本作は、2007年公開のアメリカ映画「
舞台はアメリカ南部の田舎町。“とびきりのパイ”を作れるウェイトレスのジェナは、束縛の激しい夫アール(
開演前、舞台には格子状に編まれたパイ生地と、真っ赤なフィリングを模した幕が下りている。またステージの上手と下手の端にはそれぞれ、冷蔵ショーケースをイメージした透明なタワーがそびえ立ち、その中にはホールのパイが縦にズラリと並んだ。「シュガー、バター、フラワー(小麦粉)」という女性のウィスパーボイスと共に幕が上がると、そこはジェナが働くダイナーで、中央では制服姿のジェナがスポットライトに照らされている。オープニングの音楽に合わせてアンサンブルたちがジェナにエプロンを着せたり、パイ作りの調理器具や材料を渡したりする中、ジェナは「言葉にならないものも入ってるの」「人生すべて入れてやるの」と歌いながら、パイを作り上げていった。
ステージには下手側にダイナーの厨房とカウンター、奥と手前にテーブルやイスが置かれているほか、上手側にはグランドピアノが設置され、ミュージシャンたちの演奏スペースとなっている。奥の窓越しには青空と道路、どこまでも続く電線が見え、ジェナたちが田舎町に暮らしていることを観客に伝えた。
夫のモラハラにより、自分の車を持つことも禁じられたジェナは、周囲に止められてもチップのすべてを彼に渡し、じっと耐えて働き続ける。ジェナの心が悲しみや喜びで大きく動くたび、「シュガー、バター、フラワー」という歌声が流れ、ジェナは新しいパイのレシピを考え始める。というのもジェナは、父との不和に苦しむ母からパイ作りを学び、パイを作ることで気持ちに整理をつけ、人生のさまざまな局面を乗り越えてきた。例えば、妊娠が判明したときは「自分の“卵”に裏切られたパイ」、アールに暴言を吐かれたときは「ゲス野郎のチキンポットパイ」、ポマターと一線を越えたあとは「産婦人科のお医者様とお医者さんごっこがしたいパイ」……など。ジェナはパイに生地をかぶせるかのように、パイ作りで自分の気持ちにふたをして、つらい現実に向き合わずに生きているのだった。
母になることを恐れ、“まあまあの幸せ”で良いと思っていたジェナだったが、やがて現状の打破を目指し、パイ作りのコンテストに挑もうとする。高畑は自然なセリフ回しと表情で、観客が身近に感じられるような“働く女性”としてジェナを描きながら、パイを作っているときにこぼれ出る葛藤や、自立しようと懸命にもがく彼女の心情をパワフルな歌声ににじませ、観客をグッと惹き付けた。
森崎は、糖質制限中のポマターが初めてジェナのパイを口にしたときの喜びを、恍惚の表情で表して笑いを誘う。ジェナとポマターが関係を持つシーンでは、アンサンブルの情熱的な手拍子をバックに歌い、神経質だが優しいポマターが気持ちを燃え上がらせ、危険な道に踏み込んでいく様子を表現した。
また思い悩むジェナを支えるのは、ウェイトレス仲間のドーンとベッキーだ。ドーンはヒストリーチャンネルのオタクで、変化を好まない人物。ドーン役の
開幕に際し、キャストからのコメントが到着。高畑は初演を「初演時はコロナ真っ只中だったので、稽古も海外のクリエイティブチームがリモートで行ってくれたり、稽古場もマスクが必須だったりと、通常の初演作品立ち上げより困難が多かったように感じます」と振り返り、「今回は普通に演出が受けられること、普通に共演者の顔を見ながらお芝居できること、普通にお客様の笑い声が聞けること。全ての普通が本当に輝いて見えて、感謝の日々です。この作品に改めて浸かってみて、メッセージ性の強さ、楽曲の素晴らしさ、キャラクターたちの愛らしさに再び感動しています。最後までカンパニー一同、元気に走り切りたいです」とコメントした。
上演時間は休憩25分を含む2時間45分を予定。東京公演は4月30日まで行われ、その後は5月5日から8日まで愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール、15日から18日まで大阪・梅田芸術劇場 メインホール、22日から29日まで福岡・博多座でも上演される。なお高畑のコメント全文と、森崎、ソニン、LiLiCoからのメッセージは以下の通り。
高畑充希 コメント
「WAITRESS」2025、
初日の幕がやっと上がりました!
