連載コラム「今からだって沼落ちしたい!韓国俳優」ビジュアル(イラスト:西村オコ)

今からだって沼落ちしたい!韓国俳優 Vol. 3 [バックナンバー]

“アボジ(父親)”役俳優に沼落ちしたい!リュ・スンリョン、キム・ソンギュン、チョン・ベスが出演する韓国ドラマにハズレなし

アボジ役で知られる名バイプレイヤーたち

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「愛の不時着」「涙の女王」といった韓国の映像コンテンツが日本で注目を集め、近年では配信サービスや映画館で韓国ドラマ・韓国映画を観る機会が増えている。作品の面白さはもちろん、俳優の演技力や人となりに魅了された人も多いのではないだろうか。

この連載「今からだって沼落ちしたい!韓国俳優」では、韓国のドラマ・映画が好きなライター・前田かおりが話題作から旬な俳優をピックアップして、その魅力をお届けする。今回フィーチャーするのはリュ・スンリョンキム・ソンギュンチョン・べスといった名バイプレイヤーたち。アボジ=父親役として強い印象を残す彼らの魅力とは。過去に出演した作品の中から、お薦めのドラマをピックアップして紹介する。

/ 前田かおり 構成 / 小宮駿貴 イラスト / 西村オコ

リュ・スンリョンとは

睨みを効かせた権力者を演じる一方で、娘思いの優しいアボジ役もハマる

1970年11月29日生まれのリュ・スンリョンは、学生時代から演劇を始め、1997年からノンヴァーバル(非言語)パフォーマンス「NANTA(ナンタ)」の黎明期メンバーとして活躍。彼の眼力の強さは言語のない「NANTA」で鍛えられたようだ。2004年に映画界に進出し、2012年「僕の妻のすべて」では“伝説の色男”という、強面とはギャップある役どころを絶妙に演じたことが転機に。

「ムービング」ディズニープラス スターにて全話独占配信中 (c) 2024 Disney and its related entities

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Netflixシリーズ「タッカンジョン」独占配信中

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2013年の「7番房の奇跡」にて無実の罪で投獄された父親役を好演し観客の心をつかみ、韓国のアカデミー賞と称される大鐘賞の主演男優賞を受賞。2019年には、潜入捜査のためチキン屋を営む刑事たちを描いたコメディ映画「エクストリーム・ジョブ」が大ヒットした。ドラマでは、ゾンビスリラー×時代劇の「キングダム」シリーズで権力を掌握するためなら手段を選ばぬ悪辣な領議政チョ・ハクチュ役に扮し、2024年には異色のコメディミステリー「タッカンジョン」にも挑戦。2025年はディズニープラスの新作ドラマ「パイン(原題)」が決定しているほか、待機作が続く。

娘のために大奮闘!リュ・スンリョンの名演に泣かされる「ムービング」

「ムービング」ディズニープラス スターにて全話独占配信中 (c) 2024 Disney and its related entities

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特殊能力を隠して生きる子どもたちと、壮絶な過去の秘密を抱えた親たちが迫りくる敵に立ち向かうアクションドラマ「ムービング」。本作でリュ・スンリョンが演じるのは、驚異的な再生能力を持つ男チャン・ジュウォン。最愛の妻ジヒが亡くなってから、男手一つで育ててきた娘ヒスもジュウォンのDNAを受け継いでいる。ヒスは前の学校で不良グループからひどい暴行を受けながらも、無傷だったことから加害者扱いされて退学に。そんなヒスのために、ジュウォンは家を売って示談金を作り、新たな街でチキン屋として再出発する。

「ムービング」ディズニープラス スターにて全話独占配信中 (c) 2024 Disney and its related entities

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ヒスを演じるコ・ユンジョンがこの上なく可憐で、自分のために苦労することになったアボジをいたわる健気な娘を好演する。さらには中盤以降に描かれるジュウォンとジヒのドラマチックな出会い。その純愛の顛末を見れば、ゴツい面構えを崩して娘ヒスを見るジュウォンの眼差しには愛が満ちあふれているのも当然! 全編を通して、ヒスに注ぐ父性愛の深さを納得させるリュ・スンリョンの名演には泣かされる。実生活では2人の息子の父親であるリュ・スンリョン。だが、俳優としては「7番房の奇跡」で幼い娘を抱えるアボジ役を演じ、「サイコキネシス 念力」では突然超人的な能力に目覚めたダメ父として娘の苦境を救い、「タッカンジョン」では謎のマシンで“タッカンジョン”になってしまった娘を人間に戻すために奔走するアボジを演じている。リュ・スンリョンには娘のために奮闘するアボジ役がよく似合う。

