評論家・
「ブレードランナー 2049」は10月27日より全国ロードショー。
※同レビューでストーリーの重要なポイントを明らかにすることは避けられていますが、ネタバレだと感じる可能性もありますので、読者の皆様の責任でお読みください。
町山智浩「ブレードランナー 2049」レビュー
「ブレードランナー 2049」は「ブレードランナー」(1982年)と同じく、眼の超クロースアップで始まる。しかし、そこに映る風景は違う。炎を噴き上げるロングビーチの油田ではなく、ソーラーパネルの発電システムだ。
雨に煙る街角、アジアの言語が入り乱れるネオン……リドリー・スコット監督がメビウスのコミックを基に作り上げた2019年のロサンジェルスの風景は映画に革命を起こした。しかし、その後35年間にさんざんコピーされ、使い古され、今ではもう「見飽きた未来」になってしまった。「ゴースト・イン・ザ・シェル」がそうだったように。
この難関に挑んだドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「ブレードランナー 2049」は、前作を乗り越えて新しい景色を切り拓いた。2017年現在からシミュレートした2049年のロサンジェルスは、地球温暖化で水位が上がり、海岸部は水没し、激しい雷雨が襲い、降るはずのない雪が降りしきる。それと逆に内陸地は砂漠化している。
すべてのシーンでロジャー・ディーキンスの撮影は絵画のように美しい。砂に埋もれたラスベガスはディーキンスが撮った「007 スカイフォール」のスコットランドを思い出させる。どちらも、タッチの引用元としてターナーの絵が映る。
とはいえ「ブレードランナー 2049」は「ブレードランナー」のファンが待ち望んできたものを見せてくれる。すなわち、ブレードランナーのデッカード(
前作で二人を見逃した警察官ガフ(
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の主人公は、ハリソン・フォードのようにハードボイルドじゃない、生活に押しつぶされたしょぼくれた男だ。フィリップ・K・ディックの小説の大概の主人公はそうだ。「ブレードランナー 2049」の主人公、K(
そんなKを慰めるのはAIの美少女ジョイちゃん(
前作では、心が無いはずのレプリカントに心が芽生えていたが、2049年のレプリカントには心が標準装備されている。レプリカント製造をタイレル社から引き継いだニアンダー・ウォレス(
Kもまた報われない愛、生まれてきた意味に悩み苦しむ。それはKだけの苦悩ではないはずだ。前作で堕天使ロイ・バッティ(
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- 「2036:ネクサス・ドーン」本編映像
- 「ブレードランナー ブラックアウト 2022」本編映像
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