やっとお客さんと出会えて、劇場中の熱気で、日生劇場が浮き上がりそうでした。
初演時はコロナ真っ只中だったので、稽古も海外のクリエイティブチームがリモートで行ってくれたり、稽古場もマスクが必須だったりと、通常の初演作品立ち上げより困難が多かったように感じます。
今回は普通に演出が受けられること、普通に共演者の顔を見ながらお芝居できること、普通にお客様の笑い声が聞けること。
全ての普通が本当に輝いて見えて、感謝の日々です。
この作品に改めて浸かってみて、メッセージ性の強さ、楽曲の素晴らしさ、キャラクターたちの愛らしさに再び感動しています。
最後までカンパニー一同、元気に走り切りたいです。
応援よろしくお願いします!
森崎ウィン コメント
ようやく、4年前に観ていた世界の中でポマター医師として生きられる時が来ました。
毎回毎回新しい発見と、刺激や課題をくれる海外演出チームとこうしてご一緒できた事は大きな財産になる事間違いありません。
上演中にもっと自分のものに出来るよう日々精進していきたいと思います。
どうかウェイトレスの世界を堪能しに来てください! 劇場でお待ちしております!
改めて、全世界の母たち、ありがとう。
ソニン コメント
9年前にブロードウェイで観劇して以降、必ず日本で上演すべきだと強く思っていた作品に、今回一員になる事ができて感無量です。
再演で演出家が変わり、ドーンというキャラマスコットではなく、実際に生きる女性として、自身と重なる部分を引き出して、稽古していただきました。何度か観劇した印象で脳裏にある私のイメージと戦い苦戦しましたが、現代の人々に共感してもらえるポイントを大切に丁寧に造形作業をしました。
「不安症で、潔癖症で、形ないものへの恐怖心や恋愛においても確実な理想ばかりを求める。溜めてたものが自由に解放された時の人の生き生きとする所や、好きな事には拘りを持って熱を注ぐ所。」普遍的なシーン達の中で、全ての台詞の言い方や仕草や動きに、ドーンの性格や個性や変化に共感し楽んでいただけたら、幸いです。
ぜひ、現代を生きる女性の機微を、可愛いらしいパイの世界と、おしゃれな音楽と、リアリティある生々しい肌感で描く「ウェイトレス」を感じにいらしてください。
LiLiCo コメント
初演のとき50歳でのミュージカルデビューでした。最初にベッキーに出会ったのは最高にラッキーな運命!私はベッキーが大好きで、4年ぶりに再会して、今回作品を作り上げるなかでのお稽古中により深く彼女を理解し、劇中では描かれていないけど彼女が背負う苦悩も感じ取っていただければ嬉しい。ベッキーは全然完璧な人間ではないけど友人としてはとても素敵な存在だと思います。みんなも彼女に寄り添うことが出来る様に頑張ります。正直、ベッキーがLiLiCoにどんどん入り込んで最近では充希ちゃんとソニンちゃんが近くにいて、目が合うだけで心の中に暖かいものが芽生えます。ふたりともミュージカル界の大先輩だけど、守ってあげないといけないという母性本能が毎日メラメラと燃えている。スタッフ・キャストみんなで力を合わせて作品をよりわかりやすく、ディープに、そして登場人物や素晴らしい楽曲もみんなの応援歌になるはず。
さぁ、このどろどろだけど清々しいパイを召し上がれ!
ミュージカル「ウェイトレス」
2025年4月9日(水)〜30日(水)
東京都 日生劇場
2025年5月5日(月・祝)〜8日(木)
愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2025年5月15日(木)〜18日(日)
大阪府 梅田芸術劇場 メインホール
2025年5月22日(木)〜29日(木)
福岡県 博多座
スタッフ
脚本:
音楽・歌詞:サラ・バレリス
原作映画製作:エイドリアン・シェリー
オリジナルブロードウェイ振付:ロリン・ラッターロ
オリジナルブロードウェイ演出:ダイアン・パウルス
出演
ルル:瀬川真央 / 本田涼香 / 山口晴楽
関連記事
恵理☆@情報屋な乙女+待ちの神様! @nonspw
ゲネプロの写真有難い!
昨日、ウェイトレス観に行ったけど最高(*ˊ˘ˋ*)
ヒロチョさんのオギーもハマり役で良きだな…歌もダンスも演技とても素晴らしい!
30日の東京千秋楽公演も観に行くから成長した姿とても楽しみだな!
かなり虜になりそう! https://t.co/lzciQ7zGTE