リュ・スンリョンのInstagramより、コ・ユンジョンとの2ショット写真ほか

韓国ドラマ「ムービング」予告編

キム・ソンギュンとは

さまざまな作品で“愛されるアボジ”を体現

近作、Netflix映画「武道実務官」やキム・ナムギル主演のドラマ「熱血司祭2」などで活躍するキム・ソンギュン。1980年生まれの彼は舞台で長く経験を積み、2012年に「悪いやつら」で釜山を牛耳る暴力団の手下役で銀幕デビュー。公開当時は「本物のヤクザでは!?」と言われるほどの存在感を放ち、「隣人-The Neighbors-」の殺人鬼役でも強烈な印象を残す。映画界では逸材として注目を集め、その年の百想芸術大賞男性新人演技賞を受賞した。

Netflix映画「武道実務官」独占配信中

Netflix映画「武道実務官」独占配信中

「ムービング」ディズニープラス スターにて全話独占配信中 (c) 2024 Disney and its related entities

「ムービング」ディズニープラス スターにて全話独占配信中 (c) 2024 Disney and its related entities

2013年、ドラマ「応答せよ1994」にて撮影当時30代半ばながら20歳の大学生サムチョンボ役を愛嬌たっぷりに演じ、悪役のイメージを払拭。2015年には同シリーズの「恋のスケッチ~応答せよ1988~」に出演してお茶の間の人気者に。このほか「熱血司祭」では主人公のよき相棒になっていく刑事役、ドラマ「D.P. -脱走兵追跡官-」シリーズでは部下思いの上官を好演するなど、今や話題作には欠かせない俳優になっている。

大学生からアボジ役まで!キム・ソンギュンの多彩な演技力「恋のスケッチ~応答せよ1988~」

「恋のスケッチ~応答せよ1988~」ディズニープラス スターにて全話信中 (c) CJ E&M Corporation, all rights reserved.

「恋のスケッチ~応答せよ1988~」ディズニープラス スターにて全話信中 (c) CJ E&M Corporation, all rights reserved.

リュ・スンリョンと同じく、キム・ソンギュンもアボジ役で「ムービング」に出演。役どころは優等生イ・ガンフンの父ジェマンで、自分の店の前の縁台に座って息子の帰りを待つ心優しき人物だ。知的障害を抱えているが驚異的なスピードと怪力の持ち主で、息子に危機が迫るとすさまじいパワーを発揮する。その父性愛は半端なく、息子との絆を描いたエピソードには胸を打たれること間違いなし。

「恋のスケッチ~応答せよ1988~」ディズニープラス スターにて全話配信中 (c) CJ E&M Corporation, all rights reserved.

「恋のスケッチ~応答せよ1988~」ディズニープラス スターにて全話配信中 (c) CJ E&M Corporation, all rights reserved.

キム・ソンギュンがアボジ役を演じた作品のうち、もう1つ推したいのが「恋のスケッチ~応答せよ1988~」。これは1997年、1994年、1988年と3つの時代を背景に若者たちの恋や友情、親子の絆を描く大人気シリーズの第3作にあたる。キム・ソンギュンは「応答せよ1994」では撮影当時30代半ば、老け顔の大学生サムチョンボ役で人気を得たが、2年後に製作された「恋のスケッチ~応答せよ1988~」では40代半ばのアボジ、キム・ソンギュン役(※編集部注:実名と同じ役名だが本人役ではない)を演じるという冗談のような無茶振り。息子役のリュ・ジュンヨルやアン・ジェホンとは実年齢で6歳しか違わない。それなのに、髪の毛をベッタリとした二八分けにし、メタルフレームのメガネにチョビ髭というビジュアルで中年のおっさんに成り切った。ノスタルジーを誘うドラマの中で、誰からも愛されるアボジ像を見事に作り上げたキム・ソンギュン。見ているこちらも思わず顔がゆるんでしまう。

