1月はBS12でサモ・ハン特集!コメディ、アクションなど4作品の魅力を紐解く、インタビューも掲載

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1月はサモ・ハンの監督・出演作をBS12で4週連続放送! ジャッキー・チェン、ユン・ピョウらと共演した「七福星」「サイクロンZ」、豪華列車をめぐる混乱を描いた「冒険活劇 上海エクスプレス」がラインナップされ、20年ぶりに監督を務めた「おじいちゃんはデブゴン」も観ることができる。

本特集では、ライターの高橋ターヤンが4作品の見どころを紹介。さらにサモ・ハン本人のインタビューも掲載した。1月は、BS12でサモ・ハンのコメディやアクション作品を観て熱くなろう!

文 / 高橋ターヤン(作品紹介)

熱き4作品の見どころを徹底紹介!

「七福星」には、1980年代香港映画ファンであれば大満足のエンディングが

「五福星」から始まる「福星」シリーズ第3弾の「七福星」(1985年)。サモ・ハンが音頭を取ったオールスター映画である。

前作「大福星」で日本のヤクザを壊滅させたご褒美として、キッド、クレイジー、ちび、ヒゲ、ハンサムたちはパタヤビーチの旅行を手に入れる。当然のごとく5人はパタヤでいたずらの限りを尽くし、女性にモテるためにあの手この手を試してビーチリゾートを満喫。そんな時に、警察のアイデアで5人は暗殺者に狙われる女優志望のワンを匿うことになる。しかし暗殺者集団は5人の居所を掴み、銃を手に乗り込んできたのだった……。

「七福星」場面写真

「七福星」場面写真

基本的にジャッキー・チェン&ユン・ピョウが出ているシーン以外は、ドタバタのナンセンスコメディだ。超多忙を極めるジャッキーは本作と「ポリス・ストーリー 香港国際警察」、「ファースト・ミッション」を同時並行で撮影しており、深夜から早朝にかけて「ポリス・ストーリー」の伝説のポール落下シーンを撮ったその足で本作のアクションシーンに臨むという殺人的スケジュール。さすがのジャッキーも倉田保昭とのアクションシーンではヘトヘトになっており、見かねたサモ・ハンが「ジャッキーが倉田に負けて、サモ・ハンが仇を取る」という脚本に変更した。そのためジャッキーが負けるという、当時のジャッキーファンが暴動を起こしかねない結末になっている。

また、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズの大女優ロザムンド・クワンが名コメディエンヌの片鱗を見せ、のちにアカデミー賞女優となるミシェル・ヨー(当時はミシェル・キング)が柔道教室の先生役でチョイ役出演しているので見逃さないように。

そして最後、エレベーターの扉が開いてからの展開には爆笑。1980年代香港映画ファンであれば大満足のエンディングがあるので、最後まで見逃さないで頂きたい。

多くのアクションスターを集めた、オールスターかくし芸大会的な「冒険活劇 上海エクスプレス」

「福星」シリーズの大ヒットは、豪華スターが共演すればするほど香港での興行パワーが増加し、一人ひとりの出番が縮小されるので多忙を極めるスターたちのスケジュール調整もしやすくなることを証明したエポックメイキングな出来事だった。多くのヒット作をプロデュースして“大哥大(大兄貴)”という敬称で呼ばれるサモ・ハンは、もっと多くのアクションスターを集めたオールスターかくし芸大会的な作品を企画。こうして生まれたのが「冒険活劇 上海エクスプレス」(1986年)である。

「冒険活劇 上海エクスプレス」場面写真

「冒険活劇 上海エクスプレス」場面写真

1930年代の中国、流れ者のチェンは貧しい地元・漢水を富ませるために、富豪たちが乗車する豪華列車“富貴号”を漢水で停車させて故郷にお金を落としてもらうことを画策する。その頃、漢水では警備隊が強盗化して銀行を襲う事件が発生。消防隊長のチョウは、不承不承のままチェンと協力して警備隊を追うが、秘宝の地図を狙う日本の特使やギャング団などが入り乱れての大乱戦が始まることになる。

ジャッキー・チェン大ブームの中で、サモ・ハン主演作でありながらユン・ピョウ主演作のように宣伝された本作。当時は出演俳優の中で一番著名な俳優を主演のように装う映画が多くあったが、本作もそんな映画だった。

