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庵野秀明が宮崎駿と高畑勲の違い明かす、川上量生や西村義明と背景美術についてトーク

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「でほぎゃらりー株主鼎談 ~いま、アニメーション背景を語る。~『メアリと魔女の花』公開記念企画」の様子。左から川上量生、西村義明、庵野秀明。

「でほぎゃらりー株主鼎談 ~いま、アニメーション背景を語る。~『メアリと魔女の花』公開記念企画」の様子。左から川上量生、西村義明、庵野秀明。

米林宏昌の監督作「メアリと魔女の花」の公開を記念したトークイベントが本日7月1日、東京・イイノホールにて行われ、川上量生、庵野秀明、西村義明が登壇した。

スタジオジブリ作品で活躍した男鹿和雄と武重洋二がアドバイザーを務める背景美術スタジオ・でほぎゃらりーの設立者である3人。2014年末のスタジオジブリ制作部門の解散をきっかけに設立された同スタジオに対して庵野は「西村くんからの誘いがなければ、カラーで美術部を作ろうと思っていた」と述べ、「手描きの背景を残さなくてはいけないと考えていた」と振り返る。

「男鹿さんと武重さんが関わってくれることが大切だと思った」と言う川上は、スタジオ名は男鹿が考えたことに触れ「名前を付けたら逃げられなくなるだろうなと」と策略を明かす。その言葉に西村は「でほぎゃらりーの“でほぎゃ”っていうのは秋田弁で、でまかせや口まかせという意味。それは、すごく大切なコンセプトだと感じるんです。アニメですべてに力を入れすぎると破綻してしまうので」と説明を重ねる。

西村が「庵野さんが『アニメーションの7割は背景』と言っていたのを聞いてハッとした」と述べると、庵野は「背景美術がその作品の世界観を決める」と即答。続けて「背景美術がよければ長回しができるが、よくないと画が持たないから細かいカット割りになる。キャラクターデザイナーと同じぐらい美術監督は大切」と背景美術の重要性を語る。

手描きの背景美術の価値について庵野は「写真をデジタルで加工するような場合はどの情報を削るか引き算的に作っていく。一方、手描きは足し算。どこまで足すかを考えていくし、その中で必ず誤差が生じる。それがいいところ」と説明。また宮崎駿について「宮さんは一点透視法や二点透視、三点透視を嫌がる。同心円で描けと言われるんですけど、そうするとパースがいい加減になる。でもそれがいいんですよ。宮さんのレイアウトは宮さんしか描けない」と述べ、手で描くがゆえの効果をわかりやすく伝える。

庵野はその話の流れで高畑勲について「高畑さんは宮さんのようないい加減さは許さない。かっちり描く。宮さんは自分が描けないレイアウトはやらない。でも高畑さんは自分は描かないけど、他人に強要する。そこが高畑さんのすごいところ」と述べ、2人の作品にスタッフとして参加したからこそ語れる話を披露した。

西村から「メアリと魔女の花」の背景美術の感想を聞かれた川上は「個別にいい悪いと言えるほど画のことはわからないのですが……アニメ業界は美術は大切と言いながらジブリのようにお金をかけてない。僕はそこに違和感を感じていたんです。そんな中、今回の作品を観て安心しました。ジブリの背景のクオリティと違いがわからなかった」と称賛した。一方、庵野は「部屋の描写が上手。でももうちょっと壁紙とかこだわったほうがいい。あと書き込みすぎていて、ディティールがありすぎ、メリハリがなく見える」とアニメーションにおける情報のコントロールの必要性についてコメントをした後、美術監督の久保友孝について「手を抜くやり方を覚え、技術がついてくればもっとよくなると思う。でも30歳の若さでこれを作れたのは素晴らしい」とエールを送る。

最後に庵野は「アニメーションは作品にいろんな幅があるから面白い。手作り感を残すようなスタジオがあったほうがいいと考えています」とでほぎゃらりーについて話し、「あと西村くんに言ったんですが、宮さんの絵の系譜を残してほしいと思っていた。米林さんがやればジブリのパクリって言われない」と冗談を交えながら西村と米林が立ち上げたスタジオポノックへの思いを語った。

杉咲花や神木隆之介がキャストに名を連ねる「メアリと魔女の花」は、7月8日より全国ロードショー。イギリスの女流作家メアリー・スチュアートの児童文学をもとに、魔女の国へと旅立つ少女メアリの冒険を描く。

(c)2017「メアリと魔女の花」製作委員会

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