韓国ドラマ「恋のスケッチ~応答せよ1988~」予告編

チョン・ベスとは

誰もがきっと見たことある名アポジ俳優

2024年は「涙の女王」でキム・スヒョン扮するペク・ヒョヌのアボジ役を演じたほか、「今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~」にも出演し、名バイプレイヤーとしての存在感を発揮したチョン・ベス。1970年生まれの彼は、2004年にドラマ「知ることになるさ」でデビューを果たす。2017年「秘密の森~深い闇の向こうに~」でペ・ドゥナ演じる刑事のよき上司や、2019年「椿の花咲く頃」でカン・ハヌル演じる主人公が勤める派出所の所長役などで印象を残す。

Netflixシリーズ「涙の女王」独占配信中

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Netflixシリーズ「今、私たちの学校は…」独占配信中

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また2017年に「サム、マイウェイ~恋の一発逆転~」でキム・ジウォン扮するエラのアボジ役を演じたのを皮切りに、「哲仁王后~俺がクイーン!?」「今、私たちの学校は…」「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」といった話題作でヒロインのアボジを好演。よきアボジ、よき上司のイメージが強いが、2023年の「離婚弁護士シン・ソンハン」では悪徳弁護士役で登場するなど、時折、観客のイメージを覆すような役にも挑み、演技のふり幅の広さを感じさせてくれる。

“国民の父”チョン・ベスの演技に胸が熱くなる「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」「今、私たちの学校は…」

Netflixシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」独占配信中

Netflixシリーズ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」独占配信中

天才的な頭脳を持つ自閉スペクトラム症の弁護士ウ・ヨンウが、事件を解決しながら成長していく「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」。2022年に韓国で空前の大ヒットを記録した本作で、チョン・ベスが演じたのは法曹人になる夢を諦め、シングルファーザーとして生きる道を選んだヨンウのアボジ、グァンホだ。彼は喜怒哀楽がわからないヨンウのために、さまざまな表情を自撮りした表を手作りし、ヨンウはそれを頼りに怒りや喜びの表情を練習する。またグァンホがキンパ(韓国風海苔巻き)屋を営むのは、ヨンウが「キンパなら切り口で中身が見えて予想外の食感や味で驚くこともない」ので安心して食べられるから。出勤するヨンウを見送る表情には、愛情を注ぎ大切に育ててきた娘への思いが凝縮されているようで胸が熱くなる。

韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」本編映像(お父さんにも自己紹介)

「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」で“国民の父”として知られるようになったチョン・ベス。「今、私たちの学校は…」では、ゾンビウイルスが蔓延する中、消防隊員としての使命をまっとうしながらも、アボジとして娘のそばにいたい気持ちを抑えられないでいる感情を繊細に表現してみせた。心優しきアボジ役が多い一方で、「気象庁の人々:社内恋愛は予測不能?!」ではソン・ガン扮するチン・ハギョンを振り回す毒親を憎々しげに演じている。新作の時代劇ドラマ「于氏王后」でもヒロインのアボジ役で出演。果たしてどんな姿を見せてくれるだろう。

韓国ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」予告編

韓国ドラマ「今、私たちの学校は…」予告編

前田かおり(マエダカオリ)プロフィール

ライター。映画やドラマのレビュー、キャスト・スタッフへのインタビューを多数手がける。キネマ旬報ムック「韓国テレビドラマコレクション」や韓国映画「密輸 1970」「ボストン1947」の劇場用パンフレットほか、情報誌、Webで各種エンタテインメント情報を紹介。2024年下半期のベスト3は映画「ソウルの春」、ドラマ「ヒーローではないけれど」「ジョンニョン:スター誕生」。

「エクストリーム・ジョブ」Blu-ray / DVD

豪華版Blu-ray:6800円(税抜)
通常版Blu-ray:4900円(税抜)
通常版DVD:3800円(税抜)
発売元:クロックワークス
販売元:TCエンタテインメント

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