見所は綺羅星のごときアクションスターが勢ぞろいした圧巻のクライマックス。サモ・ハンとユン・ピョウはいうに及ばず、ラム・チェンイン、「七小福(※)」メンバー、ウォン・チェンリー、倉田保昭、大島由加里、リチャード・ノートン、シンシア・ラスロック、ディック・ウェイら名前を書くだけで本稿の文字数がギリギリになってしまうほど。そんなスターたちのバトルロイヤルが展開される中で、サモ・ハン対ラスロックではサモ・ハンが久々にブルース・リー憑依アクションを披露してくれて最高。現役のアクションスターだけでなく、シー・キエンやジミー・ウォングといった往年のスターたちの共演も嬉しい一作だ。

※七小福:ジャッキー・チェン、サモ・ハン、ユン・ピョウらを輩出した中国戯劇学院の門下生たちで編成されたチーム。1988年には、彼らの成長を描く映画「七小福」が製作された。

「サイクロンZ」は、1980年代に猛威を振るった香港コメディアクションのフィナーレを飾る作品とも言える

「プロジェクトA」でジャッキー・チェン、サモ・ハン、ユン・ピョウという香港映画界が誇るゴールデントリオが世に出てから、3人の出演作は東アジアで快進撃を続けてきた。この「サイクロンZ」(1988年)を最後に3人がメインキャストとして共演した映画は無く、1980年代に猛威を振るった香港コメディアクションのフィナーレを飾る作品とも言えるのが本作である。

「サイクロンZ」で共演した(左から)サモ・ハン、ユン・ピョウ、ジャッキー・チェン

「サイクロンZ」で共演した(左から)サモ・ハン、ユン・ピョウ、ジャッキー・チェン

弁護士のジャッキーは悪徳化学工場のファー社長をクライアントとしていたが、友人のウォン、トンと共に養魚場の立ち退き対応によって女社長のイップ、その従妹のメイリンと知り合い、徐々に社会正義に目覚めていく。そんな中、ウォンは化学工場に潜入したが捕まり、大量の麻薬を打たれてしまう。ウォンを救うためにジャッキーとトンは麻薬工場に向かうが……。

ジャッキー人気最盛期の作品で、1988年の旧正月映画として企画された本作。こだわりが強く、盛大に金を使ったうえで納期を守れないジャッキーに代わって、職人サモ・ハンが監督を務めた作品である。

しかし前半は少々かったるいラブコメ&法廷劇。高校生のワタクシは「スーツを着たジャッキーなんて見たくないんだけどねえ」なんて思いながら観ていたのだが、サモ・ハン演じるウォンが麻薬工場に潜入する辺りから映画はヒートアップ。サモ・ハン対WKA王者ベニー・ユキーデ、ユン・ピョウ対WKA王者ビリー・チョウの凄まじいキック合戦を経て、ジャッキー対ユキーデ&ユン・ワーで興奮は最高潮に。世界的キックボクサーであるユキーデの凄さは言うまでもないが、ブルース・リーも認めた天才スタントマンのユン・ワーがトリックスター的な悪役を怪演。サモ・ハンの弟弟子でもあるユン・ワーは、この後もサモ・ハン映画で大活躍し、マーベル映画「シャン・チー/テン・リングスの伝説」で69歳にしてハリウッドデビューすることになる。

最盛期であるサモ・ハンのスタントチームと、ジャッキーのスタントチームが融合を果たした奇跡の一作である。

サモ・ハンが苦しい表情で全力アクションを披露する「おじいちゃんはデブゴン」、涙無くして観ることができなかった

1990年代はサモ・ハンにとって香港でヒット作を生み出すことができず、ハリウッドに活路を見出していた時期だった。しかし2000年代以降には、ドニー・イェン映画の助演によってアクション俳優として復権。そして復活したサモ・ハンが満を持して送り出したのが「おじいちゃんはデブゴン」(2016年)である。

「おじいちゃんはデブゴン」でアクションを披露するサモ・ハン(左)

「おじいちゃんはデブゴン」でアクションを披露するサモ・ハン(左)

かつて中央弁公庁警衛局のシークレットサービスとして活躍していたディンは、認知症によって徐々に記憶を失っていた。ディンは隣家に住む少女の面倒を見ていたが、少女の父親は粗暴なギャンブル狂で、借金返済のために闇バイトに手を染める。奪った宝石を持って逃亡した父親のせいで少女に魔の手が迫る中、ディンは身に付けた殺人術を使ってギャングたちを撃退するが……という物語。

1980年代に青春を過ごした僕らにとって、若き日のサモ・ハンの印象は“動けるデブ”。長年のハードアクションで膝も腰もガタガタなはずなのに、苦しい表情で全力アクションを披露する本作のサモ・ハン(64歳)の雄姿を、同じく年を重ねて(不摂生で)膝も腰もガタガタな僕は涙無くして観ることができなかった。

サモ・ハンが得意とする残虐アクションを炸裂させる本作は、約20年ぶりにみずからメガホンを取った作品となる。それを祝うかのように、「七小福」のメンバーをはじめとする多くの盟友たちがゲスト出演している点もポイント。最大の敵が認知症というのは斬新で、クライマックスの緊張感あふれる映画史上最遅の追撃戦も見逃せない。サモ・ハンのアクション魂がいまだ衰えないことを証明する一作である。

サモ・ハン特集 放送スケジュール

  • 2025年1月10日(金)20:00~「七福星」
  • 2025年1月17日(金)20:00~「冒険活劇 上海エクスプレス」
  • 2025年1月24日(金)20:00~「サイクロンZ」
  • 2025年1月31日(金)20:00~「おじいちゃんはデブゴン」

番組ページ

サモ・ハン インタビュー
サモ・ハン

──ラインナップの1本である「おじいちゃんはデブゴン」のアピールポイントは?

わたくしサモ・ハンが出演したことですね(笑)。いや、冗談です。観終わったあとに余韻を残せる魅力的な作品だと思います。この作品は自分にとって少し特別な感じがします。

──ご自身の作品が多くの日本人に愛されていることを、改めてどのように感じますか?

もちろんうれしいです。長い間ずっと自分のことを応援してくれるファンの方、本当にありがとうございます。心から感謝しています。

──日本に来たら必ず行きたいところ、やりたいことはありますか?

おいしい料理を食べることです。ずっと食べ物のことを考えています。日本の料理は本当においしいですね。以前日本に来たときからそう思っています。

──アクション映画を監督する際に、こだわっていることは?

自分がやりたいアクションとして、1つひとつの動作がちゃんときれいにできているか、自分が求めている表現に到達しているかを一番注意しています。

──真田広之主演のドラマ「SHOGUN 将軍」が世界的にヒットしましたが、あなたは26年前にアメリカのドラマ「L.A.大捜査線 マーシャル・ロー」で主演を務めました。アジアの俳優や作品が世界進出していくことをどのように感じていますか?

アジアの俳優が世界中に注目され、受け入れられ、愛されることはすごくうれしいです。アジアにとって本当にいいことだと思います。今後もアメリカンの文化に注入させるなど、より多くの人々にアジアの映画と俳優を知って受け入れてもらいたいです。

──ファンへメッセージをお願いします。

いつも応援してくれてありがとうございます。すぐにまた新しい作品を作り、皆さんにお見せしたいと思っています。

プロフィール

サモ・ハン

1952年1月7日生まれ、香港出身。俳優、武術家、アクション監督、映画プロデューサー、映画監督。10歳で中国戯劇学院に入学し京劇を学び、優秀な門下生たちで編成されたチーム「七小福」にジャッキー・チェンやユン・ピョウとともに選抜される。卒業後は映画業界に足を踏み入れ、子役として多数の作品に参加。1973年、ブルース・リーに声を掛けられ「燃えよドラゴン」に出演した。1977年に「少林寺怒りの鉄拳」で初監督と主演を兼任。スリラー、ホラー、コメディなどのジャンルを武術映画に取り入れ、香港アクション映画の創造的な方向性を広げていく。1998年にはアメリカのテレビシリーズ「L.A.大捜査線 マーシャル・ロー」に主演し、アメリカ国内に武術ブームをもたらした。そのほか代表作に「燃えよデブゴン」シリーズや「五福星」「香港発活劇エクスプレス 大福星」など。60年以上にわたる映画業界への貢献がたたえられ、2024年には香港電影金像奨で生涯功労賞を受賞した。

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